第3332回 アフリカネーションズカップとフランス(2) 大会最優秀監督となったナント出身のエメルス・ファエ

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■活躍が目立たなかったフランスのクラブの選手

 フランスのサッカーファンが注目するアフリカネーションズカップ、前回の本連載ではフランスのクラブから92人の選手がコートジボワールに移動して戦ったことを紹介した。表彰選手はコンゴ民主共和国のシャンセル・ムバンバのみであり、昨年のワールドカップで活躍したモロッコはアクラフ・ハキミ(パリサンジェルマン)やアミン・アリ(マルセイユ)などを擁したが、決勝トーナメント1回戦で敗退、フランスのクラブの選手が12人と最多であったセネガルも決勝トーナメント1回戦で姿を消した。複数の選手がフランスリーグに所属するアルジェリアやチュニジアはグループリーグで最下位敗退となり、その結果としてフランスのクラブの選手の活躍は目立たなかった。

■わずか3人のフランス人監督

 一方、フランス人の監督の存在感も従来に比べて小さかった。24か国のうち、フランス人監督はわずか3人、コートジボワールのジャン・ルイ・ガセ、ブルキナファソのウベール・ベル、コンゴ民主共和国のセバスチャン・デザブルである。これ以外にアルジェリアのジャメル・ベルマディ、ギニアのカバ・ディアワラ、モーリタニアのアミール・アブドゥはフランス生まれでフランス国籍も有しているが、スポーツの世界ではベルマディはアルジェリア、ディアワラはギニア、アブドゥはコモロの国籍をそれぞれ選んでいる。 3人のフランス人の監督の中で読者の皆様が認識しているのは2019年大会にウガンダを率いたデザブルくらいであろう。もっとも2019年大会のデザブルのウガンダはグループリーグは突破したが決勝トーナメント1回戦で敗れてしまっている。

■フランス人の大物監督が不在の今大会

 これまでのアフリカネーションズカップではフランスのビッグクラブや代表監督も務まるような大物、例えばアンリ・ミッシェル、エルベ・ルナール、アラン・ジレス、ミッシェル・デュスイエ、クロード・ルロワ、ヘンリク・カスペルチャック、フィリップ・トルシエなどの名が出てきた。しかし、今大会ではそのようなフランス人の大物監督はいなかった。
 そしてコートジボワールは優勝したものの、グループリーグでは1勝2敗で3位、第3戦で赤道ギニアに0-4と敗退し、ガセは更迭されている。決勝トーナメントを戦ったのはブルキナファソのベルとコンゴ民主共和国のデザブルだけである。ブルキナファソは1回戦で敗れたが、コンゴ民主共和国は準決勝まで進出、コンゴ民主共和国となってから最高の4位になった。デザブルは選手としての実績はほとんどなく、フランスのナショナル3部リーグのクラブの監督でキャリアをスタートさせ、その後アフリカのクラブチームを転々とし、ウガンダの監督になって実績を残した後、2部のニオールの監督も務めた。2年前の夏にコンゴ民主共和国の監督になり、今後が楽しみである。

■暫定監督として優勝を果たしたエメルス・ファエ

 そしてグループリーグ終了後に監督を交代したコートジボワールが優勝したが、暫定監督となったエメルス・ファエはナント生まれでフランス国籍も有している。ナントの下部組織からプロ契約を結び、年代別のフランス代表にもなっているがフル代表はコートジボワールを選択している。病気のため若くして2012年に28歳で引退し、指導者の道を選んだが、トップレベルの監督の経験はなく、コートジボワールの23歳以下のアシスタントコーチを務めていた時に、暫定監督となり、初めてトップチームの指揮を執ることになった。そして、決勝トーナメントでは最大の難敵セネガルをPKで下し、マリ、コンゴ民主共和国、ナイジェリアを退けて優勝、大会最優秀監督に選出された。
 実はコートジボワール連盟はグループリーグ終了後に現在フランス女子代表監督のエルベの招聘をフランス連盟に打診し、承諾を得ていたが、暫定監督のファエで戦って優勝した。大会後、ファエは正式に監督に就任し、2年の契約を結ぶに至ったのである。(この項、終わり)

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