第3346回 ドイツ、チリと連戦(2) メンバーを大きく入れ替えるユリアン・ナーゲルスマン監督
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■ワールドカップでは2大会連続してグループリーグ敗退のドイツ
フランスもドイツも3月下旬の代表戦は11月以来となる。フランスは負傷者を入れ替えたくらいであったが、ドイツは大きくメンバーを入れ替えてきた。開催国として欧州選手権に臨むドイツは、昨年9月から11月にかけて毎月2試合ずつ親善試合を行ってきたが、2勝1分3敗と負け越している。日本の皆様であれば昨年9月にドイツ国内で4-1と勝利したことをご記憶であろう。ドイツは2021年に行われた欧州選手権は決勝トーナメント1回戦で敗退(ベスト16)、ワールドカップでも2018年のロシア大会、2022年のカタール大会と連続してグループリーグで敗退しており、これまでに数々の栄光を獲得してきたドイツサッカーにとっては許されない事態である。
■昨年10月に代表監督に就任したユリアン・ナーゲルスマン
昨年の日本戦敗退後にハンス・ディーター・フリッツ監督が解任され、暫定監督としてルディ・フェラーがフランス戦のみ1試合指揮を執り、その後監督に就任したのがユリアン・ナーゲルスマンである。RBライプチヒ、バイエルン・ミュンヘンなどのクラブチームで実績を残してきた青年監督に最後の望みを託した。就任して初めての試合となる10月の米国での親善試合は米国に勝利、メキシコに引き分けという結果であったが、11月はホーム初陣となるトルコとのベルリンでの試合に敗れ、オーストリアとのアウエーの試合でも敗れ、連敗している。ナーゲルスマン監督は欧州では引き分けすらないという状態で、3月下旬にはメンバー発表前最後の代表戦を迎えた。この最後のメンバー選考ともいえる時期にフランス、オランダという欧州の強豪国との試合を組んだ。
■フランス、オランダとの連戦に新人6人を招集
ナーゲルスマン監督はメンバーを大きく入れ替え、新人を6人招集した。そのうち3人はリーグ戦3位と好調なシュツットガルトに所属している。バルデマール・アントンはウズベキスタン出身で27歳のストッパー、マキシミリアン・ミッテルシュテットは左サイドDFで今季ヘルタ・ベルリンから移籍、デニズ・ウンダフはトルコ国籍も有するクルド系のFWである。それ以外の3人はホッフェンハイムの21歳のFWのマキシミリアン・バイアー、ハイデンハイムのFWのヤン・ニクラス・ベステ、バイエルン・ミュンヘンで今季プロ契約をしたばかりの19歳のアレクサンダル・パブロビッチである。
ナーゲルスマン監督は10月の米国遠征では3人、11月の欧州での親善試合では2人の選手を初招集し、就任以来3回のメンバー招集で11人の新人に声をかけている。
■2014年ワールドカップ優勝メンバーのマヌエル・ノイアーとトニ・クロースが復帰
一方、ナーゲルスマン監督は新人の発掘だけではなく、代表から離れていた選手をカムバックさせることにも取り組んでいる。10月にはマッツ・フンメルス、ダビド・ラウム、レオン・ゴレツカなどを復帰させ、11月にはセルジュ・ニャブリをメンバーに戻している。今回は2014年のワールドカップ優勝メンバーであるGKのマヌエル・ノイアー、MFのトニ・クロースを復帰させた。ノイアーは37歳でこれまで代表117試合出場、クロースは34歳で106試合出場を誇る大ベテランである。ノイアーは36歳のナーゲルスマン監督よりも年長であり、自らよりも年を取った選手を選出している。
課題はこれらの新人組とカムバック組の定着率である。10月と11月の親善試合で初招集された5人のうち今回のメンバーに入ったのはMFのロベルト・アンドリヒとクリス・フューリッヒの2人だけである。また、ナーゲルスマン体制になってカムバックしてきた中でフランス、オランダ戦に臨むのはラウムだけである。
メンバーを入れ替えてもそれが機能していないのが、現在のドイツの低迷を象徴しているのである。昨年秋に骨折が治癒し、カタールでのワールドカップ以来、代表に復帰してきたノイアーも今度は内転筋を痛めて、フランス戦を前に代表チームから離脱してしまった。再びGKをマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンに託すことになる。欧州選手権開幕3か月前のドイツは揺れているのである。(続く)