第138回 2002年デビスカップ・ファイナル(4) シングルス第2戦、ダブルスに連勝し、王手
■シングルス第2戦、セバスチャン・グロジャン対エフゲニー・カフェルニコフ
ポール・アンリ・マシューとマラト・サフィンの3時間を過ぎる熱戦の後、フランスのナンバーワン、セバスチャン・グロジャンがコートに現れる。グロジャンはエフゲニー・カフェルニコフと対戦するが、過去の対戦成績はグロジャンの2勝3敗である。世界ランキングはグロジャンが16位、カフェルニコフは27位。通算ツアー勝利数はグロジャンが3勝、カフェルニコフは26勝。グロジャンは一昨年にノッティンガムで初勝利した後、昨年のパリオープン、今年のサントペテルブルグで勝ち、ベルシーは勝利を知っているコートであり、ロシアは勝利を知っている相手である。一方のカフェルニコフは1996年の全仏オープンと1999年の全豪オープンというグランドスラムを制覇した経験もある。また昨年はフランスのサッカーの首都と言われるマルセイユでもツアー勝利をあげている。しかし過去の対戦成績や世界ランキングなど参考にしかならないのがデビスカップである。
■グロジャン、ワンサイドゲームでカフェルニコフを下す
若武者マシューが一歩及ばなかった悔しさ、昨年の優勝からくる自信、そしてベルシーに集まった1万4500人の大歓声。これらが有機的に融合すれば、元世界ランキング1位もグランドスラム制覇2回も恐くない。第1セットはタイブレークにもつれこむが、タイブレークは7-3と一方的に取り、第1セットを7-6と先取する。第2セットは6-3、圧巻は第3セットである。グロジャンが6-0と一方的なスコアで3セット連取。終わってみればグロジャンのサービスエースが13、カフェルニコフのサービスエースは0というワンサイドのゲーム。
■ダブルスの常連ファブリス・サントロと今年初出場のニコラ・エスクーデ
初日は1勝1敗のタイスコアとなり、2日めのダブルスを迎えたのである。フランスはファブリス・サントロとニコラ・エスクーデのペア。サントロは1991年にデビスカップチーム入りする。以来シングルス9試合(6勝3敗)、ダブルス11試合(7勝4敗)に出場しており、ダブルスの大黒柱である。今年は1回戦のオランダ戦、2回戦のチェコ戦、準決勝の米国戦とダブルスについては全試合出場である。そしてエスクーデは今年初めてのダブルス出場、デビスカップでの通算成績はシングルス8勝1敗、ダブルス2勝1敗とシングルスを得意とするプレーヤーであるが、デビスカップの決勝に得意や不得意はない。あくまでも目前のカップに対する強い意志だけが問題なのである。
一方のロシアは前日のシングルスに出場したサフィンとカフェルニコフがペアを組む。1回戦のスイス戦、2回戦のスウェーデン戦、準決勝のアルゼンチン戦とペアを組み、2勝1敗。唯一の敗戦のアルゼンチン戦はフルセットにもつれこみ、しかも最終セットは19-17と壮絶な試合で6時間を越えるデビスカップ史上に残る死闘となった。そのような苦しい試合も経験しているロシアの黄金ペアに挑む、フランスペアという図式である。連日の超満員となったベルシーにははるばる駆けつけたジャン・バルテルミーの姿もある。この試合の重要性を物語っているVIPの観戦である。
■フルセットの死闘を制し、連覇に王手
試合は死闘になる。デビスカップでは初登場となるフランスペアであるが、この日のために2月間準備し、トーナメントでは7戦負け無しでパリオープンでも優勝している。6-3と第1セットを先取する。ところが第2セットになり、サントロのサービスが入らなくなり、第1サービスの成功率が50パーセントまで落ちる。その結果としてこのセットは3-6で落としてしまう。そしてフランスが巻き返しを図る第3セットも5-7と落としてしまい、流れはロシアに。すでに試合開始から2時間以上たち、選手の疲労も激しい。この疲労の影響が出たのがロシアペアであった。リターンやラリーでミスを連発し、このセット6-3とフランスが挽回し、セットカウント2-2に追いつく。この時、ベルシーには「ラ・マルセイエーズ」が響き渡ったのである。
そして最終セットはサフィンのサービスで始まる。勢いに乗るフランスはこのサービスをいきなりブレーク。このブレークが最後までロシアペアにのしかかる。最終セットは6-4でフランスが取り、逆転に次ぐ逆転の末、3時間44分という長時間の試合を制し、連覇に王手をかけたのである。(続く)