第158回  1月のフランス熱狂、3つのスポーツイベント(4) ハンドボール世界選手権、1次リーグ突破

■ポルトガルで開催された男子ハンドボール世界選手権

 年始恒例のパリ・ダカール・ラリーが終了してもフランスでは男子バスケットボール欧州選手権予選が行われ、サッカーのビッグカードが注目を集めなかったことは前回と前々回の本連載で紹介したとおりである。これらの試合はちょうどサッカーのビッグゲームと同じ日に行われたが、実はパリダカが終了してから連日行われてフランス中を熱狂させたスポーツイベントがあった。それが今回と次回紹介するポルトガルで行われたハンドボール世界選手権である。
 ハンドボールの世界選手権は日本でも1997年に開催されており、前回の2001年大会を制したフランス代表チームは昨年7月に日本を訪問したことから、日本の皆さんもよくご存知のことであろう。ハンドボールの世界選手権は第18回を迎え、その回数はサッカーのワールドカップをしのぐ。タイトルホルダーとしてフランスはポルトガルに乗り込む。24か国が参加する本大会は6チームずつ4つのグループに分かれ、まず1次リーグを戦い、各グループの上位4チームが2次リーグに進出する。2次リーグも4つのグループに分けて行われるが、準決勝に進むことができるのは各グループのトップだけ、という大会形式である。

■躍進著しい中東のサウジアラビアに辛勝

 パリダカの終了した翌日に行われた1次リーグの初戦の相手はサウジアラビア。クウェート、カタールと並ぶアジアの代表である。アジアの代表は中東勢が占め、かつてのサッカー同様、精力的な強化の成果である。かつてアジアのサッカーをリードした中東においてもサッカーから他のスポーツへの重点の以降は顕著である。この中東の新興国を相手に前回王座のフランスも緊張気味、前回王者が開幕戦で新興国相手に苦戦すると言うのは昨年のワールドカップのセネガル戦を想起させる。10分過ぎにはサウジアラビアがリードを奪ったが、ここでフランスは本領を発揮し、パトリック・カザルやダニエル・ナルシスが得点を重ね、逆転する。前半を14-10とリードして終え、後半もそのリードを広げ、結局30-23と言うスコアで初戦を制したのである。

■大会特有の規定により最終戦まで気の抜けない1次リーグ

 その大会形式を紹介しよう。2次リーグは4チームで行われる場合、通常の総当り方式のリーグ戦で行うならば、各チーム3試合行うことになる。ところが、この大会の2次リーグは2試合しか行われない。これはフランスにかかわる組み合わせで紹介すると、グループCの1位から4位までが2次リーグに進出するが、グループCの1位と3位は2次リーグではグループ1に入り、グループDの2位と4位とともに準決勝を目指すことになる。普通ならば1次リーグで対戦したグループCの1位と3位は2次グループで再戦することになるが、この大会の場合はこの両者の対戦はなく、1次リーグでの戦績がそのまま持ち越されるのである。これは2次リーグでは上位1チームしか準決勝に進出できないことを考慮すると、2次リーグの開始時点で1敗していることは決定的に不利である。つまり、2次リーグで同じグループになる可能性のある相手に1次リーグで敗れることは致命的なことであるとともに、1次リーグでも2位までに入っておきたい。
 この段階でクロアチアは2勝1敗でフランスに次ぐ2位。前回大会ではベスト16どまりであったが、その後力を蓄えている。このクロアチア相手にフランスは疲労もあってか精彩を欠き、接戦の末22-23と惜敗する。

■ロシアに公式戦初勝利、2次リーグはポールポジションでスタート

 ロシアとの最終戦を前に、2次リーグ進出を決めたフランスであるが、上記の大会形式を考えるならば、2次リーグでクロアチアと同じグループに入ることは避けたい。1次リーグ最終戦でクロアチアがハンガリーに勝って首位となり、フランスがロシアに敗れると3位になる。クロアチアがハンガリーに勝つと仮定するならば、フランスとしては最終戦に勝って2次リーグでクロアチアと同じグループに入ることを回避したい。
 ロシアはシドニーオリンピックで優勝した強豪であり、それまで公式戦でフランスはロシアに勝ったことがない。そのロシアは元気がなく、一方のフランスは完璧な試合運びで終始大量リードする。終わってみれば31-15とロシア戦初勝利は思いもよらぬ大差となった。そしてフランスはグループCで2位となり、2次リーグはグループCで4位のハンガリー、グループDで1位のスウェーデンと3位のスロベニアとともにグループ4に入る。ハンガリー戦の勝ち点2(勝ち点は勝ち=2、引き分け=1、負け=0)が加算されたポールポジションでフランスは準決勝を目指すことになったのである。(続く)

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