第196回 欧州王座を争うフランス勢(2) 女子バレーボール、カンヌが連覇
■優勝経験のあるチームが集まったファイナルフォー
前回の本連載では1993年の男子バスケットボールでリモージュが優勝して以来、フランスのクラブチームが欧州で何度も栄冠に輝いてきたことを紹介したが、今年もフランスのクラブチームが活躍した。
まず、前年に女子バレーボールで欧州一となったカンヌが今年も活躍した。クラブチーム欧州一を決める女子バレーボールの欧州チャンピオンズリーグのファイナルフォーは3月15日と16日にポーランドのピラで行われた。ポズナンの北、ベルリンの東にあるこの小都市に集まったのはカンヌの他、イタリアのモデナ、ベルガモ、ロシアのエカテリンブルグという4チームである。実は過去10年間の欧州チャンピオンズリーグを振り返ってみると、今回ピラに集まった4チームがそのうち7回優勝している。ベルガモが3回、エカテリンブルグが2回、カンヌとモデナがそれぞれ1回の優勝を果たしている。
■2度のマッチポイントをしのぎ、フルセットの準決勝を制す
欧州においてはまだ女子スポーツに対する関心は高くない。このバレーボールの欧州チャンピオンズリーグに関しても、男子の優勝賞金が10万ユーロであるのに対し、女子のそれはわずか2000ユーロでしかない。しかし、勝利を目指し、ボールを拾い、ボールをつなぎ、ブロックをかいくぐってアタックし、得点シーンには肩を寄せ合うシーンに男女の差はない。3月15日に行われた準決勝の第二試合でカンヌはモデナと対戦した。モデナは12年前、男子の決勝でフレジュスの栄冠に「待った」をかけたフランス勢にとっては因縁の相手である。
試合はまずカンヌが第1セットを25-22、第2セットを29-27と連取し、決勝進出に王手をかける。ところが2年ぶりの優勝を狙うモデナはここから挽回、第3セットを25-21と反撃する。第4セットもカンヌが先行しながら、モデナが逆転して25-16とタイスコアになる。最終セットにもつれこんだ試合の流れは完全にアルプスの向こう、モデナは最終セットで2回のマッチポイントをつかむ。ところが、これらのピンチを前年の女王はしのぎ、最後は3連続ポイントで17-15と逆転し、決勝進出を決めたのである。
■エカテリンブルグを破り連覇達成
翌日の決勝の相手はエカテリンブルグ、多くのロシア代表選手が所属するチームであり、1994年、1995年とこの大会で連覇を果たしている。第1セットはエカテリンブルグが25-17と先取、第2セットは26-24とカンヌが競り勝つ。第3セットも29-27とカンヌが接戦をものにして連覇に王手をかける。第4セットも接戦となったが、21-21からカンヌが突き放し、最終的には25-22で第4セットをとり、連覇を果たしたのである。フランスのクラブチームで連覇を果たしたのは女子バスケットのユーロリーグで1997年、1998年を制したブルジュ以来の偉業である。
■連覇のヒロイン、キャプテンのビクトリア・ラバ
この優勝の最大の功労者は大会最優秀選手にも選ばれたビクトリア・ラバである。グルジア出身で昨年6月にフランス国籍を取得したラバはキャプテンであり、センターとしてチームの大黒柱として獅子奮迅の活躍をした。フランス女子バレーボール界における最大のスターであり、連覇のヒロインとなった。そしてこのカンヌの特徴は多くの外国人選手が活躍していることである。スターターの6人のうちフランス国籍はラバとカリン・サリナスだけである。残る4人はチェコ人のカテリーナ・ブクロバ、オランダ人のエルナ・ブリンクマン、中国人のマオ・ジュラン、フィンランド人のリカ・レトネンであり、そして監督も中国人のファン・ヤンである。フランス人の2人はベテラン(サリナスは29歳、ラバは28歳)であり、文字通りチームの支柱として活躍した。サリナスは2年前にフランス代表から引退しているが、新たにフランス国籍を取得したラバはこれから代表入りをする可能性もある。
このカンヌの勝利はフランスのバレーボール界にとって新しい道を開いただけではなく、欧州の女子バレーボールにも影響を与えた。カンヌの会長からの働きかけもあり、来年からこのタイトルの優勝賞金は2000ユーロから一気に2万5000ユーロへと10倍以上に跳ね上がることが決定した。今まで男子の陰に隠れていた女子のバレーボールの欧州における発展とフランス勢の活躍を期待したい。(続く)