第197回 欧州王座を争うフランス勢(3) お家芸ハンドボール、ついにモンペリエが頂点に

■フランスのお家芸、ハンドボール

 バスケットボール、バレーボールという室内競技においてフランスのクラブチームが男女とも欧州の栄冠に輝いているが、これまでハンドボールではフランスのクラブチームが欧州一になったことはなかった。フランス男子ハンドボールについては近年ナショナルチームについては世界のトップレベルにある。本連載第158回から第160回で3位に入った世界選手権の模様をご紹介したが、世界選手権に関しては1993年大会で準優勝、1995年大会で優勝、1997年大会は3位、2001年大会優勝、そして2003年大会3位と5大会連続してメダルを獲得しているお家芸である。また、女子も昨年の欧州選手権では3位になっている。そして実力とともに人気も兼ね備えており、室内の団体球技ではフランスにおいて最も人気のある競技である。
 しかしながら、1957年から行われているクラブチームレベルで争われるハンドボールの欧州チャンピオンズリーグでは優勝に届かず、唯一のタイトルは1993年にカップウィナーズカップでオランピック・ド・マルセイユ-ビトロールが優勝したことがあるだけである。フランスのクラブが欧州最高峰を制したことはなく、代表チームとクラブチームの格差がサッカー同様、存在していた。多くの代表選手がドイツなどの他国のクラブに所属しているという構図もサッカーに似ている。しかし、ハンドボールもフランスのクラブチームが欧州の頂点に輝く日がやってきた。

■モンペリエ、決勝トーナメントで逆転勝ちを続け、決勝進出

 昨年度のリーグチャンピオンとなったモンペリエが男子ハンドボールの欧州チャンピオンズリーグに参戦。まず、4チームがホームアンドアウエーで行うグループリーグはモスクワ(ロシア)、カルビナ(チェコ)、リュブリャナ(スロベニア)とともに戦った。カルビナについては2000年に広島で開催されたジャパンカップに出場したことから、日本の皆様も記憶に新しいであろう。この1次リーグで開幕5連勝、5勝1敗という成績で決勝トーナメントに進出する。決勝トーナメントでは厳しい戦いが続いた。決勝トーナメント1回戦にあたる準々決勝ではクロアチアのザグレブと対戦し、アウエーを28-28のドローで乗り切り、ホームで行われた第2戦で34-25と勝ち、準決勝に進出する。準決勝の相手はグループリーグでも対戦したリュブリャナであり、アウエーでは負けている。3月30日に行われた第1戦はアウエーで行われ27-29と惜敗する。第2戦はその1週間後モンペリエで行われ、29-23と勝ち、得失点差で上回るモンペリエが決勝に進出する。フランスのクラブチームが決勝に残ったのは史上初と言う快挙である。

■第1戦での8点差を大逆転し、モンペリエが優勝

 ホームアンドアウエーで行われた決勝戦も第1戦はアウエーでの戦いとなる。決勝の相手はスペインのポートランド・サンアントニオ、第1戦ではモンペリエは精彩を欠き、19-27と8点差をつけられて敗れる。しかし、第2戦にはモンペリエの逆転勝利を期待して、多くの観衆が集まった。この期待に応えたのがGKのティエリー・オメイヤであり、次々とシュートをブロック、そして攻撃陣も得点を重ね、31-19という12点差をつけて勝利、ついにハンドボールもフランスのクラブが欧州の頂点に立ったのである。

■フランス勢で決勝を争うラグビー

 そして、世界選手権(ワールドカップ)の開始、プロ化が他のスポーツに比べて著しく遅れたラグビーでもフランス勢の活躍は特筆すべきである。1987年にワールドカップが始まり、1995年にプロ化が容認されたラグビーの世界では、1995-96シーズンに欧州クラブ選手権が始まった。1996年1月に行われた決勝で名スタンドオフのトマ・カステニエードを擁するトゥールーズはウェールズのカーディフを21-18で破り初代王者となっている。
 その翌年もブリーブがイングランドのライカスターを28-9と破り、フランス勢が連覇を果たしている。その後、上位進出するも優勝ができなかったフランスのラグビークラブに久しぶりに栄光の時がやってきた。今年の欧州クラブ選手権の決勝は5月24日、アイルランドのダブリンで行われるが、栄光のファイナリストはトゥールーズとペルピニャンというフランス勢同士の戦いとなった。この日はサッカーのフランスリーグの最終節と同じ日であるが、サッカーはすでにリヨンがほぼ優勝を手中にしていることもあり、フランスのスポーツファンはダブリンでのフランス勢の激突に注目するであろう。(この項、終わり)

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