第395回 スタッド・ド・フランスの主役、ラグビー (1) 不振のサッカーに代わる主役

■ホームで4連続引き分け、本拠地ではノーゴール

 今年最後の親善試合もスコアレスドローに終わり、ファンの期待に応えることができなかったサッカーのフランス代表。レイモン・ドメネク監督は新体制になってからの成績は2勝4分であり、無敗でここまできていることをしきりにアピールしているが、その反応は手厳しい。勝ち星はフェロー諸島とキプロス相手のものであり、ホームゲームでは初戦の親善試合のボスニア・ヘルツェゴビナ戦、ワールドカップ予選のイスラエル戦とアイルランド戦、そして先日のポーランドとの親善試合と4試合連続引き分けであり、特にスタッド・ド・フランスでは1ゴールもあげることができないまま、年を越えることになってしまったことへの批判は少なくない。

■観客の多くは相手チームのファン、目立つ空席

 さらにファンの行動は正直である。スタッド・ド・フランスに集まった観客はワールドカップ前半の天王山といわれたアイルランド戦こそ7万8000人を記録したが、イスラエル戦は4万3000人、そしてポーランド戦でも5万人をようやく越えたにすぎない。しかもこの観客動員は対戦相手に恵まれたからである。アイルランド戦の場合は2万人の熱心なファンがアイルランドからやってきた。そしてパリ近郊に在住する多くのイスラエル系、ポーランド系の住民がスタッド・ド・フランスに足を伸ばした。このようなことを考えると、かつては欧州でイングランド代表についで2番目の集客力を誇ったフランス代表の地盤沈下は否めない。

■ワールドカップではサッカーを凌いだラグビーの人気

 前回までの本連載でとりあげたポーランド戦は今年最後のフランス代表の試合であり、空席が目立ったと紹介したが、スタッド・ド・フランスにとっては実はこれが年内最後の試合ではない。そしてスタッド・ド・フランスで行われる試合は空席の目立つ試合ばかりではない。それが今回から紹介するラグビーのフランス代表の試合である。
 同じフットボールでありながら、サッカーよりも50年以上遅れてワールドカップの始まったラグビーであるが、近年のワールドカップ人気はサッカーのそれを凌ぐものがある。サッカーのワールドカップの翌年にラグビーのワールドカップは開催され、昨年は豪州で行われた。前年のサッカーのワールドカップに続き、欧州とは時差のある開催となったが、フランスならびに英国ではテレビの視聴率は完全に逆転、ラグビーのワールドカップがサッカーを上回る結果となった。もちろん、優勝したイングランドをはじめとする英仏勢の成績が良かったことも見逃せないが、英仏ではフットボール文化の中心はサッカーではなくラグビーにあることを如実に示している。

■4位に終わった昨年のワールドカップ

 昨年のワールドカップについては本連載の第249回から第251回でグループリーグの模様を紹介し、第261回では準決勝のイングランド戦を取り上げた。優勝したイングランドと準決勝で対戦し、残念ながら敗退したフランス代表は4日後に行われた3位決定戦のニュージーランド戦でも13-40と記録的な大敗を喫してしまう。
 ところが、それから約1年、フランス代表は大きく成長し、ファンの心をさらにつかむに至ったのである。ラグビーの世界において欧州の強豪が国際試合を行う機会は1年に3回ある。まず、シーズン中の2月から3月にかけて欧州の伝統国6か国対抗が行われ、欧州内の戦いが行われる。そしてシーズンが終了した6月から7月にかけて、欧州のチームは南半球へ遠征し、南北対決を行う。次に11月には逆に南半球のチームが北半球を訪問し、シーズン中の欧州で南北対決が行われる。すなわち、シーズン中は欧州で国際試合を行い、シーズンオフには他地域へ遠征することになる。ちょうど現在ラグビーの日本代表も欧州を転戦中であるが、シーズン中は欧州で国際試合というルールに則ったものである。日本国内ではシーズンを中断して欧州遠征を行うことに異論が少なくないようであるが、伝統国優先と言う国際試合のスケジュールには従わざるを得ないのである。
 ワールドカップでは、準決勝と3位決定戦と言う最後の2試合で不本意な成績を残して、豪州を去ったフランスであったが、体制を堅持してフランスは今年2月からの6か国対抗に臨んだのである。(続く)

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