第396回 スタッド・ド・フランスの主役、ラグビー (2) 新記録の観客の前でグランドスラム達成

■エリサルド-ミシャラクのハーフ団でアイルランドに快勝

 不本意な準決勝、3位決定戦で終わってしまった豪州でのワールドカップ、チームの中心であったファビアン・ガルティエが代表から退いたが、監督のベルナール・ラポルトは留任し、2004年の6か国対抗を迎えることになった。主将でスクラムハーフのガルティエの引退を受けて、本来スクラムハーフであったがスタンドオフを豪州で見事に務めたフレデリック・ミシャラクのポジションにファンは注目した。
 今年の6か国対抗の初戦はスタッド・ド・フランスでのアイルランド戦。近年はフランス、イングランド、アイルランドの3チームとスコットランド、ウェールズ、イタリアと3チームとの間に実力の差が存在する。アイルランドには前年のワールドカップ準々決勝で勝利しているとはいえ、前年の6か国対抗では敗れているので、油断ならない相手である。ラポルト監督は初戦のメンバーとしてミシャラクをスタンドオフとして起用、スクラムハーフにはミシャラクのトゥールーズでのチームメイトでクラブではスタンドオフを務めているジャン・バプティスト・エリサルドを起用することを発表した。2月14日、スタッド・ド・フランスは7万9547人と言うサッカーのアイルランド戦を上回る満員の観衆で埋まったが、もちろん不安を持たないファンはいなかった。しかしながら、その不安の中、フランスのフィフティーンは見事な試合を展開した。ミシャラクが先制のPGを決めた後、トライをあげて、前半は11-3と折り返す。後半開始早々にアイルランドにトライを許したが、その後はフランスが得点を重ね、エリサルドもチームとして4本目のトライを試合終了間際に決める。結局35-17と言うスコアでフランスは上々のスタートを切る。

■イタリアに完封勝ち、ウェールズにも競り勝つ

 第2戦は翌週にイタリアを迎える。この試合も7万9000人を超える超満員の観衆。日本のクラブチームでも活躍したジョン・カーワン率いるイタリアは青のジャージー、フランスは上下とも白のジャージーとパンツでイタリアを迎え撃つ。試合はフランスの完勝、3トライをあげ、25-0とイタリアをシャットアウトする。注目のエリサルドはプレイスキッカーとして活躍する。
 第3戦は初めてのアウエーでの試合、カーディフでのウェールズ戦である。3月7日に行われたが、前日にロンドンでイングランドがアイルランドに敗れ、フランスは優勝争いに大きく前進した。このイングランドの敗戦が選手の気の緩みを生んだのか、この試合は苦戦する。両チームとも5PGをあげ、2トライのフランスが1トライのウェールズをかろうじて抑え、29-22というスコアで3連勝。この試合もエリサルドは1トライ、2ゴール、5ペナルティゴールと言う活躍を見せる。

■代役のヤチビリも活躍し、スコットランドをアウエーで完封

 3月21日のスコットランド戦はアウエーの戦いであったが、フランスはまたもや完勝する。スクラムハーフにはエリサルドに代わりドミトリ・ヤチビリを起用。エリサルドと遜色ない活躍を見せ、プレイスキッカーも務めて2ゴール、4ペナルティゴールを決める。31-0と完封勝ちし、負傷のためハーフタイムで交代したミシャラクも翌週のイングランド戦には復帰可能と診断される。

■宿敵イングランドを下し、8回目のグランドスラムを達成

 グランドスラムを賭けたイングランド戦は3月27日の夜9時からスタッド・ド・フランスで行われた。この試合は7万9906人の観衆が集まり、スタッド・ド・フランスの最高観客記録を塗り替える。昨年のシドニーでの敗戦の借りを返そうと青い軍団が前半からグランドを走り回る。この試合もスクラムハーフを務めるヤチビリが18分に先制のペナルティゴール、その後もフランスが得点を重ね、前半を21-3で折り返す。後半に入り、イングランドの猛攻を受けたものの、結局24-21と言う僅差でフランスは5連勝をマークし、グランドスラムを達成する。フランスのグランドスラムは一昨年以来のことであり、通算8回目の偉業であるが、主将のファビアン・プルースとオリビエ・マーニュは4回のグランドスラムに貢献している。豪州での敗戦からフランスは立ち直ったのである。(続く)

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