第399回 スタッド・ド・フランスの主役、ラグビー (5) マルセイユでもアルゼンチン症候群
■主要国の連勝記録
昨年のワールドカップ準優勝チームの豪州に勝って8連勝を達成したフランス代表。実は世界記録は南アフリカ(1997年8月から1998年11月まで)、ニュージーランド(1965年9月から1969年6月まで)が記録した17連勝と言うとてつもない数字である。それに次ぐ15連勝と言う世界第3位の連勝記録を持つのがアルゼンチンである。アルゼンチンは伝説の名選手ウーゴ・ポルタを擁し、1971年8月から1973年10月にかけて無敵を誇ったのである。北半球の最多連勝記録はイングランドの14連勝、これは2002年3月から2003年8月にかけて記録したものであるが、本連載の読者の皆様ならばこのイングランドの連勝記録をストップしたのがフランスであり、その場所がサッカーの都・マルセイユであったことをご記憶であろう。
■ラポルト体制下で3連敗中のアルゼンチン
そのマルセイユでフランスは自らの連勝記録を更新することができるのであろうか。アルゼンチンはピューマスというニックネームを持つ南米の強豪であり、過去5回のワールドカップに連続して出場し、安定した実力を誇っている。これまでのフランスとアルゼンチンの対戦成績はフランスが29勝1分7敗と大きく勝ち越している。しかしながら、不思議なことに現在3連敗中である。2002年6月15日に27-28、2003年6月14日に6-10、2003年6月20日に27-28といずれもブエノスアイレスで対戦しフランスが惜敗している。4年前に代表チームの監督にベルナール・ラポルトが就任して以来、フランスは14か国と対戦しているが、その中で唯一1勝もしたことがないのがアルゼンチンなのである。フランスにとって分の悪い対戦成績は、ニュージーランドとは1勝5敗、イングランドとは3勝5敗、前週に勝ったばかりの豪州とは2勝3敗となっている。負け越しているとは言っても少なくとも勝ったことがある。しかしながら、昨年のワールドカップで決勝トーナメントに進出できなかったアルゼンチンとは3戦3敗、1勝もあげることができないのである。まさにアルゼンチン症候群と言えるであろう。
■強豪相手にフランスが4戦全勝中のマルセイユのベロドローム
その苦手アルゼンチンに対し、フランスはサッカーの都・マルセイユでラポルト体制での初勝利を目論む。マルセイユのベロドローム競技場はワールドカップ・フランス大会のために改装され、6万人収容の大スタジアムとなった。マルセイユはラグビーが盛んな土地柄ではないが、地元でのワールドカップ以降、ラグビーの国際試合にも使われるようになった。サッカーの世界では1984年欧州選手権準決勝と言うドラマの舞台となったベロドロームであり、1998年ワールドカップでもフランスの初戦の会場となったが、年に1度のペースで行われるラグビーのテストマッチでも早速ドラマを演出している。2000年11月18日にはニュージーランド、2001年には豪州、2002年には南アフリカ、2003年にはイングランドと世界のトップ4と対戦し、すべて勝利をあげている。先述したとおり、南アフリカ以外はこの期間に負け越しているチームであり、いかにベロドロームが例外的な場所であるかがよくわかる。そして常に満員6万人の観衆を集めてきたが、その中にはサッカーのマルセイユファンは少ない。大多数はラグビーの盛んな南西フランスから移動してきた熱心なファンなのである。
■アルゼンチン・シンドロームから脱せず、完敗を喫す
今回のアルゼンチン戦も熱心なファンでベロドロームは埋め尽くされた。しかしながら、試合は9分にアルゼンチンがペナルティゴールで先制したのを皮切りに、終始アルゼンチンがリードをする。フランスは0-13とリードを広げられた28分に5メートルスクラムから得たチャンスでトライをあげたのが唯一の見せ場となった。その後、フランスはフレデリック・ミシャラクがペナルティゴールを次々と決め、終盤の73分には14-19と5点差まで迫ったが、終了間際にとどめのトライを許し、結局14-24と言うスコアで敗れてしまう。
フランスの連勝記録は8でストップ、マルセイユのベロドロームで初めての黒星、そしてアルゼンチンに4連敗という残念な結果になってしまう。秋のシリーズ最終戦のニュージーランド戦を迎えることになったのである。(続く)