第400回 スタッド・ド・フランスの主役、ラグビー (6) ニュージーランドに敗れ、負け越す
おかげさまで第400回の連載を迎えることになりました。読者の皆様にあらためて感謝するとともに、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。
■世界ランキング1位のニュージーランドが欧州遠征
苦手アルゼンチンと相性のいいマルセイユのベロドロームで対戦し、自らの連勝記録の更新を狙ったフランス代表であるが、終始リードを許す展開で1トライに押さえ込まれ、完敗を喫してしまった。秋のシリーズの最終戦はスタッド・ド・フランスに戻ってのニュージーランド戦である。ニュージーランドは昨年のワールドカップでは準決勝では豪州に敗れて3位決定戦に回ったが、現在の世界ランキングは1位である。オールブラックスの愛称で知られ、今年は精力的に国際試合を行い、6月にはワールドカップ優勝のイングランドをホームに迎えて36-3、36-12と言う大差で連破、7月には豪州、南アフリカなどとホームで対戦して3連勝する。8月には豪州、南アフリカへ遠征し、連敗している。秋には欧州遠征を挙行しており、第1戦はローマでイタリアに59-10と圧勝、第2戦はカーディフでウェールズに26-25と辛勝し、最終戦を迎えるのである。
■スタッド・ド・フランスでニュージーランド戦初勝利を狙うフランス
フランスとニュージーランドの試合が秋のシリーズの最終戦に組まれていることは、両国にとって最も重要な対戦相手であることを示している。連勝記録が途切れたフランスであるが、昨年のワールドカップとは異なり、地元でのベストメンバーでの試合で負けるわけにはいかない。過去の対戦成績はフランスが10勝1分29敗と大きく負け越しており、最近の成績を振り返ってみても前回の本連載でも紹介した2000年11月18日にマルセイユでの対戦(42-33でフランスの勝利)以来、1分3敗という成績が続いている。スタッド・ド・フランスでは今まで2回対戦しているが、2000年11月には26-39の敗戦、2002年11月には20-20の引き分けであり、いまだにスタッド・ド・フランスで勝利をしたことがない相手である。
■ニュージーランド戦に闘志を燃やすトニー・マーシュ
昨年のワールドカップ3位決定戦でふがいない戦いをしてしまったフランスであるが、今回の対戦で誰よりも闘志を燃やす選手がいる。それはセンターでニュージーランドのオークランド出身のトニー・マーシュである。双子の兄弟のグレン・マーシュは日本のクラブに所属し、昨シーズンは日本のリーグでトライ王にもなり、日本のスポーツ界を代表するスター選手であることから、サッカーファンの皆様もよくご存知であろう。トニー・マーシュは病に侵され、オールブラックスの夢を断念することになる。26歳となった1998年にフランスのクレルモン・フェランに移籍する。そして、2001年の秋にフランス代表入りしたのである。満員の観衆を集めたスタッド・ド・フランスでの南アフリカ戦でデビューし、20-10で勝利、そして次のマルセイユでの豪州戦ではトライを決めて14-13と言う勝利に貢献している。昨年のワールドカップの際も、準決勝でイングランドと戦ったフランスのメンバーは3位決定戦にほとんど出場しなかったが、唯一準決勝のメンバーで3位決定戦にも出場したのがマーシュなのである。強行日程の中、マーシュが連続出場した理由は3位決定戦の相手がニュージーランドだったからに他ならない。他のメンバーのモチベーションが下がり、大敗を喫した試合であったが、トニー・マーシュにとってはオールブラックスとの初対決であったのである。
■超満員の観衆を集め、主役は交代
それから1年、今度はモチベーションも十分な両チームが秋の最後の戦いで対決した。ファンの期待に応えて、フレデリック・ミシャラクがペナルティ・ゴールで先制したが、その後は立て続けにペナルティ・ゴールを許し、前半終了間際にはトライを奪われる。6-19で折り返した後半は4つのトライを献上し、攻めては無得点とフランスは沈黙する。最終スコアは6-45と大差がつき、39点差の敗戦はフランス代表史上3番目のワースト記録である。
秋のシリーズは負け越しに終わったものの、どの試合も満員で、サッカーの代表とは比べ物にならないほどの注目を集めた。スタッド・ド・フランスの主役はサッカーからラグビーへと交代したのである。(この項、終わり)