第442回 マスターズシリーズ・モンテカルロ大会 (2) リシャール・ガスケ、世界1位を下す
■華やかなイベントは全てキャンセル
マスターズシリーズ・モンテカルロ大会は4月11日から17日まで開催される。ちょうど大会期間中の15日にレーニエ3世の葬儀があったことは常陸宮ご夫妻が参列されたことから日本の皆様もよくご存知のことであろう。大会期間中にレーニエ3世の葬儀があることから、日程面の調整も議論となったが、予定通りの日程で大会は開催された。しかし、例年はレセプションをはじめとして華やかな行事が目白押しのトーナメントであるが、今回はそのような「スポーツに直接関係のない行事」は全てキャンセルされた。
■世界ランキング1位のロジェ・フェデラーがクレーコートに今季初登場
しかし、華やかな行事がキャンセルされたが、赤土の上での戦いは例年以上の盛り上がりを見せた。前回の本連載でも紹介したとおり、このトーナメントは欧州でシーズン初めて行われるマスターズシリーズであり、ローランギャロスへと続くクレーコートの戦いの入り口となり、ひいてはウィンブルドンまで続く欧州のテニスシーズンの序章を飾る大会である。この大会にエントリーするのはクレーのスペシャリストたちだけではない。世界ランキングの上位選手が軒並みエントリーする。世界ランキング1位のロジェ・フェデラー(スイス)、3位のマラト・サフィン(ロシア)、4位のラファエル・ナダル(スペイン)などトップ10のうち7人がエントリーしている。レイトン・ヒューイットやアンドレ・アガシなどクレーコートを苦手としている選手はエントリーしなかったが、世界ランキング1位で今季6戦中5勝のフェデラーのエントリーは大きな注目を集めた。しかし、フェデラーはクレーコートが得意ではなく、昨年はハンブルグでは優勝したものの、モンテカルロにはエントリーせず、ローマでは2回戦負け、ローランギャロスでも3回戦で敗退している。今季もこれまでにあったクレーコートのトーナメント5戦のいずれにもエントリーせず、回避してきた。ところが、世界ランキング1位で昨年ローランギャロス以外の四大大会を全て制したフェデラーにとって今年のローランギャロス獲得は最大のチャレンジであり、そのためにも今年はモンテカルロの回避は考えられない。
そのフェデラーは1回戦で英国の英雄的プレーヤーであるグレッグ・ルゼドスキーを難なく下し、2回戦では2月下旬のアカプルコのクレーコートで決勝まで残ったスペインのアルベルト・モンタネスを制する。3回戦も2月初めのビナデルマールのクレーコートの準優勝者であるチリのフェルナンド・ゴンザレスという難関が続く。第2セットをタイブレークで落とし、フルセットとなったが振り切って準々決勝に進出する。
■フランス勢総崩れの中、予選勝ち上がりのリシャール・ガスケが快進撃
フェデラーの準々決勝の相手はフランスのリシャール・ガスケである。このトーナメントに地元フランスからは9人が本戦に進出したが、フランス勢で最もランキング上位となる世界ランキング32位のセバスチャン・グロジャンはエントリーせず、フランス人のシード選手はいなかった。続く49位のファブリス・サントロも2回戦で姿を消し、レーニエ3世の逝去がそのままフランス勢の元気のなさにつながっているようであった。フランス人選手が軒並み序盤で敗退し、2回戦を勝ち抜いたのは世界ランキング101位で予選勝ち上がりのガスケだけだった。
ガスケはこの大会が今シーズン初めてのATPトーナメント本戦出場である。地元ファンですら期待していなかったが、ガスケは3回戦でもランキング15位のロシアのニコライ・ダビデンコを下し、準々決勝に進出した。
■世界トップのフェデラーを倒した6人目の選手
準々決勝はレーニエ3世の葬儀と重なる15日の金曜日、このモナコ国民にとっては一生忘れられない日にモナコのスポーツファンは一生忘れられない試合を見ることになった。ガスケは第1セットをタイブレークに持ち込み、惜しくも落とす。ところが第2セットでは6-2と圧倒し、第3セットへともつれ込む。そしてこの第3セットで6-6となり、勝負はタイブレークへと持ち込まれ、ガスケが競り勝った。昨年2月にフェデラーが世界ランキングのトップに立って以来、フェデラーを下した選手は5人しかいない。18歳のガスケは金星をあげたが、3年前のこの大会がATPツアーのデビュー戦であった。ガスケは準決勝で優勝者となるナダルに敗れたが、これからの欧州でのテニスシーズンに楽しみな新星が誕生したのである。(この項、終わり)