第446回 ラグビー現象(2) トゥールーズ、2年連続で欧州カップ決勝進出

■ラグビー現象を支えるフランスのクラブチーム

 前回の本連載ではスタッド・フランセが4月に3回にわたってパルク・デ・プランスを満員にしたことを紹介したが、これは現在フランスでは「ラグビー現象」と呼ばれている。今年の六か国対抗ラグビーでフランス代表は2年連続の優勝はならなかったものの、4勝1敗でウェールズに次ぐ2位の成績を収め、2年後にはフランスでワールドカップが開催される。
 ラグビーのフランス代表はサッカーの代表とは異なり、スタッド・ド・フランスを満員にしているが、今回のラグビー現象を支えているのは代表チームの戦績やワールドカップの開催だけではなく、むしろ国内のクラブチームの活躍である。

■長い伝統と南西部主流の国内リーグ

 フランスの国内ラグビーリーグは1891年に始まり、サッカーよりも40年以上の長い歴史を誇る。1部リーグはTOP16と言われ、16チームで編成される。昨年8月から今年5月にかけてホームアンドアウエーの総当りで各チーム30試合戦い、上位4チームが6月に入って準決勝と決勝を戦い、チャンピオンを決定する。伝統的に南西部のチームが主流であるが、1990年にラシンがパリのチームとして31年ぶりに優勝する。そしてスタッド・フランセは1998年に90年ぶりに優勝してからは、2000年、2003年、2004年と優勝を重ねている。しかしながら、やはり主役は南西部のクラブであり、南西部におけるラグビーの人気がサッカーをしのいでいる。本連載第433回ではワールドカップが出場国も決まっていない段階で日程を発表したことを紹介したが、試合会場のほとんどは1998年のサッカーのワールドカップに使用した競技場であり、ラグビー人気の低い地域へのプロモーションも怠りない。

■欧州カップの決勝トーナメントに最多の3チームが進出

 この16チームはすべて欧州カップなどの欧州レベルの試合に出場する。これらは国内リーグと逆に1995年開始と歴史は浅いが、国内リーグやサッカーのチャンピオンズリーグ同様の関心を集めている。フランスからは上位6チームは欧州カップ、7位から16位までのチームは欧州チャレンジカップに出場する。この2つの大会の位置づけはサッカーのチャンピオンズリーグとUEFAカップの関係に似ている。
 今季の欧州カップに出場したフランス勢はスタッド・フランセ、ビアリッツ、トゥールーズ、ブルゴアン、カストル、ペルピニャン、10月から1月にかけてグループリーグを争い、スタッド・フランセ、ビアリッツ、トゥールーズの3チームはグループリーグで首位となり、決勝トーナメントに進出した。8チームで争われる決勝トーナメントは、フランスの3チーム以外はイングランドから3チーム(レスター、ニューカッスル、ノーサンプトン)、アイルランドから2チーム(レンスター、ムンスター)が進出しており、フランスはイングランドと並び最大勢力である。決勝トーナメントは1回戦制で行われ、準々決勝、準決勝はいずれかのチームの本拠地での試合となる。

■トゥールーズ、2年連続4回目の決勝へ

 準々決勝で最初に登場したのは、初代の欧州王者であり、昨年の準優勝チームであるトゥールーズである。昨年は決勝でイングランドのWASPに終了直前に決勝トライを奪われ、20-27と涙をのんでおり、王座への意気込みも並々ならぬものがある。準々決勝ではノーサンプトンと対戦したが、実は両チームはグループプールでも同じプールであり、1勝1敗ながら得失点差でトゥールーズがプール1位となっている。昨年決勝で敗れたのもイングランドのクラブであり、トゥールーズで行われた試合は雌雄を決する試合となり、3万7000人の観衆が集まった。トゥールーズにはサッカーチームもあり、国際試合も行われるが、これほどの観客が集まることはまずない。大声援に応えたトゥールーズは4トライを上げ、ノーサンプトンをノートライに押さえる。さらに、フランス代表でも活躍するジャン・バプティスト・エリサルド、フレデリック・ミシャラクが次々とゴールを決め、グループリーグでの僅差の試合と一変して37-9と言う大差でトゥールーズが準決勝に進出したのである。
 トゥールーズの準決勝の相手もまたイングランド勢のレスターであった。ライオンズと言うニックネームのレスターは2001年、2002年と欧州チャンピオンとなり、3度目の王者を目指す。しかし、敵地で満員の観衆の中で、トゥールーズは最高の試合運びで一度もリードされることなく、27-19で勝利し、2年連続4回目の決勝進出を果たしたのである。(続く)

このページのTOPへ