第535回 ラグビー・フランス代表100周年(1) ラグビーの国際化に貢献したフランス

■100周年を迎えたラグビーのフランス代表

 今日のフランスでフランス代表といえば残念ながら11人のチームではなく15人のチームである。代表チームのレベルではラグビーが長らくサッカーの人気を上回り、近年はクラブチームでもその傾向が見られる。
 2年前の2004年にサッカーのフランス代表は100周年を迎えたが、その年のビッグタイトルである欧州選手権では決勝トーナメント1回戦でギリシャに敗れ、100周年を飾ることができなかった。
 そして今年はラグビーのフランス代表が100周年を迎えた。1906年1月1日、フランスはニュージーランドをパルク・デ・プランスに迎え、最初の国際試合を行っている。

■国際化を目指したフランス・ラグビー

 記念すべき試合は6-38で敗れたが、最初の国際試合の相手が欧州ではなく南半球のチームであったことは当時の英国四協会が新参者のフランスを認めていなかったことの現れであろう。逆にフランスは新興国を認め、伝統国の集団であった旧インターナショナルボード加盟8か国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、豪州、ニュージーランド、南アフリカ)の中で最初に日本との対戦をテストマッチとして公認したという実績がある。現在の日本代表のヘッドコーチはジャン・ピエール・エリサルドであるが、このようなフランス協会の国際化の賜物である。旧英連邦以外の国へのラグビーの普及にも力を入れ、日本だけではなくルーマニア、イタリアとも積極的に交流し、1987年のワールドカップ開催の中心となった。フランス人が他国の代表チームの監督(ヘッドコーチ)を務めているのは日本だけではない。現在のイタリア代表の監督は名SHとして活躍したピエール・ベルビジェである。ラグビーの国際化に最も貢献した国であるといえよう。そのような努力が外交を生命線とするフランスの国民に支持され、サッカーを上回る人気を集めているのである。

■体質改善が見られ、ワールドカップでは常に上位

 逆に常に話題となるのが協会や代表チームの派閥争い、そして選手のほとんどが南西部出身であり、国内のタレント発掘とそのマネジメントが慢性的な課題であった。しかし、ワールドカップ開催を契機として体質改善が見られ、南西部だけではなくフランス全土あるいは旧植民地からも選手を起用するようになった。そのような改革もあり、ワールドカップでは常に欧州勢では上位の成績を残しており、創始者の意地を見せている。また、国内的なラグビーの普及はラグビー人気がフランス全土におよび、現在のパリで最も観客動員力のあるチームはパリサンジェルマンではなくラグビーのスタッド・フランセであることは本連載第445回で紹介したとおりである。
 2007年にはワールドカップがフランスで開催されるが、単独開催となった今回は1998年のサッカーのワールドカップをしのぐ規模のフランススポーツ史上最大のイベントとなることは自明である。ワールドカップイヤーを控えた100周年の今年は6か国対抗で優勝を果たしたいところである。

■夏の南半球遠征は1分2敗、秋の国内ツアーは4連勝

 100周年に向けてフランス代表は例年通り昨年夏には南半球遠征、そして秋には強豪をフランスに迎え撃った。夏の南半球遠征ではフランスは南アフリカと豪州を訪問したが、思わぬ屈辱を味わう。南アフリカとはダーバンでの第1テストこそ30-30と引き分けたが、ポートエリザベスでの第2テストでは1渡来に抑えられ13-27で敗れ、豪州に転戦する。ブリスベーンでの豪州戦は点の取り合いとなったが、31-37と競り負けて、2005-06シーズンを迎えることになった。
 秋のシーズンは11月の土曜日は毎週テストマッチが組まれたが、夏とは対照的な成果となる。まず5日にマルセイユの本拠地ベロドロームに豪州を迎える。サッカーの聖地とも言えるベロドロームでもラグビーのほうが観客動員力があり、超満員の観衆の前でフランスは26-16と雪辱を果たす。マルセイエーにとってもサッカーのオランピック・ド・マルセイユや代表よりもラグビーのフランス代表の方が熱くなることができる存在なのである。
 12日にはナントでカナダを50-6と一蹴する。通常、空席も目立ち黄色くなるボジョワール競技場は、立錐の余地もなく青一色となる。19日はラグビーの都、トゥールーズでのトンガ戦、数多くの名選手を生んだこの街で43-8と大勝する。
 秋の4連戦の最終戦の舞台はもちろんスタッド・ド・フランスである。相手は夏に苦汁を飲まされた南アフリカ、サッカーの代表戦ではすっかりご無沙汰となった満員でのスタジアムでファンの期待に応えた。26-10と雪辱を果たし、フランス代表は記念すべき100年目のシーズンを有終の美で飾ったのである。(続く)

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