第539回 ラグビー・フランス代表100周年(5) イングランドに歴史的勝利、首位に立つ
■ワールドカップ以降、接戦のフランス-イングランド戦
スコットランドがフランスとイングランドに勝利すると言う番狂わせにより、混戦模様となった今年の6か国対抗も残り2節となった。2002年以降4年連続して優勝チームはグランドスラム(全勝)を達成しているが、第3節で早くも全勝チームがなくなった。第4節ではフランス-イングランド、アイルランド-スコットランドと2勝1敗で並ぶ4チームが直接対戦することになった。特に得失点差で首位のイングランドと2位のフランスの対戦は首位攻防戦となる。
イングランドは2003年のワールドカップ準々決勝では本連載第258回でも紹介したとおり、フランスを24-7と破り、その勢いで勝ちあがって北半球勢初の世界王者となっている。ワールドカップでの強さが印象的なイングランドであるが、6か国対抗などその後の成績は11勝11敗と決してよくない。フランスはワールドカップ後18勝1分6敗と大きく勝ち越しているが、イングランドもフランスに対しては意地を見せるようで、ワールドカップ以降の対戦成績は1勝1敗。6か国対抗で顔をあわせているが、2004年は24-21でフランス、2005年は17-16でイングランドといずれもホームチームが僅差で競り勝っている。
■ラグビー人気とどまるところを知らず、新記録の8万観衆
フランス-イングランド戦は3月12日に行われたが、その前日にはウェールズ-イタリア戦とアイルランド-スコットランド戦が行われ、ウェールズとイタリアは引き分け、アイルランドはスコットランドに勝ち、暫定1位に躍り出た。イングランドとフランスに勝ったスコットランドがアイルランドに敗れたその翌日、フランスはイングランドを迎えることになる。
この日スタッド・ド・フランスに集まった観衆の数は実に80,009人となり、これはスタッド・ド・フランスの観客動員の新記録となった。スタッド・ド・フランスでは多くのサッカー、ラグビーのビッグゲームが行われてきたが、観客動員の上位はラグビーの試合が占めており、前の週末の3月4日に行われたスタッド・フランセ-ビアリッツ戦が79,604人と言う新記録を打ち立てたばかりであるが、わずかこの記録は1週間で破られてしまった。フランスにおけるラグビー人気はサッカーのワールドカップイヤーになっても勢いは衰えない。
■黄金のBK陣が活躍、イングランドを寄せ付けず
ベルナール・ラポルト監督はこの大一番で黄金のBK陣を実現する。SHにはこれまで交代出場してきたディミトリ・ヤシビリを起用する。ヤシビリはイングランド戦には滅法強く、2004年の対戦では24点中19点、2005年の対戦では全18得点をあげており、イングランド戦男と言える。SOはイタリア戦で復調の兆しのあるフレデリック・ミシャラク、CTBにはヤシビリのビアリッツのチームメートであるダミアン・トレイユを起用、昨年夏の遠征で代表にデビューしたばかりの若手のフローリアン・フリッツとコンビを組む。WTBはクリストフ・ドミニシとオーレリアン・ルージェリ、FBはトマ・カステニエードの陣容となる。
フランスのフィフティーンは新記録の大観衆の期待に応える活躍を見せた。まず、3分にフリッツが先制トライ、ヤシビリがゴールを決める。6分、11分、32分とヤシビリがPGを決め16-0と差を広げる。前節のスコットランド戦の敗戦でショックを受けたイングランドは元気がなく、前半ロスタイムにPGを決め、後半立ち上がりにもPGを決めたが、これが最後の得点となってしまった。
一方のフランスの動きは止まらない。67分にはトレイユ、79分にはドミニシがトライをあげる。ヤシビリも1PGを成功させ、この日も16得点、イングランド戦男の面目躍如である。最終的に31-6と誰も予想のつかなかったスコアでフランスが勝利を収めた。
■34年ぶりの大量得点差の勝利で首位浮上
この25点差の勝利はフランスとイングランドの長い対戦歴の中でも1972年の37-12と並ぶ最多得点差となるものである。そしてフランスはこの大量得点差の勝利により3勝1敗でアイルランドと並び、得失点差を+58まで伸ばし、+30のアイルランドを大きく離して首位に立ち、カーディフでのウェールズ戦を迎えることになったのである。(続く)