第551回 欧州の頂点目指すフランスのラグビー(1) 前年王者が敗退
■今年は盛り上がらない5月のサッカー
最近の連載はリーグカップとフランスカップの決勝を取り上げ、フランス国内のクラブシーンが久しぶりに盛り上がったことを紹介した。これらの決勝はいずれもスタッド・ド・フランスで行われたが、今季このフランス・サッカーの聖地で予定されているサッカーの試合は5月17日のチャンピオンズリーグ決勝と5月27日のフランス-メキシコ戦である。チャンピオンズリーグ決勝は今回が51回目であり、スタッド・ド・フランスで2回目の開催となるが、今回もフランス勢の姿がない。国内のタイトル争いがワールドカップの開催による日程の前倒しと国内リーグにおけるリヨンの独走によってフランスのサッカーファンにとっては意気の上がらない5月となった。
■5月に盛り上がるフランスのラグビーファン
その一方で盛り上がりを見せているのが、これまでも本連載でしばしば紹介してきたラグビーファンである。代表チームレベルでは来年のワールドカップ自国開催を控え、さらに今季の6か国対抗ではドラマの連続で優勝を飾ったことは本連載第535回から第540回で紹介したとおりである。今回からクラブチームの欧州での活躍ぶりを紹介したい。
■欧州で勢力を誇るフランス勢
ラグビーでも欧州カップが行われているが、サッカーの世界と同様、以前から行われていた欧州レベルでのカップ戦を1996年に再編成し、欧州の頂点を極める欧州カップとして注目を集める存在となった。
第1回大会となる1996年は母国イングランド勢が出場しなかったが、トゥールーズが優勝、続く1997年もブリーブが優勝している。その後も2003年、2005年とトゥールーズが優勝し、フランス勢は4度の優勝を誇っている。そして準優勝は実に6回、1998年ブリーブ、1999年コロミエ、2001年スタッド・フランセ、2003年ペルピニャン、2004年トゥールーズ、2005年スタッド・フランセという具合であり、フランス勢が決勝に姿を現さなかったのは2000年と2002年だけである。2003年ならびに2005年はフランス勢同士で決勝を戦っている。
今年もフランス勢は好調である。グループリーグには7チームが参加、そのうちトゥールーズ、ビアリッツ、ペルピニャンが決勝トーナメントに進出した。8チームで争われる決勝トーナメントであるが、フランス勢3チーム以外はイングランド勢3チーム(レスター、バース、セール)、アイルランド勢2チーム(レンスター、ムンスター)となり、8チーム中5チームが2年連続の決勝進出チームであり、国別の勢力分布は昨年と同じになった。
■フランス勢が連敗スタートとなった準々決勝初日
4月最初の週末に準々決勝が行われた。グループリーグはホームアンドアウエーであるが、決勝トーナメントは1回戦制であり、準々決勝と準決勝はいずれかのホームグラウンドで行われ、今年の決勝はウェールズはカーディフのミレニアム競技場で行われる。準々決勝は4月1日の昼下がりのレスター-バース(レスター)のイングランド勢対決から始まり、夕方にトゥールーズ-レンスター戦(トゥールーズ)、夜にムンスター-ペルピニャン(ダブリン)と時間差を設けて行われ、ラグビー三昧の土曜の午後となった。同日に国内リーグも行われており、国際試合が平日に行われるサッカーとは対照的である。
イングランド勢の争いはノートライの試合ではあったが、バースが銃熱傷に進出した。この日のメインとも言えるトゥールーズの試合は意外な展開となった。点の取り合いとなり、トゥールーズは序盤にリードしただけで、その後はレンスターをPGで追いかける展開となったが、2トライに終わり、4トライのレンスターに及ばず、35-41で敗れた。これまで8回欧州カップ決勝トーナメントに進出したトゥールーズは2回目の準々決勝敗退である。前回優勝のトゥールーズの敗退はショッキングな事件であったが、欧州カップの歴史をさかのぼれば初代王者のトゥールーズに初めて土をつけたのがこのレンスターなのである。
そして夜のムンスター-ペルピニャン戦もフランス勢は苦汁をなめた。ムンスターはこれまでの欧州カップでダブリンでの試合は滅法強く31戦29勝である。ランズダウンロードで行われたこの試合もペルピニャンが前半リードしたものの、後半逆転し、19-10とムンスターが勝利、土曜日に登場したフランス勢2チームはいずれも敗れ、エイプリルフールであると思いたくなるような決勝トーナメントの初日であった。(続く)