第604回 2006年バスケットボール世界選手権(5) トニー・パーカーの穴を埋めたアイメリック・ジャンノー
■決勝トーナメント1回の相手はアンゴラ
フランスはグループリーグ最終戦でベネズエラを退け、グループAで2位となり決勝トーナメントに進出した。決勝トーナメントに進出した16チームを並べるとグループAからはアルゼンチン、フランス、ナイジェリア、セルビア・モンテネグロ、グループBはスペイン、ドイツ、アンゴラ、ニュージーランド、グループCはギリシャ、トルコ、リトアニア、豪州、グループDは米国、イタリア、スロベニア、中国となっている。これまでの大会で開催国は最低でもベスト8に残っており、日本が姿を消したことは大波乱と言えよう。フランスはグループAの2位であるから決勝トーナメント初戦では8強をかけてグループBの3位、すなわちアンゴラと対戦する。アンゴラに勝てばグループCの首位であるギリシャとグループDの4位の中国の勝者と準々決勝で対戦する。
■ドイツと大会史に残る戦いを演じたアンゴラ
さて、アンゴラは今大会の台風の目である。前評判はそれほど高くはなかったが、パナマ、開催国の日本、ニュージーランドと3連勝、欧州の強国相手にも接戦を演じた。スペインに10点差の惜敗、そして圧巻はドイツ戦であった。第4クォーターを終わって69-69の同点、すでに決勝トーナメントを手中にしている両国であったが、大会史に残るドラマはここから始まった。最初の延長戦を終えた段階でも88-88の同点、2度目の延長戦に突入し、アンゴラがリードするがドイツが追いついて93-93となり、大会史上初めての3度目の延長戦、トリプルオーバータイムへと試合はもつれ込む。トリプルオーバータイムではこの試合47点をあげる活躍をしたドイツのエース、ダーク・ノビツキーが活躍し、最終的には108-103という壮絶なスコアの末、ドイツが勝利する。ドイツがグループ2位となり、敗れたアンゴラは3勝2敗でグループ3位となったが、アンゴラの力量は相当のものであると誰しもが思ったに違いない。
■リードしたフランス、あきらめないアンゴラ
そのアンゴラに対しフランスで鍵を握ると思われるのがエースのトニー・パーカーの代役のアイメリック・ジャンノーである。ジャンノーは負傷のためレバノン戦を欠場、そのジャンノーの不在が敗戦の原因となった。フランスは序盤から激しく攻め立て、第1クォーターで一時は10点以上の差をつけ、17-6と好スタートを切る。第2クォーターに入ってアンゴラはメンバーを入れ替え、カルロス・モライスが大活躍し反撃を試みる。前半が終了した段階でフランスのリードは34-24と10点であった。
後半に入り、第3クォーターでフランスは再び得点差を広げる。最後のクォーターを迎える段階でフランスは49-35とリードし、フランスの8強入りは確実と見られた。しかし、この点差でも勝負をあきらめないのが今大会のアンゴラである。第4クォーターは見せ場いっぱいの展開となった。フランスは今大会なかなか決まらなかった3ポイントシュートが決まる。一方のアンゴラは10連続得点でフランスを脅かす。アンゴラとフランスの得点差は1桁になったり、2桁に拡がったりという展開であったが、試合終盤にアンゴラは追い上げ、残り1分で得点差はわずかに60-56と4点差となった。この段階になるとファウルがフリースローになり、フリースローの出来が勝負を左右する。
■残り1分で6本のフリースローを成功させたジャンノー
残り1分のヒーローとなったのはジャンノーであった。ファウルで得たフリースローをジャンノーはことごとく成功させる。アンゴラも3ポイントシュートで差を縮めるが、ジャンノーは最後の1分間のフリースロー6本を全て決めると言う離れ業をやってのける。最終的なスコアは68-62とちょうど最後の1分間にジャンノーが成功させたフリースローが8強をかけた両チームの得点差となった。
NBAのサンアントニオ・スパーズのトニー・パーカーの欠場により、悲観的だったフランスのファンも、代役でリヨン近郊にあるASVALに所属するジャンノーの活躍に歓喜している。NBAのスーパースターが話題の中心になる今大会であるが、フランスのクラブに所属する選手を忘れてはならないのである。(続く)