第618回 2006年女子バスケットボール世界選手権(1) 2005年欧州選手権5位で出場権獲得

■ワールドカップイヤーに開催されるようになった男女の世界選手権

 第600回から第606回の本連載で男子バスケットボールの世界選手権を取り上げたが、日本で開催されたこともあり、非常に大きな反響があった。8月以降は日本国内がバスケットボール一色となっていることを日本の読者の皆様を通じて知った次第である。日本ではバスケットボールが人気ナンバーワンとなっていることから、1月遅れでブラジルで開催された第15回女子バスケットボール世界選手権について取り上げることとしたい。
 女子のバスケットボール世界選手権が産声を上げたのは1953年、男子より3年遅れてスタートしたが、今年行われる大会は男女とも15回目となる。男女とも競技別の世界選手権ということで最近はサッカーのワールドカップと同じ年に開催されているが、ワールドカップイヤーに開催されるようになったのは男子が1970年の第6回大会、女子は1986年の第10回大会からのことである。

■西欧では盛んでない女子の球技

 一般的に言って女子の球技は西欧ではあまり盛んではなく、米国や旧共産圏が主流であったが、バスケットボールも例外ではない。今大会はブラジルで開催されるが、15回を数える世界選手権の歴史の中でフランスでの開催はなく、西欧での開催も1998年の第13回大会がドイツで開催されただけである。フランス女子のこれまでの成績はチリで行われた第1回大会に3位に入っているだけで、その後5回出場しているが、メダルには縁がない。前回の2002年中国大会では8位に終わっている。

■5位までに世界選手権出場資格のある欧州選手権

 フランス女子チームは2004年のアテネオリンピックには出場しなかったが、奇数年に開催される欧州選手権では2003年大会も2005年大会も5位になっている。欧州選手権の順位だけ見れば進歩はないように見えるが、実は2005年大会の5位と言うのは大きな意味がある順位である。12チームしか出場できないオリンピックと異なり、世界選手権は16チームに出場資格がある。トルコで行われた2005年の欧州選手権は世界選手権の欧州予選も兼ねており、5位までに入ればブラジルで開催される翌年の世界選手権への出場権を得ることができる。フランスは準々決勝で準優勝することになるロシアと対戦、自力の違いがあり56-70と敗退してしまい、順位決定戦に世界選手権出場の希望を託す。

■ポーランド、ラトビアに連勝し、5位を確保

 2連勝が必要な順位決定戦ではまずポーランドと対戦する。このポーランド戦、序盤は互角の展開となったが、前半半ばからポーランドにリードを許し、そのリードは広がり、一時は14点差をフランスが追いかける展開となった。フランスも反撃し、前半を終了した段階でのスコアは33-44と9点差まで詰め寄った。後半に入り、フランスのエマニュエル・エルムエが3ポイントシュートを連発する大活躍を見せる。ついに第3クォーターでフランスが逆転し、59-56の3点差で最終クォーターを迎える。フランスは第4クォーターでポーランドにリードを許すことなく、73-71と言う僅差で、5位決定戦に進出したのである。
 その翌日に行われた5位決定戦の相手は開催国のトルコを破ったラトビアである。2003年の欧州選手権では5位の座をかけてベルギーと戦い、フランスが94-75と勝利している。しかし、そのときはオリンピック出場権がかかっていたわけではなく、選手の意識は大きく異なる。ラトビアとの対戦はフランスが序盤から圧倒した。第1クォーターを25-15、第2クォーターを22-12と前半だけで20点のリードを奪う。大量リードをしても油断してはならないということを前月に広島で行われたニュージーランド-日本戦で世界のバスケットボール関係者は肝に銘じたはずである。フランスは第3クォーターでもリードを広げ、最終スコアは85-62と20点以上の差が開いた。この日のヒロインは16点を上げたセリーヌ・デュメルクであり、日替わりのヒロインがブラジルへの道を開いたのである。(続く)

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