第666回 2007年ハンドボール世界選手権(1) 母国ドイツで開催される世界選手権
■昨年から今年にかけて行われる世界選手権・ワールドカップ
男子の団体球技については、昨年から今年にかけて種目別の世界選手権・ワールドカップが行われている。昨年の夏にはサッカーのワールドカップがドイツで行われ、夏のバスケットボールの世界選手権と秋のバレーボールの世界選手権が日本で行われてきた。そしてこの冬にドイツでハンドボールの世界選手権が開催され、夏には日本でアメリカンフットボールのワールドカップ、秋にはフランスでラグビーのワールドカップが行われる。フランスは、昨年から今年にかけての6つの世界選手権・ワールドカップすべての本大会に出場する世界で唯一の国である。その第4幕がこのハンドボールの世界選手権である。
注目すべきはこの6つの世界選手権・ワールドカップのうち日本が3つの大会を開催し、ドイツが2大会を開催し、フランスが1大会を開催することである。このうちアメリカンフットボールとラグビー以外の4競技がオリンピックに採用されており、これらは日本とドイツで開催されるが、この4競技についてみると興味深いことがわかる。
■日本におけるバレーボールとバスケットボールの関係
バレーボールがオリンピック競技に採用されたのは1964年の東京大会のことである。バレーボールがオリンピックに採用された地である日本で昨年秋に久しぶりに世界選手権が行われたが、それに先立って8月にはバスケットボールの世界選手権が日本では行われている。バレーボールの世界選手権は日本国内を2002年のサッカーのワールドカップ同様、興奮の渦に巻き込み、連日テレビで試合が放映されたと聞く。一方のバスケットボールの世界選手権はフランスを含め国際的にはバレーボール以上の注目を集めているが、日本国内での盛り上がりはそれほどでもなかったようである。バレーボールの世界選手権の準備のためのイベントとしてバスケットボールの世界選手権が行われたと考えることもできる。
■母国であり、オリンピック採用の地であるドイツ
それと同じ図式、すなわちサッカーのワールドカップはハンドボールの世界選手権の準備のためのイベントであると考えることもできる。ハンドボールの世界選手権がドイツで開催されることには特別な意味がある。まず、ハンドボールはドイツで生まれた競技であり、ハンドボールの母国で開催される世界選手権ということがある。ハンドボールがオリンピック競技として採用されたのは1936年のベルリン大会である。自国で生まれた競技を時のアドルフ・ヒトラーが採用しないわけがない。しかし、ヒトラーが導入したと言う理由もあって、戦後再開したオリンピックでは長らく競技として行われなかったが、1972年のミュンヘン大会で復活を果たしたのである。ドイツで開催された大会で採用され、はずされたハンドボールが再びドイツ(1972年当時は西ドイツ)で復活して現在に至っているのである。ドイツ国民にとってハンドボールは特別な競技なのである。事実、ドイツのトップレベルのハンドボールリーグであるブンデスリーガはサッカーに遅れること2年、1965年にスタートし、今や世界中から多くのタレントを集めている。ブンデスリーガの会場はみな立派な体育館であり、フランスではなかなかない1万人以上を収容する体育館が多数存在している。
国際的にはバスケットボールとバレーボールの世界選手権同様、サッカーのワールドカップの方がハンドボールの世界選手権よりも注目を集めるはずであるが、地元ドイツでは昨年の日本のように逆転現象が起こり、ハンドボールの世界選手権の方がドイツ国民は熱狂するのである。
■出場権は逃したが、欧州との結びつきの深い日本ハンドボール
6つの世界選手権・ワールドカップのうち、日本が本大会に出場しないのは残念なことにこのハンドボールの世界選手権だけである。だが、他の球技に比べて日本のハンドボールの選手は欧州での活躍が多く、また代表チームの監督の欧州からの招聘も他競技に先駆けて行ってきた歴史があり、日本のスポーツファンでこのドイツでの戦いに注目しているであろう。今回からこのハンドボールの世界選手権について紹介していきたい。(続く)