第668回 2007年ハンドボール世界選手権(3) アイスランドに大量リードを許したフランス

■16人中15人が欧州王者、6人は開催国ドイツのクラブに所属

 男子ハンドボールのフランス代表は昨年行われた欧州選手権で優勝し、今回の世界選手権でも優勝候補と目されている。クロード・オネスタ監督が選んだ16人の選手のうち15人は昨年の欧州選手権の優勝メンバーである。昨年の欧州選手権に負傷のため出場しなかったベテランのセドリック・ブルデを復活させて6年ぶり3回目の優勝を目指す。
 16人のメンバーのうち、国内のクラブに所属しているのは半数の8人、国外組が8人であるがそのうち6人がドイツ、2人がスペインのクラブに所属している。主力6人が開催国のドイツのクラブに所属しており、いわば地元での世界選手権である。

■相手に恵まれた1次リーグ

 この世界選手権には24か国が出場する。4チームずつ6つにわけて1次リーグを戦い、1次リーグで各グループ上位2チームが2次リーグを戦い、8チームに絞って決勝トーナメントを行うことになっている。6年ぶり3回目の優勝を目指すフランスはグループリーグBに入った。ウクライナ、豪州、アイスランドが相手であり、エルベ川沿いの大聖堂で有名なマグデブルクで行われた。フランスが3位になった前回の世界選手権でアイスランドが15位、豪州は最下位の24位、ウクライナは出場できずと言うことで恵まれた組み合わせになった。

■ウクライナと豪州に連勝

 初戦のウクライナ戦は両チームの実力をそのまま反映する結果となった。フランスは開始からウクライナを圧倒し、32-21というスコアで初戦をものにした。そして第2戦はその翌日に豪州との対戦となる。豪州は第1戦でアイスランドと対戦し20-45と大敗している。この試合はさらに一方的なものになった。フランスが立ち上がりから攻撃を続け、開始10分の段階のスコアはフランスが8-0とリードし、豪州は1回もゴールネットを揺らすことなく試合が始まった。前半を終了した段階でフランスは25-5と大きくリード、最終スコアは47-10と言う大差でフランスは2連勝でスタートしたのである。そしてもう1試合はウクライナがアイスランドに32-29で競り勝っている。
 2試合を終了した段階で、首位は連勝のフランス、1勝1敗でアイスランドとウクライナが並び、連敗した豪州が最下位である。最終節は18時からウクライナ-豪州、20時からフランス-アイスランドの2試合が行われた。まず第1試合はウクライナが37-18と言うスコアで豪州を下す。ウクライナはこれで2勝目を上げ、フランスがアイスランドに勝利すれば、2次リーグに進出できる。大会前からダークホース視されていたアイスランドであったが、ウクライナに敗れていることもあり、フランスが圧倒的に優勢であると前評判であり、フランスとウクライナが決勝トーナメントに進むと思っていた。しかし、第2試合は、フランス人もウクライナ人も予想しなかった結果となった。

■アイスランド戦は立ち上がりから連続失点

 アイスランド戦のフランスは何かが違った。試合開始からフランスの守備陣形が定まらず、アイスランドに次々とシュートを決められ、前半7分が終了した時点で0-5とリードを許す。フランスの初得点は8分のことであったが、前半を終えた時点で8-18と10点のリードを奪われ、フランスはピンチを迎える。
 この段階で青くなったのはフランスだけではなくウクライナも同様である。2勝1敗で1次リーグの日程を終了したウクライナは、フランスがアイスランドに勝利すれば、2位となり決勝トーナメントに出場できる。しかし、フランスがアイスランドに敗れれば、フランス、アイスランド、ウクライナが2勝1敗で並ぶ。この場合、当該国間の得失点差で順位が付けられる。すでに1次リーグを終了したウクライナのフランス、アイスランドとの得失点差は-8である。フランスはウクライナに11点差で勝利、アイスランドはウクライナに3点差で敗れており、アイスランドがフランスに20点差以上付けて勝利しなければ、ウクライナは得失点差で2位に入ることはできない。
 ウクライナのファンはフランスの逆転勝ちを期待するように読者の皆様は思われるが、実はそうではなかったのである。それはこの大会特有の大会規定が起因しているのである。(続く)

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