第673回 2007年ハンドボール世界選手権(8) ドイツとの死闘に敗れ、4位に終わる
■決勝トーナメントに入って調子を上げたフランス
フランスはグループリーグでは万全の試合内容ではなかったが、決勝トーナメントの初戦である準々決勝で、優勝候補であり、今大会に入って全勝というクロアチアを破った。昨年夏のサッカーのワールドカップと非常に似た道のりである。3度目の優勝にあと2勝と迫ったフランスにとって、準決勝の相手は開催国のドイツである。昨年のサッカーのワールドカップでは両チームとも準決勝に進出したが、フランスは決勝進出、ドイツは準決勝敗退であり、実現しなかった顔合わせである。両国民の関心は高まり、フランスでも急遽地上波でテレビ中継をすることになった。
■近年のドイツ戦では圧倒的に優勢なフランス
本連載第671回で過去の戦績ではドイツがリードしていると紹介したが、両国の対戦成績は時代によってワンサイドであり、東西統合前の1980年代には東西ドイツはフランスに26連勝したことがある。1990年の東西統合後、新生ドイツとフランスの最初の対戦は1992年7月31日のことである。この時のドイツのメンバーは東西それぞれ8人と言うメンバー構成であったが、フランスが23-20と勝利している。
そして1995年、2001年と2回フランスは世界選手権で優勝しているが、これらの大会ではフランスはドイツと対戦している。1995年のアイスランド大会では2回対戦し、グループリーグではドイツが勝ち、準決勝で再戦し、フランスが勝利している。そして2001年のフランス大会では準々決勝で対戦し、フランスは延長戦の末26-23と勝利している。今世紀になってはフランスが優勢であり、2次リーグでドイツはフランスを下しているが、それまでフランスはドイツに対して2引き分けを挟み7連勝であった。本大会が始まるまでに最後にドイツがフランスが勝ったのは2003年にポルトガルで開催された世界選手権の準決勝のことである。2次リーグのドルトムントでの久々のフランス戦の勝利にドイツ国民は沸き、フランス国民はケルンで行われる準決勝での雪辱を期し、ケルン・アリーナはこの日も超満員の観衆で埋まった。
■25年前のセビリアを思い出させる死闘
これまでも数々の競技で多くの名勝負を歴史に刻んできた両国であるが、この日の戦いは新たなページを加えるに相応しい戦いとなった。前半は超満員の観衆の中で両チーム硬さが目立ったが、12-11とフランスが1点リードする。後半に入ってすぐにドイツは追いつく。ここからはまさに1点を争う展開となった。このあと2点差がついたのはフランスが17-15とリードした47分過ぎの一瞬だけという大接戦となった。そして残り2分で20-20の同点、あと40秒となった時点でフランスはリュック・アバロが得点をあげ、これが決勝点かと思われたが、ドイツが追いつき21-21と言うスコアで延長戦に持ち込んだのである。
延長になっても死闘は続いた。10分間の延長戦も点の取り合いは続き、フランスが終了間際まで27-26とリードしていたが、またもドイツに追いつかれ、27-27となる。そして試合は再延長にもつれ込んだのである。
再延長でも同点の場合はペナルティスローでの決着となる。再延長もシーソーゲームとなり、終了直前にフランスのミカエル・ギグーが決勝点を上げたかと思われたが、スウェーデン人の審判団はフランスのゴールを認めなかった。フランスはこの奇怪なジャッジに泣き、31-32と敗れ、決勝進出を逃したのである。準決勝でドイツとの死闘の末、ジャッジに泣いたのは1982年ワールドカップのスペイン大会を思い出したのは言うまでもない。
■フランスは4位、優勝はドイツ
ドイツに敗れた翌々日の2月4日に3位決定戦と決勝戦が行われた準決勝で力を使い果たしたフランスは25年前のイレブンと同じで3位決定戦でデンマークに27-34で敗れる。ドイツは決勝戦で1次リーグで同じグループだったポーランドと対戦、1次リーグの雪辱を果たし、29-24と勝利し、地元開催での優勝を飾ったのである。ハンドボールの母国が優勝、ドイツはサッカーのワールドカップ以上の盛り上がりとなったのである。(この項、終わり)