第796回 女子ハンドボール世界選手権(3) 3戦全勝で1次リーグを突破
■1次リーグ、2次リーグを経て決勝トーナメントへ
今大会の概要を紹介しよう。出場国は24か国、6チームずつの4グループに分かれ、1次リーグを行い、各リーグの上位2チームが2次リーグに進出する。6チームずつ2つのグループに分かれて2次リーグを戦い、各リーグの上位4チームずつの合計8チームが決勝トーナメントに進出する。
決勝トーナメントについては準々決勝、準決勝、決勝だけではなく、順位決定戦も行われる。一方、1次リーグや2次リーグで敗退したチームも順位決定戦が行われる。順位決定戦は毎回行われているが、今大会においては前回の本連載で紹介したとおり、北京オリンピックの出場に関係があるため、ファンの関心の集まるところである。
■クロアチア、カザフスタン、アルゼンチンと戦う1次リーグ
開催国のフランスは1次リーグはグループAに入る。クロアチア、カザフスタン、アルゼンチンと同じグループである。この中でオリンピックに出場経験があるのはフランスだけであるが、カザフスタンは2度アジアチャンピオンになっており、2007年のアジアチャンピオンであることから、すでに来年のオリンピックの出場権を手にしている。クロアチアは前回の世界選手権では11位であり、1990年代後半には世界選手権で6位、欧州選手権で5位に入ったこともある。グループAの中でやや力が落ちると思われているのがアルゼンチンである。サッカーの世界で言うと北中米・カリブ海と南米を合わせたパンアメリカ地区ではブラジルに次いで2位をキープしているアルゼンチンであるが、世界選手権では20位以下が指定席である。
■圧勝でリベンジしたアルゼンチン戦
フランスにとっては地元開催で2度目の優勝、北京オリンピックへの出場権の獲得が注目すべき点であると前回の本連載で紹介したが、大会序盤のファンの関心は12月2日の第1戦でフランスがアルゼンチンと対戦することである。9月から10月にかけて行われたラグビーのワールドカップでは、フランスが開幕戦と3位決定戦と2度にわたり苦汁を飲まされた相手である。フランスが同じ大会で2度敗れたということはラグビーではもちろん、他の競技でもなかなかないケースであろう。さらにさかのぼれば2月7日のスタッド・ド・フランス、サッカーのフランス代表の国内での史上最多の観客動員数となる79,862人の観衆の前で、フランスはアルゼンチンに0-1と敗れている。このように2007年に3度にわたりフランスがホームで敗れたアルゼンチンと女子ハンドボールの世界でも対戦することになり、ラグビーファン、サッカーファンならずとも、今度こそアルゼンチンに勝利し、これまでの鬱憤を晴らしたいところであろう。
グループAはピレネーのふもと、ポーで行われる。例年、ツール・ド・フランスではピレネーの山岳コースの拠点としておなじみの町であり、男子バスケットボールの強豪チーム、ポー・オルテッズのある都市である。男子バスケットボールの試合では超満員となるスポーツパレスは世界選手権ということで満員の観衆がつめかけた。その大観衆の前でフランス女子代表は素晴らしい試合を見せ、男子が煮え湯を飲まされた水色と白のユニフォームを圧倒した。前半を18-8で大差をつけ、アルゼンチンにほぼ15分間にわたって得点を許さず、最終的なスコアは37-12となった。フランスは差を広げて開幕戦を飾り、サッカーの代表チームが2007年の初戦で敗れ、ラグビーの代表チームがワールドカップの開幕戦で敗れたアルゼンチンに勝利し、フランス中がピレネー山脈のふもとの小さな町の勝利に歓喜したのである。
■カザフスタン、クロアチアに連勝し、3連勝で2次リーグへ
そして翌日に行われた第2戦の相手はアジアチャンピオンのカザフスタン、この試合もフランスは危なげなく30-21で勝利し連勝する。決勝トーナメントや2次リーグは休息日をはさんで試合が行われるが、1次リーグは休息なしで3日間連続で行われる。最初の2試合を終えた段階で連勝したフランスとクロアチアが2次リーグ進出を決定する。両チームは第3戦は主力を温存することも考えられるが、フランス-クロアチア戦は接戦となった。その理由は大会規定による。グループAを勝ち抜いたフランスもクロアチアも2次リーグはグループ1で戦う。2次リーグは6チームからなるが、同じ1次リーグのグループから勝ち抜いたチーム同士の2次リーグでの対戦はないが、1次リーグでの成績が反映される。つまり、フランス-クロアチア戦の勝者は2次リーグでアドバンテージを得ることができる。試合終盤まで一進一退の攻防が続き、結局フランスが試合終了直前に勝ち越し、28-26で貴重な勝利をあげたのである。(続く)