第908回 苦手アルゼンチンと対戦(2) ノートライながらフランスが勝利
■フランスが辛勝した2年前の対戦
21世紀に入ってからアルゼンチンに4連敗と相性の悪いフランスのフィフティーンであるが、久しぶりに勝利を上げたのは2年前の秋、2006年11月25日のことである。この試合の模様は本連載第644回と第645回で紹介したとおりであるが、スタッド・ド・フランスで初めてフランスはアルゼンチンと対戦した。直前のニュージーランドとの連戦で連敗しているフランス、イングランドとイタリアに連勝してフランスに上陸してきたアルゼンチンと対照的な成績であり、試合内容も決してよくなかったが、フランスは1点差でかろうじて逃げ切る。フランスは、同一チームに対して5連敗、秋の南北交流試合での3連敗を免れるのが精一杯だったのである。
■地元開催のワールドカップで連敗
その翌年は地元開催のワールドカップである。1998年のサッカーのワールドカップに続き、ラグビーでも地元開催、初優勝をもくろんだフランスであったが、その結果は本連載の読者の皆様ならばよくご存知の通りである。
第762回と第763回で紹介したとおり、開幕戦でアルゼンチンと対戦しながら敗れてしまう。グループ2位で進出した決勝トーナメント初戦の準々決勝では、ニュージーランドをウェールズのカーディフで破ると言う殊勲を上げたものの、スタッド・ド・フランスでのイングランドとの準決勝では敗れてしまい、地元優勝はならず、3位決定戦に回る。
インターナショナルボード加盟国以外で初めてワールドカップの4強に入ったアルゼンチンが3位決定戦の相手である。フランスはこのパルク・デ・プランスでの試合で雪辱するどころか、開幕戦よりもさらに差をつけられ、10-34と大敗し、スタッド・ド・フランスとパルク・デ・プランスと言う新旧の聖地で連敗した。サッカーのワールドカップでもこれまでなかった同一大会で同じ相手に2敗と言う不名誉な結果を残してしまったのである。
■ワールドカップ後は苦戦する両チーム
そして1年、フランスは6か国対抗で3勝2敗、夏の豪州遠征で2連敗と言う成績で秋のホームゲームを迎えた。一方のアルゼンチンはワールドカップ後初めての国際試合は6月に欧州勢を迎え、スコットランドと1勝1敗、イタリアには敗れている。そして8月には南アフリカに遠征し、南アフリカに9-63と大敗している。両国ともワールドカップ以降の成績は負け越しているが、今春の6か国対抗でのフランスはスコットランドにもイタリアにも勝利しており、フランスの力が上のように見える。しかし、両チームの最近の対戦成績はアルゼンチンが一方的にリードしている。
その初戦はマルセイユでの試合となった。マルセイユのベロドロームとフランス代表の相性はよく、これまでの戦績は7勝1敗であるが、その唯一の黒星は前回の本連載で紹介した2004年秋のアルゼンチンとのテストマッチである。
必勝を期すフランスは先発メンバーの過半数にあたる8人がトゥールーズの選手であり、全員がフランス国内のクラブに所属している。一方のアルゼンチンも8人はフランスのクラブに所属している選手であり、それ以外のメンバーもほとんどは欧州の有力クラブの選手であり、アルゼンチン国内のクラブに所属している選手はわずか1名であり、手の内を知っている同士の対戦である。
■執念に勝るフランスがノートライで勝利
試合はフランスの勝利に対する執念が目立った。開始12分、SOのダビッド・スクレラがDGを決めて先制点を奪う。これに対しアルゼンチンは27分にペナルティを得て、これをフェリペ・コンテポニが決めて同点に追いつく。これまでフランスを苦しめてきたコンテポニのキックは今日も好調である。しかし勝ちにこだわるフランスは30分にPGをスクレラがポールに当てながらも成功させ勝ち越し、そして33分にはキッカーを代えてバビーが45メートルのPGを成功させる。アルゼンチンもすかさずコンテポニがPGを決めて3点差でハーフタイムを迎えた。
後半に入っても得点は動かず、ロスタイム間際にスクレラがPGを決めて6点差となる。その直後にアルゼンチンはペナルティのチャンスを得てトライを狙ったが、ノックオンの反則で万事休す。フランスが苦手アルゼンチンにノートライで勝利したのである。(この項、終わり)