第1189回 2010年デビスカップ決勝 (8) 4時間34分の死闘を制し、フランスが王手

■ジル・シモンを選んだギ・フォルジュ監督

 デビスカップにおいてシングルスは5試合中4試合を占める。また実際には金曜日と日曜日に行われる両方の試合に出場するケースが多く、シングルスプレーヤー1人は5試合中2試合の浮沈を握っている。前回の本連載で紹介した通り、フランスはエースのジョー・ウィルフリード・ツォンガをひざの負傷のため欠く陣容である。シングルスに出場する選手としてランキング12位のガエル・モンフィスは確実であるが、もう1人の人選にギ・フォルジュ監督は頭を悩ませた。デビスカップチームはすでに11月の末にベオグラード入りし、トレーニングに励んでいるが、金曜日の試合の前日、すなわち2日にようやくフォルジュ監督はメンバーを決定した。初日のシングルスはモンフィスとジル・シモンで戦うことになった。
 シモンは世界ランキング42位、今季のデビスカップは勝敗が決まってから日曜日のシングルスに準々決勝と準決勝の2回出場し、いずれも3セットマッチの試合で勝利している。デビスカップでの5セットマッチの試合は世界ランキングで9位まで行ったこともある昨年しか経験がない。1回戦のチェコ戦でシングルス2試合に出場したが、2試合とも敗れフランスの1回戦敗退の原因となる苦い思い出しかない。準決勝以降はメッスのモゼールオープンで優勝した以外は序盤戦での敗退が続き、BNPパリバマスターズも2回戦で敗退し、ベオグラード入りする。

■ガエル・モンフィスはストレート勝ち、シモンはストレート負け

 対するセルビアの大黒柱はノバック・ジョコビッチは世界ランキング3位、そして第2のシングルスプレーヤーもフランス同様揺れたが、結局は世界ランキング49位のヤンコ・ティプサレビッチを起用する。
 12月3日のシングルスの戦いはモンフィスとティプサレビッチの戦いで始まる。ジョコビッチという絶対的なエースのいるセルビア相手に、フランスはこのティプサレビッチ相手に確実に勝利しておきたいところである。過去の対戦成績はティプサレビッチが3勝2敗とリードしているが、今年唯一の対戦は全米オープンの3回戦でモンフィスが勝利している。モンフィスは敵地の大観衆を前に動じることなく、6-1、7-6と2セットを連取し、第3セットは6-0と圧勝する。
 続く、シモンは苦戦を強いられる。秋の北京オープンでも敗れたジョコビッチのサーブに手を焼き、3-6,1-6、5-7とストレートで敗れてしまい、これで5セットマッチのデビスカップは3戦全敗である。

■2セットを連取されたミカエル・ロドラとアルノー・クレマンのペア

 土曜日のダブルスでは、フランスはミカエル・ロドラとアルノー・クレマンという準決勝と同じコンビで挑む。セルビアは直前までメンバーを決めることができなかったが、ネナッド・ジモンイッチをビクトル・トロイキと組ませる。ジモンイッチは34歳のベテランであり、ダブルス専門の選手であり、世界ランキングで1位になったこともあり、現在は3位である。
 15時に始まったダブルスは死闘となった。第1セットはフランスペアがうまく機能せず、セルビアが6-3と先取する。そして第2セットはフランスペアがようやく機能し始め、互角の戦いとなる。6-6のままタイブレークに突入する。このタイブレークにフランスは望みを託したが、3-7と落としてしまい、フランスは2セットを奪われ、剣が峰に立たされた。

■第3セットから3セット連続で奪い、フランス大逆転勝利で王手

 2セットを終了した段階で試合時間はすでに2時間を超え、第3セットに入る。セルビアのトロイキは緊張したのかサーブに精彩を欠き、フランスが相手のサービスゲームをブレークし、ようやく6-4と1セットを奪う。この第3セットで息を吹き返したフランスは続く第4セットを7-5と競り勝ち、ついに試合は最終セットにもつれ込む。この段階ですでに時計の針は18時を回っており、両チームの選手だけではなくコートサイドも疲れが見えるが、フランスペアは冷静であり、6-4と大逆転勝利を収める。
 4時間34分という死闘を制したフランスは王手をかけたのである。(続く)

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