第1208回 2010年男子ハンドボール世界選手権 (1) フランス団体球技史上最強の男子ハンドボール

■日本でも熱狂したハンドボール世界選手権

 1月の日本のサッカーシーンは、元旦に天皇杯の決勝が行われ、年末から年始にかけて高校選手権が行われ、それ以降は国内の試合が空白となる。したがって、例年の場合、1月中旬以降のサッカーファンは大相撲の本場所に注目するわけである。しかし、今年はスウェーデンで行われたハンドボールの世界選手権に日本代表が出場したことから、日本国民全体が熱狂し、深夜のテレビ中継にかじりつき、昨年6月のワールドカップ以来の寝不足に悩まされたことであろう。
 そしてこのハンドボールの世界選手権は日本だけではなく、フランスでも相当の盛り上がりを見せた。本連載で紹介したとおり、1月のフランスのサッカーシーンはフランスリーグ2試合があり、チームによってはフランスカップのベスト32決定戦とベスト16決定戦、さらにリーグカップの準決勝があるだけという国内タイトルだけの1月であり、ファンの関心は他のスポーツに向かうことになる。

■主要タイトル3連覇中のフランス男子ハンドボール

 フランスが団体球技の王国であることは本連載でもしばしば紹介してきたが、ハンドボールはフランス男子が最も得意とするスポーツであると言えるであろう。ハンドボールの世界レベルでのタイトルは4年に1回開催されるオリンピック、2年に1回、奇数年に行われる世界選手権があり、偶数年に開催される欧州選手権がある。サッカーのようにオリンピックの出場に関して年齢制限がないことから毎年、サッカーにおけるワールドカップまたは欧州選手権が開催されていることになる。
 フランス代表は2008年の北京オリンピックで優勝し、2009年の世界選手権クロアチア大会も制覇し、2010年の欧州選手権オーストリア大会でもチャンピオンとなっている。すなわち過去3回の大会ですべて優勝している。3大会連続で世界あるいは欧州のチャンピオンとなった団体球技はフランスでは男子ハンドボールしかない。1998年のワールドカップ優勝、2000年の欧州選手権優勝、さらに2001年のコンフェデレーションズカップを制したサッカーの代表と並んで、現在の男子ハンドボールチームは、フランスの団体球技史上最高のチームであると言われている。

■欧州勢が圧倒的に強い男子ハンドボール

 そのフランス代表チームは国民の期待を背負って22回目を迎える世界選手権に挑む。世界選手権の過去の優勝国を見てみるとすべて欧州の国である。さらに前回の世界選手権は1位から11位までが欧州勢であり、韓国が12位に入ったのが欧州勢以外で最高の成績である。前回大会は24チームが出場したが、そのうち14チームが欧州勢、欧州勢の中で最下位は16位のロシアであった。欧州勢が上位を占め、下位8チームはすべて欧州勢以外であった。このように欧州勢が圧倒的に強いというのはサッカー、ラグビー、バレーボール、バスケットボールという他の団体球技には見られない特徴である。
 その欧州勢の中で最も今世紀に入ってからの成績がいいのがフランスである。今世紀になってから世界選手権は5回開催されたが、優勝2回、3位2回、4位1回と安定した実力を誇っている。

■高まるファンの期待、超満員のベルシートーナメントで優勝

 フランス代表に対する国民の期待は高く、本連載第1200回では1月8日に行われたフランスカップのベスト32決定戦のパリサンジェルマン-ランス戦について紹介したが、この日、パリで最も多くの観衆を集めたスポーツはこのパルク・デ・プランスで行われた1部勢同士のサッカーの試合ではなかった。
 ベルシー総合体育館で行われたハンドボールの親善試合であるベルシートーナメントのフランス-アルゼンチン戦は1万4000人の観衆を集め、1万人しか観客が集まらなかったパルク・デ・プランスよりも多くのファンが集まったのである。そしてその翌日に行われたクリアチア戦は前日を上回る1万4210人の観衆を集めたのである。そして肝心の戦績であるがフランスは、アルゼンチン、クロアチアに連勝し、優勝を果たし、4日後の13日に開幕する世界選手権に向けて好発進したのである。(続く)

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