第1212回 2010年男子ハンドボール世界選手権 (5) 延長戦を制してフランスが優勝
■準決勝の相手は地元スウェーデン
第2ラウンドの3試合、ハンガリー、ノルウェー、アイスランドと欧州勢に対し3連勝し、グループ1の首位となったフランス、いよいよ準決勝である。準決勝の相手はグループ2の2位チームであるが、グループ2は第1ラウンドでグループCの首位となったデンマークとグループDの首位の地元スウェーデンが第2戦を終えた段階で準決勝進出を決める。デンマークとスウェーデンが第3戦で直接対戦する。
第2ラウンドの第3戦は1月25日に行われたが、デンマーク-スウェーデン戦は、グループ1のフランス-アイスランド戦よりも30分試合開始が早く行われ、デンマークは27-24と競り勝ち、デンマークが首位を決めている。デンマークがスウェーデンに勝利した時、フランスの試合は後半が始まったところで、3点差でリードしていた。フランスは、アイスランドに勝てば地元スウェーデン、引き分け以下なら第1ラウンドから8戦全勝のデンマークと準決勝の相手を選ぶことができた。しかしフランスは目の前のアイスランド戦に専念し、勝利してスウェーデンと対戦することになった。
■ハンドボール大国スウェーデンに僅差の勝利
準決勝の舞台はマルモ、第1ラウンドのグループC、第2ラウンドではグループ2の会場であり、決勝戦の舞台でもある。これまでの対戦成績はフランス31勝、スウェーデン13勝、引き分け4と圧倒的にフランス有利であるが、スウェーデンは今回の世界選手権が4回目の開催(フランスは2回)、過去の優勝回数もルーマニアと並んで4回(フランスは3回)といずれも最多のハンドボール王国である。
会場のマルモアリーナは1万3000人の観衆で超満員となった。室内競技におけるホームチームの有利さは12月初めのデビスカップのセルビア戦で思い知らされている。これまでにフランスが開催国と対戦したのは2005年のチュニジア大会(1勝1分)、2007年のドイツ大会(2敗)、2009年のクロアチア大会(1勝1敗)と2000年以降の黄金時代に6戦しているが、2勝1分3敗と成績は芳しくない。しかし、この試合でフランスはアイスランドとの接戦を勝利したことがよき経験となった。2001年フランス大会決勝の雪辱に燃えるスウェーデンに対し、フランスは僅差ながらリードを奪い、前半15-12で折り返す。そして後半も僅差ながらリードを許すことなく、29-26の3点差で勝利する。
エースのニコラ・カラバティックが徹底マークされ、この日はわずか3得点だったが、代わって活躍したのがベルトラン・ジルとミカエル・ギグーがそれぞれ8得点をあげ、日替わりヒーローが決勝へとチームを誘ったのである。
■後半終了直前にデンマークが追いつき、延長戦へ
フランスはもう1つの準決勝でスペインを破ったデンマークと1月30日に優勝を争うことになった。初優勝を狙うデンマークはこれまで3位が1回、しかしながら、今大会唯一の全勝チームであり、フランスとの過去の対戦成績も18勝3分16敗とリードしている。試合はタフなものになった。常に僅差ながらフランスがリードという展開で前半を終え、15-12と準決勝と同じスコアで後半を迎える。フランスが僅差のリードを追い付かれたのが残り10分となった後半の50分、25-25となる。59分にフランスは追いつかれるが、残り27秒となったところで31-30と勝ち越す。しかし、終了数秒前にデンマークが追いつき、試合は5分ハーフの延長戦へもつれ込んだのである。
■延長戦で初めてリードを許すが、逆転勝ちしたフランスが優勝
そして延長前半終了間際の64分、フランスは32-33とこの試合初めてデンマークにリードを許す。ところが1分間にフランスが2点あげて34-33と逆転して延長後半を迎えた。延長後半開始早々にデンマークは34-34と追いつく。しかしバイキングの力はここまで、フランスは2点を入れ、延長に入って初めて2点差をつける。デンマークも残り1分となった段階で1点を返すが、この大会最後の得点はフランスのエース、カラバティックであった。フランスが37-35と熱戦を制し、優勝を飾ったのである。(続く)