第1236回 フランス勢の独壇場のラグビー (1) フランス勢が圧倒するハイネケンカップ
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■フランスのサッカーファンを落胆させた今季の欧州カップ
チャンピオンズリーグでもヨーロッパリーグでもフランス勢はベスト8に残ることができず、フランスのサッカーファンにとっては寂しいシーズン終盤となった。しかし、フランスのサッカーのレベルが落ちたわけではない。チャンピオンズリーグでは多くのフランス人選手が活躍し、今年もまた決勝のピッチにはフランス人選手がいるであろう。そしてフランス代表も昨年のワールドカップ時のどん底状態から脱し、欧州選手権予選ではグループ首位をキープしている。すなわち、フランス代表もフランス人選手もそれなりの成果を残しているのだが、フランスのクラブだけが思ったような成果を残すことができないという構図である。
この傾向は今に始まったことではないが、昨季はチャンピオンズリーグでリヨンとボルドーが準々決勝で争い、リヨンがクラブ史上最高のベスト4に入り、今季は1993年にドイツのミュンヘンの決勝でACミラン(イタリア)を破ったマルセイユがリーグチャンピオンとして出場することから期待が高まったため、その反動としてのファンの落胆は小さくなかった。
■欧州ラグビーの頂点を争うハイネケンカップ
このようなサッカーファンの落胆を横目に、今季もラグビーではフランス勢が好調である。今年はワールドカップイヤーということで、日本でもラグビーの試合で国立競技場が満員になるなど、フランスに限らずラグビーに対する注目度は高い。
欧州のラグビーにおいてサッカーのチャンピオンズリーグに相当するのがハイネケンカップである。フランス国内ではアルコールの付いた冠大会が認められないため、欧州カップと呼ばれている。ただし日本のキリンカップだけは別格であり、キリンカップとそのまま呼ばれている。そしてサッカーのヨーロッパリーグに相当するのがチャレンジカップである。
■フランス勢は優勝6回、フランス勢同士の決勝は3回
ハイネケンカップは6か国対抗に出場する国から24チームが参加するが、その内訳はイングランドとフランスから6チームずつ、アイルランドとウェールズから3チームずつ、スコットランドとイタリアから2チームずつ、さらに前年のハイネケンカップとチャレンジカップの優勝チームが加わる。昨年のこの大会は優勝がトゥールーズ、準優勝がビアリッツとフランス勢同士で決勝戦が争われた。ハイネケンカップは1995-96シーズンから始まり、昨季まで15季争われたが、国(地域)ごとの優勝回数はイングランド6回、フランス5回、アイルランド4回という内訳であるが、フランス勢同士の決勝が3回もある。同一国勢同士の決勝戦はこのフランス勢の3回だけである。フランスは優勝5回に対し、準優勝9回とややシルバーメダルコレクター気味であるが、決勝進出がのべ14チームというのはイングランドの9回、アイルランドの6回を大きく上回る。なお、この3か国以外のチームで決勝に進出したことのあるチームは第1回大会でトゥールーズに敗れたウェールズのカーディフだけである。
もちろん50以上の国のクラブが参加するサッカーのチャンピオンズリーグと単純に比較することはできないが、フランスのクラブが欧州を席巻しているということは注目すべき事実である。
■フランスから7チームが出場した今季のハイネケンカップ
今季のハイネケンカップにはフランスから7チームが出場した。上記の規定に準ずればフランスのリーグ戦で上位に入った6チーム(ペルピニャン、トゥーロン、クレルモン、トゥールーズ、カストル、ラシンメトロ)プラス昨季の優勝チームのビアリッツという合計7チームであるが、トゥールーズは昨季のリーグ戦で4位に入り、ハイネケンカップの出場権がすでにあり、7位の繰り上がり出場チームがたまたまビアリッツであったため、フランスからは7チームが出場したのである。なお、チャレンジカップはウェールズのカーディフが優勝したため、スカーレッツが繰り上げて出場することになったのである。(続く)