第1300回 ラグビーワールドカップ、カナダ戦(1) 伝統国には十分に与えられた試合間のインターバル
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ラグビーにおいて重要な意味を持つ試合日程
ラグビーワールドカップが開幕し、前回大会の開幕戦でアルゼンチンに黒星をつけられてフランスは、ベストメンバーを組んで日本に勝利して第1戦を乗り切った。
このラグビーワールドカップの特徴として4年前の本連載でも取り上げたが、すべてにおいて「伝統国重視」ということがある。ラグビーはその競技の性格上、15人で試合を行うことはなく、交代選手7人をフルに使うスポーツである。また、疲労の蓄積に関してもサッカーの比ではなく、週末にリーグ戦、平日に欧州カップ戦をこなすというサッカーのようなスケジュールは不可能である。試合と試合のインターバルを十分に取る必要があることから、ラグビーワールドカップの大会期間はサッカーのそれよりも多いのである。
このような競技の特性上、試合と試合のインターバルの長さが選手やチームのパフォーマンスの重要なファクターとなる。予選プールは9月9日に始まり、10月2日に終わるが、試合と試合のインターバルという点で最も恵まれているのが開催国のニュージーランドである。開幕の9月9日と予選プール最終日の10月2日に試合をするのは、出場24チームの中でニュージーランドだけである。
■参加国によって大きく異なる試合と試合のインターバル
いわゆる伝統国の試合日程をみると興味深いことがわかる。それは各予選プールの初日と最終日、あるいはそれらにきわめて近い日に登場するということである。そして逆に新興国は開幕して数日たってから初登場し、逆に最終戦となる第4戦は9月中に終わってしまう。プールAでは先述のニュージーランドに加え、フランスは開幕2日目の9月10日に登場し、第4戦は10月1日に行われる。一方、カナダはニュージーランドに遅れること5日、9月14日に第1戦を行い、最終戦は最終日にニュージーランドと戦う。日本も第1戦こそ大会2日目の9月10日であるが、最終戦は9月27日、予選プールを戦っている期間はニュージーランドの23日間に比べて短く、カナダと同じ18日間である。23日間に4試合行うチームと18日間に4試合行うチームとでは大きな条件の差がある。
プールBではイングランド、スコットランド、アルゼンチンが23日で4試合戦うのに対し、ルーマニアは19日間、グルジアは18日で4試合戦う。プールCもアイルランド、イタリアが22日間、豪州が21日間の予選プール期間であるのに対し、米国とロシアは17日間の短い戦いとなる。グループDの予選プール期間も、フィジーが23日間、ウェールズが22日間、南アフリカが22日間、サモアとナミビアは17日間というように、強国ほど試合と試合の間のインターバルが長くなる。
■伝統国がベストメンバーで戦うことを優先
つまり、ただでさえ戦力の劣る伝統国以外は試合と試合のインターバルの短さも重なり、主力メンバーを落とさなくてはなくなる。逆に伝統国は試合と試合のインターバルが十分にあいていることから常にベストメンバーで戦うことができる。ファンとしては新興国や弱小国が常にベストメンバーで戦うことよりも伝統国が常にベストメンバーで戦うことを望んでおり、その結果として伝統国や強豪国では、人気を博しているのであろう。
■試合日程に恵まれたフランス、恵まれなかったカナダ
フランスもこの恩恵にあずかっており、初戦の10日の日本戦の次のカナダ戦は18日と十分に間が空いている。そしてカナダ戦の次は6日後の24日にニュージーランド戦が2控えている。そしてニュージーランド戦の後は予選プール最終戦のトンガ戦が1週間後の10月1日に行われる。
カナダは4日前の14日にトンガと戦ったばかりである。カナダは疲労がたまっているが、このフランス戦を乗り切れば、次の日本戦は27日であり、十分に休養をとることができる。そして最終戦のニュージーランド戦は日本戦の5日後の10月2日である。
このようにフランスとカナダの日程を見れば、フランスがほぼ1週間に1試合のペースで試合を行うのに対し、カナダは5日後に試合を行うことが2回もあり、明らかに全体の日程的にはフランスが有利である。
このようなフランスとカナダの日程面の条件の違いがこの1戦の両国の先発メンバーにどのような影響を与えたのか。予想とは大きく異なる30人が先発したのである。(続く)