第1301回 ラグビーワールドカップ、カナダ戦(2) 大幅なメンバー変更、試合終了直前にようやく突き放す
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■強豪国との対戦がないカナダ
前回の本連載で、ラグビーワールドカップにおいてフランスを含む伝統国は試合と試合の間のインターバルが十分に与えられていることを紹介した。フランスが第2戦で戦うカナダはその逆に試合と試合のインターバルが十分に与えられていない。カナダの第1戦はフランスに遅れること4日、14日にトンガと対戦し、中3日で18日にフランス戦を迎えることになった。
フランスは日本戦から中7日という恵まれたコンディションでカナダ戦を迎える。カナダ戦の後は大一番のニュージーランド戦が控えており、カナダとの力量差からメンバーを落としてくることも予想される。フランスはカナダとこれまで7回対戦し、フランスの6勝1敗、唯一の敗戦は1994年のことである。カナダは今回を含めて7度のワールドカップすべてに出場しているが、予選プールを突破したのは1991年の第2回大会だけである。その後は世界の舞台で活躍していない。カナダの大会前の10試合の戦績は8勝2敗と、数字の上では評価できるが、8勝のうち、今夏のワールドカップに出場している国との対戦は米国戦の2勝のみ、2敗は日本戦とグルジア戦である。カナダのレベルのクラスになると、いわゆる強豪国との試合を組むことができない。すなわちワールドカップは貴重な強豪国と対戦するチャンスなのである。
■トンガ戦と同じメンバーで戦うカナダ
そしてカナダは、劣勢と見られていた第1戦のトンガ戦を25-20と制し、ワールドカップでは2大会ぶりの勝利を収めた。このクラスのチームにとっては決勝トーナメントに進出することも目標であるが、予選プールで3位になれば、次回大会予選免除、そして上位国と試合をすることができる。このように考えるとフランス戦やニュージーランド戦で無理せずとも、残る日本戦で勝利して3位以内に入るという目標を立ててもおかしくない。しかし、カナダはフランスの第1戦の日本戦の戦いぶりを見て、なんと4日前のトンガ戦とまったく同じメンバーを先発させたのである。
■日本戦から11人を入れ替えたフランス
一方のフランスは日本戦からメンバーを大幅に入れ替えた。先発メンバー15人中11人は日本戦に出場しなかったメンバーとなった。フランスの先発マンバーを紹介すると、FW第1列はジャン・バプティスト・プー、ウィリアム・セルバ、リュック・デュカルロン、第2列のロックはパスカル・パぺとロマン・ミロ・シュルスキ、第3列はフランカーがフルジャンス・ウドラオゴとジュリアン・ボネール、ナンバー8がルイ・ピカモール、ハーフ団はスクラムハーフがモルガン・パラ、スタンドオフがフランソワ・トラン・デュック、センターはマキシム・メルモスとダビッド・マルティ、ウイングはオーレリアン・ルージェリとバンサン・クレルク、フルバックはダミアン・トレイユという布陣である。
この中で日本戦に出場したのはフッカーのセルバ、スタンドオフのトラン・デュック、両ウイングのルージェリ(日本戦はセンターとして出場)とクレルクだけである。この大幅なメンバー変更の理由は2つある。まず大一番のニュージーランド戦に向けて主力選手に休養を取らせるためである。先述のとおりカナダは昨秋日本に連敗しており、日本よりも力が劣る相手であるということがあげられる。そしてもう1つは日本戦では試合の中盤に主導権を握られ、4点差に追い上げられたこともあり、選手を入れ替えた。
■試合終盤まで僅差の展開、バンサン・クレルクが3トライ
カナダとの一戦はフランスは2分に先制のPGを許し、4分にクレルクのトライで逆転(ゴールも成功)しながら8分に逆転のトライを喫し、ゴールも成功してリードされ、日本戦とは逆に苦しい立ち上がりとなった。フランスはPGを重ねて、ようやく逆転し、前半は19-10と折り返した。
後半もPGを両チームが決め続けて、フランスは差を広げることができず、25-19の64分にトレイユがトライをあげ、試合終了直前の79分と80分にクレルクが連続トライ、最終スコアは46-19と面目を保ったものの、試合終盤まで相手を突き放すことができなかったのである。(この項、終わり)