第1306回 トンガにまさかの敗戦、ロスタイムのトライで決勝トーナメントへ
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■決勝トーナメントを争うフランスとトンガ
ニュージーランドとの一戦に17-37と敗れたフランス、日本戦、カナダ戦と格下相手にも最終的なスコアは開いたものの、苦戦し、ニュージーランド戦でもやはり本来の力とは程遠いパフォーマンスであった。ニュージーランド戦の敗戦で予選プール首位は遠のき、ファンは厳しい目を向けた。
しかし、予選プールはまだ終わっていない。予選プール最終戦は10月1日、ちょうどニュージーランド戦の1週間後にウェリントンでトンガと戦う。トンガは第1戦はニュージーランドに10-41、第2戦はカナダに20-25と連敗してスタート。ようやく第3戦で日本に31-18と勝利しているが、ボーナスポイントはカナダ戦の7点差以内の敗戦だけで、3試合を終えて勝ち点は5。一方のフランスは勝利した日本戦とカナダ戦はいずれも4トライ以上あげてボーナスポイントを獲得しており、勝ち点10である。2位と4位が勝ち点5差で直接対決するわけであるが、トンガがフランスを上回るには4トライ以上奪って勝利することが必要になる。また、3位のカナダは勝ち点6であるが、ニュージーランド戦であるため、フランスがトンガに敗れた場合でもカナダが逆転する可能性は少ないであろう。
■ニュージーランド戦とほぼ同じメンバーで臨む予選プール最終戦
フランスはニュージーランド戦に先発した15人のうち12人をトンガ戦に出場させる。ニュージーランド戦と入れ替わったのはフッカーをディミトリ・サルゼウスキーからウィリアム・セルバに代え、ナンバー8をルイ・ピカモールからラファエル・ラカフィアに変更、ハーフ団は入れ替えず、フルバックのダミアン・トレイユを下げて、ウイングにアレクシス・パリソンを入れ、フルバックにマキシム・メダールを起用する。ニュージーランド戦でのパフォーマンスの悪い選手を入れ替え、決してメンバーを落とすことなく、トンガ戦に確実に勝利して、決勝トーナメントを見据えた布陣となった。予選プールと異なり、決勝トーナメントは週末にしか行われず、十分なインターバルを取って臨むことができる。
■過去の対戦成績はフランスの2勝1敗
一方のトンガは先発15人のうち9人がフランスのクラブでプレーした経験を持つ。主将のフランカーであるフィナウ・マカはトゥーロンで大活躍している。 トンガとは過去3回対戦し、最初の対戦は1995年のワールドカップの予選プール、フランスは38-10と完勝している。しかし、2回目の対戦は1999年6月のフランスの南半球遠征、ニュージーランドとの対戦を前にフランスはサモア、トンガに立ち寄る。春先の5か国対抗から調子のでないフランスはサモアには勝利したものの、トンガに16-20と敗戦、ニュージーランドには7-54と歴史的大敗を喫する。そして最新の対戦は2005年秋のトンガの欧州遠征である。トゥールーズでの戦いはフランスが43-8と大勝する。
■トンガにリードを許し、予選プール2敗目
今回もトンガにはかすかな望みしか残っていないため、ファンは楽観していた。そのとおり、3分にはディミトリ・ヤシビリが先制のペナルティゴールを決める。トンガは7分にペナルティゴールで追いつくが、24分にフランスはペナルティゴールで勝ち越す。トンガの強力スクラムにフランスはよく対応する。しかし、27分、トンガはフランスに対し、波状攻撃を仕掛け、26分にスカ・フファンガがこの試合最初のトライをあげ、ゴールも決まり、10-6と逆転する。ここからフランスは全くいいところがなかった。トンガはペナルティゴールを決めて、13-6でハーフタイム。
後半に入りフランスは50分にペナルティゴールをあげて追い上げようとする中、65分位はオーレリアン・ルージェリと交代して入ったばかりのファブリス・エストバネが危険なプレーでシンビン、このプレーでトンガはペナルティゴールをあげて19-9と10点差となる。
フランスはロスタイムにようやくバンサン・クレールがトライをあげて14-19とするが、ここでノーサイドの笛。フランスはまさかの2敗目を喫する。クレールのトライにより、フランスは7点差以内の敗戦となったため、勝ち点1を獲得する。フランスは追うカナダと勝ち点の差が5となって決勝トーナメントを確定したが、予選プールはあまりにも厳しいレッスンとなったのである。(この項、終わり)