第1311回 3回目の決勝進出(1) ワールドカップでは過去3戦全敗のイングランド戦
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ワールドカップ時代の北半球の両雄が対決
予選プールで日本、カナダに連勝した後、ニュージーランドに惨敗、さらに格下のトンガにまで敗れ、2勝2敗と言う成績でトンガと並び、かろうじてボーナスポイントの差で決勝トーナメントに進出したフランス、過去6回の大会で予選プールで黒星を喫したのは前回大会のアルゼンチン戦だけであるということを考えると、思いもしない苦戦であった。
予選プールDで2位となったフランスの決勝トーナメントの初戦の相手はグループのイングランドである。フランスとイングランドの戦いはクランチと呼ばれ名勝負を繰り広げてきた。歴史的にはイングランドに分があるが、ワールドカップが始まってから北半球勢を代表する勢力はこの2か国であると断言してもかまわないであろう。過去10戦の両国の対戦は5勝5敗と五分である。
■ワールドカップでイングランドに勝てないフランス
しかし、このワールドカップに関してはフランスはイングランドに相性が悪く、第2回大会は準々決勝で対戦し、地元パルク・デ・プランスで10-19と敗れている。そして2003年大会はシドニーでの準決勝で7-24と敗れ、さらに記憶に新しいのは前回大会、スタッド・ド・フランスで行われた準決勝で対戦し、9-14と敗れ、3戦して3敗している。特に2007年大会は、ウェールズのカーディフで行われた準々決勝でニュージーランドを破った直後に、フランス国内に戻っての対戦であり、期待も大きかったことから大きなショックをフランス国民に与えた。
3度あることは4度あるのか、それとも4度目の正直か、フランスのファンは後者に期待したいところであるが、予選プールでの戦いを振り返ってみれば、明るい材料は少ない。そしてイングランドは前回大会の王者であり、南半球の3か国と並んで世界王者になったことのある国である。フランスは過去1年半、ワールドカップ優勝国と対戦し、1度も勝利していない。そればかりか、アルゼンチン、イタリア、トンガと言った格下の国にも負けているのである。
■イングランドとの「クランチ」に挑むフランスの先発メンバー
イングランドとの伝統の一戦に挑むフィフティーンであるが、FW第1列はジャン・バプティスト・プー、ウィリアム・セルバ、ニコラ・マス、第2列のロックはリオネル・ナレとパスカル・パペ、第3列はフランカーが主将のティエリー・デュソートワールとジュリアン・ボネール、ナンバー8がイマノル・アリノルドキ、ハーフ団はスクラムハーフがディミトリ・ヤシビリ、スタンドオフがモルガン・パラ、センターはマキシム・メルモスとオーレリアン・ルージェリ、ウイングはアレクシス・パリソンとバンサン・クレルク、フルバックはマキシム・メダールという布陣である。
■トンガ戦と1人入れ替わっただけの先発メンバー
この布陣をトンガ戦と比較すると、入れ替わったのはナンバー8のみである。もっともこのポジションはルイ・ピカモール、ラファエル・ラカフィアとアリノルドキの3人が登録されているが、全員が先発出場を果たしており、メンバーが固定していない唯一のポジションであるが、このイングランド戦には31歳と3人の中で最年長のピカモールを起用してきた。ピカモールは代表74キャップであり、この試合の先発メンバーのうち最多のキャップ数を誇る。
そしてフランスのメンバーは全員がフランスのクラブに所属している。最多の勢力はトゥールーズの5人(プー、セルバ、デュソートワール、クレルク、メダール)、それを追うのがクレルモンの3人(ボネール、パラ、ルージェリ)、ペルピニャンの2人(マス、メルモス)、ビアリッツの2人(アリノルドキ、ヤシビリ)、それ以外は1人で、スタッド・フランセ(パペ)、ラシン・メトロ(ナレ)と言うパリ勢のロック陣とトゥーロン(パリソン)である。
フランスはワールドカップ中もリーグ戦が行われており、現在トゥールーズが首位を走っている。この15人が歴史の新しいページを開くことができるのだろうか。(続く)