第1312回 3回目の決勝進出(2) イングランドと4回目の対戦でようやく勝利
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■フランスの前に立ちはだかるイングランド
大苦戦の末、勝ち抜いてきた決勝トーナメントの準決勝、フランスの相手はこれまで6回のワールドカップの決勝トーナメントで3戦して3敗しているイングランドである。イングランドには1999年大会の3位決定戦で勝利したことがあるだけである。フランスはこれまで6回のワールドカップで9回しか負けていないが、そのうちの2回は3位決定戦、1回が予選プールであり、ノックアウト方式の決勝トーナメントでの6回の負けのうち半数の3回がイングランド戦であり、フランスの栄光への道をふさいできた。
■ファンの関心の中心はサッカーよりもラグビー
今年の6か国対抗でもフランスは9-17と敗れており、予選プールを4戦全勝で勝ち上がったイングランドが有利との予想は妥当であろう。フランスとイングランドの準々決勝は現地時間で8日の20時30分、そしてフランス時間で同日の9時30分、パリでは土曜日の朝にキックオフを迎える。前日には本連載第1307回から第1309回にかけて紹介したサッカーの欧州選手権予選のアルバニア戦がスタッド・ド・フランスで行われ、フランスが快勝したが、この週末のフランスのスポーツファンの関心の中心はこのラグビーのイングランド戦であった。サッカーのフランス代表は昨年の南アフリカでのワールドカップでは惨敗を喫したが、すっかり立ち直った。一方のラグビーのフランス代表は世界ランキングこそ5位であるが、6か国対抗ではイタリアに敗れ、今回のワールドカップではニュージーランドとトンガに敗れており、成績と言う点でサッカーに及ばないラグビーの人気は根強い。前日のアルバニア戦では通常通り営業していたパリのカフェであるが、多くのカフェは一夜明けた土曜の朝は「予約客限定」となっていた。
■フランスのクラブに所属する2人のイングランド選手
準々決勝の第1試合でウェールズがアイルランドを下した後に行われた伝統の一戦、フランスのメンバーは前回の本連載で紹介したとおりであるが、全員がフランス国内のクラブに所属する。対するイングランドはスタンドオフのジョニー・ウィルキンソン(トゥーロン)とロックのトム・パーマー(スタッド・ド・フランセ)の2人がフランスのクラブの所属している以外はイングランドのクラブに所属している。2003年大会優勝のヒーローとなったウィルキンソンであるが、今大会はプレースキックの成功率が低く、ここまで20本蹴って9本しか決まっていない。一方のフランスのキッカー、ディミトリ・ヤシビリは16本蹴って13本成功と成功率は8割を超える。
■生まれ変わったフランス、イングランドを圧倒
しかし、戦前の予想とは異なり、フランスがヤシビリのキックに頼ることなく勝負を決めてしまった。キックオフからフランスはこれまでの試合とは見違えるような動きを見せ、イングランドを圧倒する。密集でのブレイクダウンではやや劣勢だったものの、フランスは2本のペナルティゴールをヤシビリが決めて6-0とリードする。そしてこの試合初めてのトライはフランス、21分には即席スタンドオフのモルガン・パラが起点となってサインプレーを決め、最後は本大会のトライゲッターとなったバンサン・クレルクがイングランドの守備陣をすり抜けてトライを決める。されに32分にもフランスはバックスが左右にボールを散らしてフルバックのマキシム・メダールがトライを決めて、16-0と大きくリードする。
フランスの一方的なリードの前にイングランドは全く精彩を欠いたままハーフタイムを迎える。後半に入ってイングランドはようやく攻撃の形を作る。55分にフルバックのベン・フォーデンがトライを決め、ようやくウィルキンソンの出番となり、ゴール成功、7-16と追い上げる。後半に入ってから、フランソワ・トラン・デュックをスタンドオフに入れ、パラを本来のスクラムハーフに戻したフランスは、73分にトラン・デュックがドロップゴールを決めて、イングランドの反撃の意欲をくじく。イングランドは77分にトライをあげたが、ウィルキンソンのゴールは失敗、12-19という7点差で残り3分、トライをあげてゴールを決めれば、という展開であったが、セットプレーで優位に立つフランスは盤石の守り、ついにフランスはイングランドに勝利したのである。(続く)