第1317回 輝くシルバーメダルコレクター(3) 決勝に臨む両国の先発フィフティーン
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■決勝トーナメントは3戦連続同じ先発メンバーのフランス
10月23日の決勝、フランスは決勝トーナメントに入ってから不動のメンバーで決戦に臨む。第1列はジャン・バプティスト・プー、ウィリアム・セルバ、ニコラ・マス、第2列のロックはリオネル・ナレとパスカル・パペ、第3列はフランカーがティエリー・デュソトワールとジュリアン・ボネール、ナンバー8がイマノル・アリノルドキ、ハーフ団はスクラムハーフがディミトリ・ヤシビリ、スタンドオフがモルガン・パラ、センターはマキシム・メルモスとオーレリアン・ルージェリ、ウイングはアレクシス・パリソンとバンサン・クレルク、フルバックはマキシム・メダールという陣容であり、ウェールズ戦、イングランド戦に続き3試合先発メンバーが全く同じである。3試合先発メンバーが同じであるということは極めて珍しいことであり、戦術が固まってきたことに加え、決勝トーナメントと言う激しい戦いの中で負傷者がいなかったことがあげられる。開幕戦の日本戦と比較すると、4人のメンバーが入れ替わり、アリノルドキはフランカーで出場しており、3分の1が変わったことになる。
■開幕戦のトンガ戦とは半数以上が変わったニュージーランド
一方のニュージーランド、第一列はトニー・ウッドコック、ケビン・メアラム、オーウェン・フランクス、第2列のロックはブラッド・ソーンとサミュエル・ホワイトロック、第3列はフランカーがジェローム・カイノと主将のリッチー・マコウ、ナンバー8はキアラン・リード、ハーフ団はスクラムハーフはピリ・ウィップー、スタンドオフはアーロン・クルーデン、バックス陣はセンターがマア・ノヌーとコンラッド・スミス、ウイングはリチャード・カフイとコリー・ジェーン、フルバックはイズラエル・ダグである。ニュージーランドの先発陣は開幕戦のトンガ戦と比較するとなんと7人が変わり、さらにカフイは左ウイングで出場しており、過半数のメンバーが変更していることになる。
■予選プールでの対戦と大幅にメンバーを変えたフランス、微動のニュージーランド
そして興味深いのは両チームの予選プールでの戦いの際のメンバーとの比較である。
フランスは15人中11人が9月24日の予選プールでの戦いに出場している。しかし、さらに11人のうちの2人は別のポジションで出場しており、同じポジションで先発したメンバーは9人である。
一方のニュージーランド、15人中13人が同じメンバーであり、同じポジションである。予選プールに先発し、決勝戦に先発しないのはナンバー8のアダム・トムソンとスタンドオフのダニエル・カーターであるが、トムソンはフランス戦で負傷し、カーターはカナダ戦で負傷し、戦線から離脱している。ニュージーランドはスタンドオフのリザーブとしてコリン・スレードがおり、日本戦にも出場していたが、そのスレードも準々決勝のアルゼンチン戦で負傷してしまう。2人のスタンドオフを失ったニュージーランドはステファン・ドナルドとクルーデンを大会期間中に招集したのである。
フランスも予選プールの初戦の日本戦でスタンドオフのダビッド・スクレラを負傷で失っている。フランスの場合、スクレラを負傷で失ったことから代表経験のないジャン・マルク・デュサンをフランスから呼び寄せたが、スクラムハーフの控え選手のパラをスタンドオフで起用し、これが大当たりとなる。
■上り調子のフランス、主要ポジションの選手を失ったニュージーランド
すなわち、9月24日の予選プールにおいて、フランスはエンジンが暖まらない段階の思考錯誤のメンバーで戦い、一方のニュージーランドはフランス戦を重要な試合ととらえ、ベストメンバーで戦ったといえるであろう。そしてそのベストメンバーからナンバー8、スタンドオフと言う要のポジションを負傷で失って決勝に臨むのがニュージーランドである。したがって、37-17という20点差は両国の地力の差以上に点差が開いたものである。さらにニュージーランドが主要ポジションの選手を失ったことから、両国の差はさらに縮まっていると言えるであろう。(続く)