第1348回 室内球技の華、ハンドボール(2) 1勝2敗ながら第2ラウンド進出
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■セルビアで開催される欧州選手権
前回の本連載では数ある室内球技のうち、フランスではハンドボールに人気が高く、それはオリンピック、世界選手権、欧州選手権という主要国際大会で4大会連続で優勝しているという実績からきていることを紹介した。オリンピックイヤーの今年は1月中旬からセルビアで欧州選手権が開かれる。
この欧州選手権の出場チームは開催国のセルビア、前回優勝のフランスに加え予選を勝ち抜いた14チームの合計16チームが参加する。4チームずつ4つのグループに分けてグループリーグを戦った。
■過去3戦連続引き分けのスペインに敗れるスタート
フランスはグループ分けの時点で第1シードになり、フランスの所属するグループCは、セルビアで首都ベオグラードに次ぐ第二の都市であるノビ・サドで行われ、第2シードのハンガリー、第3シードのスペイン、第4シードのロシアがおり、スペイン、ロシア、ハンガリーの順に対戦する。フランスの初戦は1月16日に行われたが、スペインは因縁の相手である。これまでの両国の戦績は75戦して33勝33敗9分と全くの五分である。スペインと直近の対戦は本連載第1210回でも紹介した昨年の世界選手権の第1ラウンドである。終了5分前までフランスは4点をリードしていたが、追いつかれドローとなっているが、実は最近の3試合はすべて引き分けており、実力は伯仲している。
ノビ・サドの誇るSPENSスポーツセンターは1万1000人収容の堂々たる体育館であり、フランスでこれ以上の規模の体育館は前回の本連載で紹介したベルシー総合体育館だけである。この大体育館にフランス代表は初戦を戦ったが、スペインもフランスに対しては自信を持っているようであり、特に守備陣が序盤健闘し、フランスは思ったように得点をあげることができない。逆にスペインが得点を重ね、フランスは0-6とリードを許してしまう。その後フランスは逆転した時間帯もあるが、前半は13-15と2点のビハインド。後半もフランスは積極的に試合を進めるがスペインの堅守が光り、結局26-29と3点差で敗れてしまう。フランスは3大国際大会では1993年の世界選手権のスイス戦以来、実に19年ぶりに黒星スタートとなったのである。
■ロシアには一度もリードを許すことなく順調に勝利
まさかの黒星発進となったフランスは2日後のロシア戦は順調に試合を進め、前半は13分まで無失点、逆に得点を重ねて、終盤に3点連取されたが、16-11と5点リードで折り返す。後半に入ってもその差を詰められることはなかった。60分間一度もリードを許すことなく、28-24と勝利する。
■ハンガリーに敗れるが、第2ラウンドに進出
そして第1ラウンドの最終戦の相手はハンガリーである。会場のノビ・サドはハンガリーに地理的に近いこともあり、ハンガリーの試合には多くのファンが詰めかける。この声援に後押しされ、ハンガリーは初戦のロシア戦は31-31と引き分けたが、第2戦ではフランスが敗れたスペインと24-24のドロー、2引き分けで王者フランスと対戦する。このハンガリー戦でフランスは23-26と敗れてしまう。3試合で1勝2敗と負け越したわけであるが、ハンドボールの大会はグループリーグで上位2チームだけが決勝トーナメントなど次のステージに進出するサッカーなどと異なり、最下位を除く上位3チームが第2ラウンドに進出することができるため、フランスは最下位を免れ、次の第2ラウンドに進出する。
しかし、このフランスの第2ラウンド進出は冷や汗ものであった。グループCは各チームとも2試合を終えた段階でスペインが首位で勝ち点3(勝ち点は勝ちは2、引き分けは1、負けは0)、2位はフランスとハンガリーで勝ち点2、ロシアが最下位で勝ち点1であった。最終日は第1試合としてスペイン-ロシア戦が行われ、引き続き第2試合で上位シード国の対戦であるフランス-ハンガリー戦が行われた。第1試合でスペインがロシアに30-27と勝利し、ロシアは勝ち点1にとどまり、この時点で勝ち点2のフランスの第2ラウンドが決定したわけであり、もし第1試合と第2試合の順番が逆であったならば、フランスのファンは肝を冷やしてスペインとロシアの戦いを観戦したであろう。(続く)