第1372回 凱旋試合となるか6か国対抗(2) フィリップ・サンタンドレ新監督が選んだ30人

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■名ウィングで主将経験、指導者経験の豊富なフィリップ・サンタンドレ新監督

 昨年のワールドカップで準優勝となりながら、マルク・リエーブルモン監督は大会前に決まっていた通り退任、後任にはフィリップ・サンタンドレが就任する。サンタンドレは44歳、かつてフランス代表のウィングとして69試合に出場し、セルジュ・ブランコの38に次ぐ歴代2位の32トライをあげている。フランス代表のラグビーの監督の特徴として、現役時代にフランス代表で活躍したスター選手がなるケースが多く、「名選手、必ずしも名監督ならず」の格言通り、チームマネジメントがうまくいかなかった例は枚挙にいとまがない。サンタンドレ新監督は本連載第536回で紹介したとおり代表では34試合で主将を務めている。また現役引退後もイングランドのグロスター、フランスのブルゴワン、イングランドのセール、フランスのトゥーロンで監督を歴任しており、現役時代の実績、引退後の指導歴を兼ね備えた人物である。

■1月5日に発表された30人の代表メンバー

 12月1日に代表監督に正式に就任したサンタンドレ監督は年明け早々の1月5日に今季の6か国対抗に出場する30人の選手を発表した。プロップは5人が選出され、ファビアン・バルチェロ、ジャン・バプティスト・プー、リュック・デュカルロン、ニコラ・マス、バンサン・デュバティ、フッカーはウィリアム・セルバ、ディミトリ・サルゼウスキーの2人、ロックはパスカル・パペ、ジュリアン・ピエール、ロマン・ミロシュルスキ、ヨアン・マエストリの4人、フランカーとナンバー8の第3列はジュリアン・ボネール、イマノル・アリノルドキ、ティエリー・デュソートワール、フルジャンス・ウドラオゴ、ルイ・ピカモール、ヤニック・ニャンガの6人である。
 ハーフ団は、スクラムハーフにモルガン・パラとディミトリ・ヤシビリ、スタンドオフにリオネル・ボークシスとフランソワ・トラン・デュックとそれぞれ2人が選ばれた。
 センターはマキシム・メルモス、オーレリアン・ルージェリ、ヤン・ダビッド、ウェスレイ・フォフォナの4人、ウィングとフルバックのバックスリーはアレクシス・パリソン、バンサン・クレルク、マキシム・メダール、ジュリアン・マルジウ、クレマン・ポワトルノーの5人が選ばれた。

■ほとんど残ったワールドカップメンバー

 昨秋のワールドカップ出場時と比べると、ほとんどの主力選手が継続して選出され、決勝戦の先発選手はロックのリオネル・ナレ以外は全員が残った。ワールドカップを機に代表から引退という選手も少なければ、4年に1度のワールドカップを境目にチームとしての世代交代を図るということもそれほど顕著ではない。これはまだラグビーの世界におけるワールドカップが特別な存在ではないということを意味するとともに、早春の6か国対抗、初夏の南半球遠征、秋の南半球勢の来訪というトップレベルの国との対戦が日常化しているラグビー特有の状況を反映しているといえるであろう。

■注目の新戦力と復帰組

 しかし、その中で新監督、ワールドカップ明けということで30人のうち2人だけであるが、今回が代表初招集という新戦力が加わっている。まずクレルモンの24歳のセンター、フォフォナである。フォフォナは身長は1メートル78センチと小柄であるが、その恵まれた体力が魅力であり、第2センター、ウィングもできるポリバレントな選手であり、7人制のフランス代表にも選ばれている。そしてもう1人がトゥールーズのロックのマエストリである。24歳のマエストリは身長2メートルを超え、体重は120キロという巨漢ロックである。
 そして新顔だけではなく、復帰組も紹介しなくてはならないであろう。まずは昨年の6か国対抗でイタリア戦に敗れて代表から追放されたベテラン選手の1人であるポワトルノーが復権した。そして2007年大会のシンデレラボーイといえるスタンドオフのボークシスはリエーブルモン監督時代には代表から声がかからず、昨秋のワールドカップ中にスタンドオフが負傷した際も代表未経験のジャン・マルク・デュサンがフランスから呼び寄せられた。
 サンタンドレ監督の選んだ30人がどのような戦いを見せるのであろうか。(続く)

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