第1375回 凱旋試合となるか6か国対抗(5) アイルランドとドロー、不調のイングランドと対戦
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■昨年はフランスが3戦全勝だったアイルランド戦
降雪が凍結し、グラウンドコンディション不良のため、3月4日に延期となったフランス-アイルランド戦、フランスはここまでイタリアとスコットランドに勝利し2勝、一方のアイルランドは第1節でウェールズと接戦の末21-23で惜敗し、第3節ではイタリアに42-10と大勝している。
昨年はフランスとアイルランドは3回対戦している。フランスは6か国対抗で勝利したのに続き、夏にはワールドカップ前最後の強化試合ということでアイルランドを迎えてテストマッチを2試合行い、フランスが連勝している。フランスの3戦全勝という戦績であるが、肝心のワールドカップでの対戦はない。アイルランドはワールドカップではグループリーグで豪州に勝利し、決勝トーナメントでは準々決勝でウェールズに敗れている。この内容を見るならば決してフランスが優位であるとは言えないであろう。
■試合を支配したフランス、得点につなげず、アイルランドがリード
さて、仕切り直しとなったアイルランド戦、スタッド・ド・フランスには8万人近い観衆が詰めかけた。フランスの先発メンバーであるが、スコットランド戦でマキシム・メダールが負傷したため、バックスラインにはジュリアン・マルジウ、ウェスレイ・フォフォナというワールドカップには出場しなかったメンバーが名を連ねる。このバックスラインにボールを供給するハーフ団はモルガン・パラとフランソワ・トラン・デュックで完全に固定した。
アイルランドのキックオフで始まった試合、フランスは試合を支配するが、アイルランドがチャンスを確実に得点に結びつけた。先制点はアイルランド、13分にトミー・ボウイがトライをあげ、ゴールも成功させてアイルランドが7-0とリードする。対するフランスは連続攻撃からペナルティを得て、パラが23分に反撃の3点を決める。ここから両チームはチャンスに確実に3点を取りに行き、1本ずつペナルティを決めて、アイルランドが10-6とリードし、前半終了間際にアイルランドはトライ、ゴールも成功させて、17-6として11点差でハーフタイムを迎える。
■追いついたフランス、勝ち越すことができず痛恨のドロー
後半に入り、47分にペナルティで3点を返したフランスは、相変わらず試合を支配し、ようやくスタッド・ド・フランスを歓喜させる。フォフォナがインゴールに持ち込み、アイルランドの選手がグラウンディングを阻止したかに見えたが、ビデオ判定の末、フランスの初トライが認められ、ゴールも決まって14-17と3点差に詰め寄る。勢いに乗るフランスは57分にペナルティを決めてついに11点差をはねかえし、17-17と追いつき、時間は20分以上残っている。フランスが勝ち越すのは時間の問題と思われたが、ここからフランスは得点をあげることができず、17-17と引き分けてしまった。
■宿敵イングランドはもたついたスタート
アイルランドとは引き分けたものの、負けたわけではないフランスの次週の相手は昨秋のワールドカップでの対戦の記憶も新しいイングランドである。2000年に6か国対抗となってからの優勝回数はフランスの5回に続いてイングランドが4回、この両国で4分の3の優勝回数を誇っている。昨年の6か国対抗も優勝がイングランドで2位がフランスである。このように21世紀の北半球のラグビーを引っ張る両国の対戦はクランチと呼ばれ、最大の盛り上がりを見せる。
しかしながら、今年の6か国対抗でイングランドは第1戦で低迷中のスコットランドと対戦し、前半はリードされ、後半開始早々にトライで逆転する。しかしその後なかなか突き放すことができず、終了間際にようやくペナルティゴールで7点差として13-6と苦しいスタート。
そして第2節はイタリア戦。イタリアが6か国対抗で一度も勝利したことがないローマのオリンピックスタジアムには、昨年のフランス戦の再現を期待したファンで6万5000人の観衆で埋まる。イングランドは大苦戦、トライ数で1-2と劣りながらペナルティゴール4本で19-15と薄氷の勝利。そして第3戦は昨年のワールドカップで4位になったウェールズ相手に12-19と敗れ、2勝1敗。不本意な成績で両国は対戦することになったのである。(続く)