第1481回 フランスラグビー、最高の11月(3) 豪州をノートライに抑えて大勝

 昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■12月3日に行われる2015年ワールドカップ本大会の組み合わせ抽選会

 豪州を皮切りにアルゼンチン、サモアと対戦する今年の11月、ラグビーの世界におけるテストマッチはサッカーの親善試合とは異なり、常に真剣勝負であるが、今年の3連戦は特別な意味を持つ。それは12月3日に2015年のワールドカップの本大会の組み合わせ抽選が行われるからである。サッカーのワールドカップは出場国が出そろった本大会の前年の暮れに組み合わせ抽選が行われる。一方、ラグビーのワールドカップは出場20チーム中12チームは前回大会の成績で予選免除、予選を勝ち抜いて本大会に出場するのは半数以下の8チームに過ぎない。そして予選が始まっていない段階で3年後の本大会の組み合わせが決まるのである。

■世界のトップ4の座を目指すフランス

 ワールドカップは20チームを5チームずつの4つの予選プールに分け、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。フランスは昨年のワールドカップでは第1シードに入ることができず、ニュージーランドと予選プールで戦った。結局決勝まで進出したが、予選プールで第1シードに入りたいところである。第1シードの座は4つ、11月を迎えた段階で世界ランキングは南半球のニュージーランド、豪州、南アフリカが上位3つを占め、4位イングランド、5位フランスとなっている。この世界ランキングをあげてフランスはイングランドを逆転し世界のトップ4に入りたい。世界ランキングの算定方法であるが、単なる勝ち負けだけではない。勝利の場合は15点差以上かそれ以下か、また敗戦の場合も同様である。すなわち、忠勝だけではなく15点差をつけて勝利することが世界ランキング上昇のために必要である。
 ライバルのイングランドは今年のウインドウマンスにフランスよりも1試合多い4試合を予定している。まずフランスが豪州と対戦する10日にはフィジー、17日には豪州、24日には南アフリカ、そして例外的に12月1日にも試合を組み、ニュージーランドと対戦する。すなわち南半球の上位3チームすべてと対戦する。このようなタフな対戦相手を選んだのはイングランドだけである。

■ティエリー・デュソートワール不在のフランス

 11月10日の夜21時、スタッド・ド・フランスに豪州を迎える。2年前の大敗を経験している先発メンバーはフランスは2人、プロップのニコラ・マスとフランカーのフルジャンス・ウドラオゴである。一方、豪州はその大勝の経験があるのはトライゲッターの左ウイングのアダム・アシュリー・クーパーを含む3人である。
 そして負傷により姿が見えないのが昨年のワールドカップで主将を務め、縦横無尽に走り回ったティエリー・デュソートワールである。
 前回の本連載でも紹介した通り、6月以降試合を行っていないフランスよりも夏場も継続的に試合を行ってきた豪州が有利と思われ、ラグビーの試合としては珍しく観客は少なく6万人台である。

■驚異のタックル成功率、ワールドカップに出場しなかったフレデリック・ミシャラクが大活躍

 フランスは開始早々の5分に豪州のオフサイトからPKを得る。この日スタンドオフを務めるのは昨年のワールドカップのメンバーから外れていたフレデリック・ミシャラク、25メートルのキックを成功させフランスが先制。一方の豪州は9分にゴール正面のPGを決めて同点。試合前の予想通り、ボール保持率も陣地も豪州がフランスを圧倒し、いずれの数値もフランスは4割程度であり、圧倒的に劣勢に立つ。ここで思い出されるのが昨年のワールドカップ準決勝のウェールズ戦である。フランスを救ったのがタックルであった。フランスのタックル成功率は9割を超える。
 そして、この日好調だったのはFW陣である。スクラム、モールからのサイド攻撃が決まり、13分には5メートルスクラムからナンバー8のルイ・ピカモールがこの試合初のトライをあげる。前半は両チームPGを手堅く決め、フランスが16-6とリードする。
 後半はミシャラクの活躍が目立つ。55分には自らのランから今年の6か国対抗から代表入りした新戦力の右ウイングのウェスレイ・フォフォナにつないでトライ。ミシャラクはゴールも成功させる。昨年のワールドカップには出場していなかったコンビでトライをあげて23-6とリードを広げる。圧巻は64分、フランスは5メートルスクラムから認定トライをあげる。33-6と豪州をノートライに抑えてフランスが大勝したのである。(続く)

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