第1485回 フランスラグビー、最高の11月(7) フィジカル勝負のサモアに泥だらけの逆転勝利
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■閑散としたスタッド・ド・フランス
南半球勢を迎え撃つ今年の11月の最終戦の舞台はスタッド・ド・フランス、そして相手はカナダ、ウェールズを破って2015年ワールドカップでの第2シード入りを狙うサモアである。
スタッド・ド・フランスは2週間前の豪州戦は同じスタッド・ド・フランスに6万人の観衆しか集まらなかった。また、ラグビーが盛んではない地域である北部のリールでの試合も結局5万人収容のリール・メトロポール大競技場に集まったのは4万5000人と満員になるには至らなかった。そしてこのサモア戦は、11月24日18時からキックオフされるが、土曜日の夕方に試合開始となったが観客は3万6500人とさびしいスタンドとなり、最上階を閉鎖した状態で試合は行われた。
もちろん、春先の6か国対抗のようにチケットセールスが行くわけではないこと、相手が南半球の強豪ではないことも影響しているが、3年前の秋にサモアと対戦した時は5万4000人の観衆を集めている。1998年にスタッド・ド・フランスがオープンして以来、ラグビーの国際試合において最も観客が少なかったのは2002年秋のカナダ戦の4万8000人、そのワースト記録を1万人以上下回ってしまった。
■フランスの先発メンバーの半分以上はワールドカップメンバー以外
第1シード獲得に王手をかけたフランスの先発メンバーは、FW第1列はトマ・ドミンゴ、ベンジャマン・カイザー、ニコラ・マス、第2列は主将のパスカル・パペとヨアン・マエストリ、第3列はフランカーはヤニック・ニヤンガとフルジャンス・ウドラオゴ、ナンバー8がルイ・ピカモールである。スクラムハーフはモルガン・パラ、スタンドオフにフレデリック・ミシャラク、スリークォーターバックは左からバンサン・クレルク、マキシム・メルモス、フローリアン・フリッツ、ウェスレイ・フォフォナ、そしてフルバックはブリース・デュランである。昨年のワールドカップに出場したメンバーは意外と少なく、マス、パペ、ウドラオゴ、ピカモール、パラ、クレルク、メルモスの7人だけである。ワールドカップ以降にメンバー入りしたのはデュランだけであり、それ以外の7人はワールドカップ以前に代表入りした経験のある選手ばかりである。
■新調した白のセカンドジャージーのデビュー戦
試合はぬかるむグラウンドの上で行われた。今季からフランス大法はユニフォームのサプライヤーをナイキ社からアディダス社に変更したが、豪州戦、アルゼンチン戦では青のファーストジャージーを着用してきた。ビジターであるサモアにジャージーの色の選択権があり、サモアがファーストジャージーの青を選択したため、フランスは白のセカンドジャージーを着用したが、この日がデビュー戦となった白のジャージーは泥だらけになった。
■フレデリック・ミシャラク、1人で19得点をあげる大活躍
フランスは、従来は5か国(現在は6か国)対抗の中でも体格的には恵まれない中で戦ってきたが、まさにかつての5か国対抗を見るようにサモアは体格に物を言わせてフランスに挑んできた。15分にサモアはオーソドックスなバックスラインでパスを展開し、最後はフルバックのデビッド・レミがトライをあげ、日本で活躍中のトゥシ・ピシがゴールを決めて7-0とリード。19分にフランスはミシャラクがカウンターアタックからトライをあげ、自らがゴールも成功させ、7-7と同点に追いつく。36分にはセンターラインでサモアが反則、フランスはパラがゴールを狙って成功、10-7とフランスが3点リードして折り返す。
しかし、フィジカル勝負のサモアはボール支配率も陣地もフランスを圧倒する。43府にはトライをあげ、ゴール成功、PGの3点を追加され、フランスは10-14と4点のビハインド。フランスから勝機は消えたかと思われた。しかし、数少ないチャンスでサモアの反則を誘い、61分、72分とPGをミシャラクが決めて逆転、試合終了間際の79分にもPGを追加し、22-14で勝利する。
フランスは、ボール支配率わずかに28パーセントという試合だったが、1人で19得点をあげたミシャラクの活躍で勝利し、2005年以来7年ぶりに秋のシリーズで全勝したのである。(この項、終わり)