第1665回 2月初めのフランスの快進撃(1) 6か国対抗開幕戦でイングランドに逆転勝利
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■散々な成績だった2013年のラグビー代表チーム
前回と前々回の本連載では男子ハンドボールチームが1月に3回目の欧州王座に就いたことを紹介したが、2月初めにはフランスのスポーツが快進撃を続けた。
2月1日からラグビーの6か国対抗が始まった。来年、イングランドで開催されるワールドカップを控え、前回の準優勝国であり、次回の大会でも北半球で唯一シード入りしたフランスは、シード国にふさわしい力の違いを欧州勢に見せたいところである。しかし、2013年はフランスラグビーにとって試練の1年となった。6か国対抗ではイタリアに敗れるなどして1勝1分3敗で6か国対抗となってから初めての最下位に落ちる。また6月にはニュージーランド遠征を行い、オールブラックスとのテストマッチは3戦全敗、秋のテストマッチでも第1戦はニュージーランドに敗れ、第2戦のトンガ戦は勝利したものの、第3戦の南アフリカ戦でも敗れ1勝2敗、結局年間成績は2勝1分8敗という散々な成績の1年であった。
■開始30秒でトライをあげたヨアン・ウジェ
これだけの悪い成績は近年では珍しい。そのフランスは立て直しを図るべく今年も6か国対抗で代表チームの活動は始まる。今年の初戦はイングランド戦である。この1年でフランスはイングランドに世界ランキングで逆転されてしまい、イングランドが4位、フランスは5位である。
しかし、スタッド・ド・フランスはこの試合も8万人の満員の観衆で埋まった。この試合、フランスのキックオフで始まる。キッカーはスタンドオフで初代表のジュール・プリソンである。プリソンがブルーのユニフォームを着て最初に蹴ったボールをイングランドが保持できず、ラックとなってフランスのスクラムハーフのジャン・マルク・デュサンが右に展開、そしてプリソンが右サイドにキック、このキックが右ウィングのヨアン・ウジェの胸にすっぽりと入り、ウジェがこのまま走り、右隅にトライ。実に開始30秒での先制トライとなった。
その後両チームとも手堅くPGで3点ずつを追加、フランスは17分にこの試合2本目のトライを決める。右サイドにオープン攻撃し、今度はウジェが右サイドで相手を抜き去り、内側にいたフルバックのブリース・デュランにパス、デュランはまたキックをし、1本目のトライ同様、ウジェがボールをキャッチし、そのままインゴールへ、フランスの鮮やかな攻撃が決まり、フランスは13-3と差をつける。前半はフランスがペナルティゴールを1本、イングランドがトライを1本(ゴール失敗)を追加し、フランスが16-8で折り返す。
■イングランドが逆転、得点から遠ざかるフランス
後半に入り、イングランドはまずペナルティゴールで点差を5点差とし、48分に初代表のルーサー・バレルのゴールポスト真下のトライでついに同点に追いつく。ゴールも成功し、イングランドが18-16と逆転し、イングランドは57分にもドロップゴールを決めて21-16と5点差をつける。23分のペナルティゴール以降、無得点の続いていたフランスであるが、久々の得点は70分、スクラムで押しこんで相手の反則を引き出し、ペナルティゴールをマキシム・マシュノーが決めて2点差に迫る。イングランドはすかさず73分にペナルティゴールで再び5点差とする。
■同点トライを決め、中央に回り込んだ19歳のガエル・フィクー
残り7分でトライの欲しいフランス、スタッド・ド・フランスの歓声が上がる中、77分にはその直前に交代して入ってきたばかりの19歳のガエル・フィクーが大きな仕事をする。この試合が代表4試合目という背番号23の19歳は左への展開でボールを受け取り、相手をかわし、左中間に走り込む。このままコーナーフラッグを目指して走ってもトライだったが、フィクーはパスを見せかけるとフェイントをかけ、相手を抜き去り、ゴール中央へ回り込む。左隅にトライで同点、中央にトライで逆転ということをわかっていたフィクーの中央へのトライは逆転のゴールを呼び込む。マシュノーがやすやすとゴールを決めて、フランスは26-24という僅差でイングランドを破ったのである。(続く)