第1689回 準々決勝、2つの逆転劇(4) ダブルス、シングルスで3連勝、18年ぶりの大逆転
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■連敗から3連勝した18年前の準決勝イタリア戦
国内ランキングの上位6選手を欠くドイツ相手の準々決勝、シングルス2試合で連敗するというまさかの初日となったフランス、残り3試合を3連勝しなくてはならないという絶壁に立たされてしまった。
デビスカップが現行の試合方式になった1981年以降、フランスが初日のシングルスで連敗したことは12回あるが、その後のダブルス、シングルスで3連勝したことはわずかに1回、1996年の準決勝のイタリア戦だけである。
ナントのスポーツパレスで行われたこの準決勝、フランスは初日の第1ラバーでセドリック・ピオリン、第2ラバーでアルノー・ブッチがそれぞれ1-3で敗れる。しかし、2日目のダブルスでギ・フォルジュとギヨーム・ラウーのペアが3-0のストレートで勝利すると、3日目のシングルスではピオリン、ブッチが連勝し、3-2と逆転勝利、さらに決勝はスウェーデンに3-2と競り勝ち、マルモの奇跡と語り継がれている優勝を果たしている。
■ベテランのダブルスペア、ジュリアン・ベヌトーとミカエル・ロドラ
その再現のためにも2日目のダブルスが重要である。本連載第1667回で紹介した通り、1回戦の豪州戦のダブルスは当初ジュリアン・ベヌトーとガエル・モンフィスをエントリーしていたが、前日シングルスに出場したリシャール・ガスケとジョー・ウィルフリード・ツォンガの2人にメンバーを変更、結局フランスはダブルス、シングルスとも全勝する。
今回ダブルスでエントリーしていたのはガエル・モンフィスとミカエル・ロドラであったが、またメンバー変更を行い、モンフィスに代えて前日のシングルスに出場したベヌトーがロドラとペアを組む。ベヌトーもロドラもダブルスの方を得意としているベテラン選手である。
対するドイツは予定通りアンドレ・ベゲマンとトビアス・カムケのペアである。ベゲマンはある程度ダブルスでの実績はあるが、カムケは経験も少ない急造ペアである。フランスのベヌトー、ロドラ組は2人ともダブルスのランキングはトップ20に入っている。試合はフランスペアのサービスが次々と決まり、第1セットは6-1とフランスが取り、第2セットはタイブレークになったもののフランスが7-6と連取する。第3セットはドイツペアが6-4と取り、2-1となる。第4セットも接戦となったが、フランスが7-5で取り、3時間半近い長い試合を制したフランスは最終日に望みをかけることになった。
■エースの風格、ジョー・ウィルフリード・ツォンガが完勝しタイに追いつく
第4ラバーから始まる最終日、この日は両国のナンバーワン同士の戦いで始まる。ツォンガとカムケの戦いとなるが、カムケは3日連続の出場となる。疲労の残るカムケ相手に中1日のツォンガの動きはよく、カムケを圧倒、世界ランキング12位と91位の差が出る。第1セットを6-3、第2セットを6-2、そして第3セットも6-4とストレート勝ち、試合時間わずかに1時間42分という完勝であった。
■代役のガエル・モンフィス、プレッシャーの中でストレート勝ち
2-2となり、準決勝進出は最後のシングルス、ナンバー2同士の第5ラバーに委ねられた。さて、この第5ラバー、フランスのアルノー・クレマン監督は前夜にモンフィスに交代を命じる。モンフィスはシングルスのプレーヤーで世界ランキングは24位、本来ならば金曜日の試合に出場してもおかしくなかったが、調整が間に合わず、土曜日のダブルスにエントリーしたものの出場せず、日曜日の最後の試合で出場となる。
モンフィスは1回戦の豪州戦も第5ラバーのみに出場したが、状況は異なり、大きな精神的プレッシャーのかかる場面での登場となる。しかし、ここまでデビスカップのシングルスで7勝2敗、そして世界ランキング24位というモンフィスは、今回が初めてのデビスカップというドイツのナンバー2、ピーター・ゴヨジブクを寄せ付けなかった。第1セットを6-1と大差で先取、第2セットはタイブレークとなったが、タイブレークでは1ポイントも許さず2セットを連取、さらに第3セットも6-2とストレート勝ち、フランスは18年ぶりの大逆転で準決勝に進出したのである。(続く)