第1788回 デビスカップ、またも準優勝(9) リシャール・ガスケ、ロジャー・フェデラーにストレート負け

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■日曜日のシングルスで連勝した1927年の四銃士

 土曜日のダブルスのジュリアン・ベネトー、リシャール・ガスケ組がスイスのロジャー・フェデラー、スタニラス・ワウリンカ組にストレート負けしたフランス、13年ぶりの優勝のためには日曜日のシングルスで連勝するしかなくなった。
 フランスがこれまでのデビスカップの決勝で1勝2敗とリードされて迎えた最終日のシングルッスで連勝したのは今から90年近く前の1927年のことである。この時は今でも伝説となっているフランスの四銃士と言われるルネ・ラコステ、ジャン・ボロトラ、アンリ・コシェ、ジャック・ブルニョンの時代である。インターゾン決勝で日本を下したフランスは米国との決勝の最終日のシングルスでラコステとコシェが連勝し初優勝を飾り、以後1932年まで6連覇を飾り、黄金時代を築く。

■新・四銃士のうちの3人が決勝のメンバー入り

 そしてそれから80年以上たち、フランスには新・四銃士が生まれた。ジョー・ウィルフリード・ツォンガ、ガエル・モンフィス、ジル・シモン、リシャール・ガスケの4人であり、このうちの3人が今回の決勝のチームに選ばれている。
 この新・四銃士が倒さなくてはならないのが世界ランキング2位のロジャー・フェデラーと4位のスタニラス・ワウリンカである。シングルスの第4ラバーは当初ツォンガ-フェデラー戦、第5ラバーはモンフィス-ワウリンカ戦と発表されているが、第4ラバーに関しては試合開始の1時間前に当たる正午まで、第5ラバーに関しては第4ラバー終了後に変更することができる。

■第4ラバーに起用されたリシャール・ガスケ

 スイスの第4ラバーは背中を痛めているが、フェデラーで決まりであろう。フェデラーはデビスカップの日曜日のシングルスでは2003年に豪州のレイトン・ヒューイットに負けて以来11年間負け知らずである。このフェデラーに勝たない限りフランスの優勝はなく、フェデラー戦に腕を負傷しダブルスを回避したツォンガではなく、ガスケやジュリアン・ベネトーを起用する可能性もある。過去のフェデラー戦の戦績はツォンガは5勝11敗、ガスケは2勝12敗、ベネトーは2勝6敗であるが、ツォンガの腕の調子が思わしくないため、フランスは前日のダブルスに出場したガスケを起用する。ダブルスでは本調子ではなかったガスケであるが、もともとはシングルスのプレーヤーである。フェデラーには大きく負け越しているが、クレーコートでは2勝2敗と五分であり、このピエール・モーロワ競技場に敷き詰められた赤土はガスケにとっては大きな援軍である。

■テニス史上最多の観衆の中で初優勝を導いたロジャー・フェデラー

 会場のピエール・モーロワ競技場には2万7448人の観衆が集まった。前々日の記録をさらに16人更新し、世界のテニスの歴史で最多の観衆の中で世界一をかけた戦いが始まった。
 ガスケはバックハンドでフェデラーの弱点と言われるバックハンドを狙う。しかし、フェデラーは金曜日のフェデラーではなかった。ワウリンカとのペアで勝利を収めたフェデラーは本来の姿に戻り、ガスケを全く寄せ付けない。第1セットは第3ゲームでブレイクし、その後は確実にゲームをキープする。圧巻は3ゲーム連続でラブゲームでキープをしたことである。第1セットは6-4と先取する。
 第2セット以降はさらにフェデラーの勢いが加速した。大ゲームをいきなりブレイク、ファーストサーブは70%を超え、安定した試合展開でポイントを重ねる。第6ゲームでガスケは30-15とブレイクのチャンスを迎えたが、ここでフェデラーは本領発揮、3本連続してファーストサービスでエースを取り、フランスファンを沈黙させ、第8ゲームをキープして6-2と王手を第2セットを奪い、王手をかける。
 第3セットで背水の陣となったガスケは粘りを見せ、ブレイクポイントを握ることもあったが、フェデラーも気迫あるプレーを見せ、6-2と取り、フェデラーがセットカウント3-0で勝利する。
 この結果、スイスはデビスカップ初優勝、14番目の優勝国となった。一方、フランスは2002年(ロシア)、2010年(セルビア)に続きて3回連続して決勝で敗れたのである。(この項、終わり)

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