第1817回 王者フランス、世界選手権5回目の優勝(1) フランスハンドボール、栄光の20年間

 このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。

■1月下旬に行われるハンドボールの世界選手権

 1月から2月の上旬にかけて、サッカーは国内試合しかないが、この時期に国際大会が行われるスポーツがある。それが今回から紹介するハンドボールである。フランスの男子ハンドボールは本連載でもしばしば紹介しているが、輝かしい戦績を誇っている。本連載で最後にハンドボールについて紹介したのは第1663回と第1664回で昨年1月から2月にかけて行われた欧州選手権であるが、この欧州選手権でフランスは3回目の優勝を果たしている。
 フランスはこの欧州選手権で今回の世界選手権の出場権を得たわけであるが、1990年代以降、奇数年の初めに行われている世界選手権でこれまで4回の優勝を誇る。ハンドボールの世界選手権は1938年に始まり、すぐに第二次世界大戦のため中断し、1954年に復活したが1990年代に入るまでフランスは、上位進出は難しく、1986年までに行われた11回の大会のうち本大会に出場できたのはわずか4回、最高の成績は1954年大会の6位であった。

■1995年の世界選手権で優勝、今日まで続く数々の栄光

 ところが1992年のバルセロナオリンピックで3位、1993年大会で準優勝すると1995年大会では初優勝を遂げる。それ以降は、1999年大会と2013年大会で6位となった以外は準決勝に進出、優勝3回、3位2回、4位1回という非常に良い成績を残している。この栄光を支えているのが1995年の初優勝後にダニエル・コスタンティニ監督の後任として就任したクロード・オネスタ監督である。世界選手権以外の国際大会ではオリンピックでは2008年大会と2012年大会で優勝、欧州選手権では2006年大会、2010年大会、2014年大会で優勝している。就任以来352戦の戦績は279勝20分53敗、勝率はほぼ8割である。

■国際スポーツイベントに力を入れる中東のカタール

 今年は2015年、フランスのハンドボールがアイスランドで開催された世界選手権で初めてのタイトルを獲得してからちょうど20年である。今年の世界選手権は中東のカタールで行われる。2022年のサッカーワールドカップ開催国であるカタールは近年スポーツの国際イベント開催に力を入れており、2016年には自転車の世界選手権、2019年には世界陸上、そしてゆくゆくはオリンピックの開催を計画している。それらへと続く一連の国際スポーツイベントの先陣として今回のハンドボールの世界選手権の開催がある。
 この世界選手権開催のために、非常に近代的なスポーツ施設を建設している。今回のメイン会場となるルセールホールは地下に建設された1万5500人収容のモダンな建造物である。
 そしてイベント運営能力や施設だけではなく、もちろん競技にも力を入れ、今回のカタールの代表チームの監督には2013年の世界選手権を制したスペイン人の名将バレロ・リベラを招聘、さらに13人の帰化選手がおり、その中にはフランスから帰化したベルトラン・ロワネも名を連ねる。しかし、国民の多くは無関心であり、開幕戦にカタールが登場したが、ハーフタイムが終わるとほとんど空席になるありさまである。しかし、開幕戦でカタールはブラジル相手に28-23と勝利し、関係者の期待に応える。

■優勝候補筆頭のフランス

 前回の6位から巻き返しを図り、昨年の欧州選手権に次ぐ優勝を目指すフランスは今回も優勝候補筆頭である。ハンドボールの世界選手権は24チームが出場し、6チームずつ4つのグループに分かれてグループリーグを戦うが、フランスは第1シードとしてグループCに入る。他に第1シードになったのはスペイン(グループA)、クロアチア(グループB)、ドイツ(グループD)であり、これらにデンマーク(グループD)、ポーランド(グループD)を加えた欧州勢が優勝争いをすると見られている。
 フランスはグループリーグでチェコ、スウェーデン、アイスランドという欧州勢と、エジプト、アルジェリアというアフリカ勢と対戦するのである。(続く)

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