第1818回 王者フランス、世界選手権5回目の優勝 (2) 開幕直後はもたついたフランス

 このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。

■欧州勢4チームが有力なグループC

 今回の世界選手権は、優勝チームには2016年のリオデジャネイロオリンピックの出場権が与えられる。昨年行われた欧州選手権の王者ではあるが、2年前の世界選手権では近年最低の6位に沈んだフランス、今大会は優勝してリオデジャネイロへのチケットを世界最速でつかみたいところである。
 フランスの所属するグループCの顔ぶれについては、前回の本連載で紹介したが、優勝候補に目されるようなチームは入らなかった。しいて最大の強敵を探すならば、グループリーグの最終戦で対戦するスウェーデンであろう。6チーム中上位4チームが決勝トーナメントに進出するが、グループCはフランス、スウェーデン、アイスランド、チェコという欧州勢4チームが決勝トーナメントに残るのではないかと予想された。

■ベテラン、中堅が構成した開幕のチェコ戦の先発メンバー

 フランスの初戦は1月16日、欧州勢の中では一番力が劣ると目されるチェコと対戦する。この試合、フランスはベストメンバーが先発に名を連ねる。GKは38歳の大ベテランのティエリー・オメイエ、フィールドプレーヤーはグザビエ・バラシェ、ニコラ・カラバチック、ルカ・カラバチック、セドリック・ソラインド、ミカエル・ギグー、バランタン・ポルトとベテランと中堅のメンバーが混成軍、4人が代表出場100試合以上、26歳のバラシェとルカ・カラバチックと24歳のポルトが代表出場数100試合以下である。また、所属クラブも7人中3人は国外組となっている。
 フランスは試合開始直後以外はリードされることなく、終始リードして試合を進める。最終的なスコアは30-27と3点差であり、物足りなさも感じさせたが、王者にふさわしい安定した試合運びで初戦を白星で飾り、リオデジャネイロへの第一歩を踏み出す。

■エジプト戦は辛勝、アイスランド戦は痛恨のドロー

 チェコ戦の翌々日の18日に行われたエジプト戦にフランスはチェコ戦と同じ先発メンバーで臨む。エジプト戦でフランスは苦戦を強いられる。エジプトは初戦でアルジェリアに勝利しており、その勢いを持ち込んで前半の20分過ぎまではエジプトが先行し、フランスが追い付くという展開であった。しかし地力に勝るフランスは20分過ぎに連続ゴールで差を広げ、14-11とリードして前半を折り返す。フランスは後半もこのリードをキープし、最終的なスコアは28-24と連勝する。この時点で連勝しているのはフランスとスウェーデンだけとなったが、スウェーデンはアイスランドに24-16、チェコに36-22と大差をつけて勝利しており、僅差で勝利しているフランスの立ち上がりの悪さが気になる。
 その不安が的中したのが第3戦のアイスランド戦であった。アイスランド戦に勝利すれば早々と決勝トーナメント進出を決めることができたが、アイスランドの先発メンバーの半数以上の4人はフランスのクラブに所属する選手である。手の内を知られているフランスは立ち上がりこそリードしたものの、15分に追いつかれ、17分に逆転され、その後は終始アイルランドがリードし、フランスが追い付くという展開となる。後半の47分にフランスはようやくリードしたが、リードを広げることはできず、残り4分で2点差をつけたが追い付かれ、26-26のドローとなったのである。
 欧州王者らしからぬ最初の3戦、負けはしないものの、決勝トーナメント以降には不安が残る。

■エジプトに快勝、スウェーデンと首位をかけて直接対決へ

 流れが変わったのは1月22日の第4戦であった。第1試合でライバルのスウェーデンがエジプトと引き分け、フランスは第2試合でアルジェリアと対戦する。先発メンバーを3人入れ替え、35歳のダニエル・ナルシス、29歳のギヨーム・ジョリ、23歳のカンタン・マエがスターターとなる。ここまで3連敗のアルジェリアに対し、フランスは終始リードを保ち、32-26と勝利する。フランスはグループリーグ最終戦で首位の座をかけてスウェーデンと直接対決することになったのである。(続く)

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