第1819回 王者フランス、世界選手権5回目の優勝 (3) 本調子を出したフランス、準決勝に進出
このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。
■最後の最後でスウェーデンに逆転勝利
3勝1分同士でグループリーグの最終戦を戦うフランスとスウェーデン、実は2012年のロンドンオリンピックの決勝戦の再戦となる。ロンドンでは22-21とフランスが競り勝ち、金メダルを獲得したが、両チームの力量の差は大きくはない。特にフランスにとってはここまで無敗で来ているものの、欧州王者、オリンピックチャンピオンらしからぬ結果が続いており、欧州の強豪に勝利して決勝トーナメントに臨みたいところである。
フランスはアルジェリア戦からさらにメンバーを入れ替え、ウィリアム・アカンブレーがこの大会初先発となる。フランスは試合の序盤は苦戦し、スウェーデンにリードを奪われる。フランスがようやく追いついたのは12分、しかしその後もスウェーデンが先行し、フランスが追う展開が続き、前半はフランスが一度もリードを奪うことなく、11-12と1点リードされ、ハーフタイムを迎える。
後半に入ってもこの展開は変わらず、50分の時点でスウェーデンが22-20とリードしている。後半に入ってからフランスはリードすることもなく、残り10分となる。ここからフランスの猛攻が始まる。55分に23-23と追いつき、56分にはグザビエ・バラシェの得点で初めてフランスがリードする。さらにニコラ・カラバチックが得点を重ね、26-24と2点差をつける。その後両チーム1点ずつ加え、フランスが27-25と勝利、グループCの首位となったのである。
■フィールドプレーヤー14人全員が得点を決めたアルゼンチン戦
決勝トーナメント1回戦の相手はアルゼンチン、グループDの最終戦でロシアに勝利して4位に入った。南米チャンピオンであるが、世界レベルの大会では二桁順位が続く。1月26日に行われたアルゼンチン戦、クロード・オネスタ監督は先発メンバーを開幕戦と同じメンバーに戻す。スウェーデンに対する最後の逆転劇がチームに自信を与え、フランスは南米王者に対し33-20、初めて今大会で10点以上の差をつけて勝利する。この試合特筆すべきはフランスのフィールドプレーヤーと登録している14人全員が出場し、14人全員が少なくとも1点以上得点をあげていることである。この試合の最優秀選手に選ばれたのはこの試合で先発に復帰したバランタン・ポルトであり、チームの層の厚さも長丁場の大会では大きな力となる。
■登録選手の半数がフランスのクラブに所属しているスロベニア
続く準々決勝は1月28日に行われ、フランスはスロベニアと対戦する。スロベニアはグループAの3位、1回戦でマケドニアを下しての準々決勝進出である。昨年の欧州選手権は予選落ち、2012年のロンドンオリンピックにも出場していないが、前回の2013年の世界選手権ではフランスを上回る4位になっている。また、登録16選手のうちの半数の8人がフランスのクラブに所属しており、エースのドラガン・ガジッチなど4人はモンペリエに所属している。そのガジッチは今大会の6試合で52得点をあげ、この時点で得点ランキングトップである。フランスとスロベニアの過去の戦績は21戦してフランスの14勝3分4敗と大きく勝ち越しているが、最新の対戦は昨年4月にデンマークで行った試合、フランスは26-27と競り負けている。
■スロベニアに完勝、準決勝に進出
このように決して楽ではない相手であったが、フランスは開始早々から快調に飛ばし、開始14分で7-1と大きく差をつける。フランスはその後も安定した戦いぶりで、スロベニアを寄せ付けず、前半を18―11と大きくリードして終える。後半もフランスは得点を重ねる。そして健闘したのは攻撃陣だけではない、38歳のベテランGKのティエリー・オメイエは次々とセーブを決め、スロベニアに得点を許さない。
後半もフランスはリズムを守った戦いで最終スコアは32-23とスロベニアを下し、前回大会では越えられなかった準々決勝の壁を乗り越え、準決勝に進出したのである。(続く)