第2199回 3連敗を喫したラグビー代表(5) 攻め続けるが、タックルが甘く、3戦とも大敗
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■2010年代に入って南半球勢に大きく負け越しているフランス
南アフリカ遠征の最終戦となる6月24日のエリスパーク競技場での南アフリカ戦、3試合では最多となる55,820人の観衆が集まった。フランスは今回の遠征で2連敗しているだけではなく、南アフリカには2009年11月にトゥールーズで勝利したのを最後にここまで4連敗である。ニュージーランドにも同年6月にドゥネーデンで勝利して以来10連敗中、豪州にだけは2014年11月にスタッド・ド・フランスで勝利しているが、昨年11月には敗れている。2010年代になってからフランスは南半球の3強に2勝17敗と大きく負け越している。同期間の南半球3強相手の戦績が1勝1敗である日本の読者の皆様から見れば想像もつかない悪い数字であろう。
■第3戦も後半に大量失点を喫し、大敗する
そしてこの試合もそれまでの2試合と同じ欠点が露呈した。まず、規律の欠如、開始早々の4分にビリミ・バカタワが反則を犯し、南アフリカはタッチを蹴って前進する。そして6分には南アフリカのヤコ・クリエルが22メートルライン内に入ってこようとするところをフランスは反則で止めるしかなく、ペナルティキックが南アフリカに与えられ、日本の皆様であればよくご存じのエルトン・ヤンチースが先制のペナルティゴールを決める。そして直後の8分にはバカタワがボールを奪ったものの、失い、ジェシー・クリエルに隅に初トライされてしまう。ヤンチースは難しい角度のゴールを決め、10-0とリードを広げる。
フランスは11分にブライス・デュランへのハイタックルでペナルティキックを得て、ジュール・プリソンが3点を返す。14分にもフランスは反則を犯すがヤンチースが今度は失敗、その直後の16分にフランスはペナルティゴールで3点を追加し、6-10と追い上げる。しかし、フランスは反則が目立ち、南アフリカは23分と38分にペナルティゴールで6点追加、16-6と再びリードを広げる。フランスは前半終了間際にスクラムで反則を得て、プリソンのペナルティゴールで追い上げる。
これまでの2試合では後半に得点差を大きく広げられるパターンであったが、この第3戦も同様であった。後半開始直後の42分には南アフリカの主将のエベン・エツべスがトライをあげる。ジェシー・クリエルに続いてかつて日本でプレーしていたエツべスが5点をあげる。フランスは58分にペナルティゴールを1本返したのがこの試合最後のスコアとなった。
62分と75分に南アフリカはトライを挙げ、いずれもヤンチースがゴール成功。結局ファイナルスコアは12-35となり、3試合とも似たようなスコアで敗れてしまったのである。
■フランスの敗因、甘いタックル、キックミス、規律の欠如
3試合とも共通しているところがあり、ボール保持率や陣地獲得率では3試合ともフランスが上回っていた。すなわち、フランスはただボールをキープしていただけではなく、南アフリカに対して攻め込んでいたことになる。
しかしながらいずれもトリプルスコアに近い大敗を喫したのはまず、タックルの甘さにある。フランスは攻め続けていたわけであるから必然的にタックルの本数は南アフリカより少なくなる。しかしこの3連戦のフランスのタックル成功率は74%、南アフリカの86%よりもかなり低い。
また、フランスのキックが効果的ではなかったことも指摘できる。3試合ともヤンチースがスタンドオフを務めた南アフリカに比べてフランソワ・トラン・デュックとプリソンがスタンドオフを務めたフランスのキックは精度を欠いた。
そして3試合とも攻め込んでいたフランスであったが、反則が多く、第3戦だけは南アフリカと同数であったが、第1戦と第2戦ではフランスの方が反則が多く、失点につながった。
■かろうじて世界ランキング8位を保ったフランス
2019年のワールドカップ出場を決めている国で6月に3連敗したのはフランスとイタリアだけであった。遠征前のフランスの世界ランキングは6位であったが、連敗した時点で8位に落ちた。3連敗で9位以下に落ちるのではないかと心配されたが、9位のアルゼンチンはイングランドに連敗し、ジョージアに勝利し、1勝2敗という成績であり、ポイントを積み上げることができず9位にとどまり、フランスはかろうじて世界ランキング8位を保ったのである。(この項、終わり)