第2231回 16年ぶりの優勝目指すデビスカップチーム(6) ジョー・ウィルフリード・ツォンガの勝利でタイに

 6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■セルビアとの対戦に選んだリールのピエール・モーロワ競技場

 セルビアとの前回の対戦は2010年の決勝、ベオグラードでの試合だったため、今回はフランス国内で行われる。クレーコートを得意とするフランスは当初パリのローランギャロスか南仏のモンテカルロ・カントリークラブかと思われたが、フランスはこの試合をリールのピエール・モーロワ競技場に赤土を敷き詰めて行うことを決定した。サッカーのリールの本拠地であるが、本連載の読者の皆様ならばご存じの通り、2014年の決勝のスイス戦で使用した実績がある。この時は3日間で8万人を超える観客を動員した。今回は準決勝ということもあり、そこまでの観客動員は見込めないが、主催者は金曜日は1万5000人、土曜日は1万3000人、日曜日は1万8000人と3日間で4万6000人を見込んでいる。もしローランギャロスで開催した場合は、収容人員は1万4500人であり、それを上回る観客を動員できることを見込んでのリールでの開催となった。  そして、屋根のついたピエール・モーロワ競技場における声援の音響も忘れてはならない。

■地元で勝利をあげたいルカ・プイユ

 9月15日金曜日、シングルスの第1試合はフランスのナンバーツーのルカ・プイユとセルビアのナンバーワンのドゥサン・ラヨビッチの対戦となった。プイユのラヨビッチとの対戦成績は1勝2敗、しかし、この時点での世界ランキングはプイユが22位、ラヨビッチは80位である。また、クレーコートでは1回だけ対戦しておりプイユが勝利している。さらにプイユはリールから遠くないダンケルクの近郊の出身であり、いわばご当地場所である。生まれ育った地でランキングの離れた相手に勝利し、チームを勢いづけたいところである。

■プイユがまさかの敗戦、フランスは今年初の黒星

 しかし、先鋒を務めるプイユの試合は思わぬ展開となった。第1セットをプイユは1-6と落としてしまう。第2セットはプイユが持ち直し、6-3と取り返す。これで立ち直ったかと思われたが、第3セットは1-4とリードを奪われる苦しい展開となった。しかし、ここからプイユが4ゲーム連取して5-4と逆転する。これで一気に第3セットを取るかという勢いであったが、結局タイブレークとなり、第3セットを6-7と落としてしまう。さらに第4セットもタイブレークとなり、プイユは粘り負けしてしまう。結局プイユは1-3で敗れ、今年初めてフランスチームは敗れたのである。(勝敗が決まった後の試合は除く)

■帰ってきたエース、ジョー・ウィルフリード・ツォンガ

 さすがにこのプイユの敗戦はヤニック・ノア監督にはショックであった。第2ラバーはランキング的にはフランスナンバーワンであるが、今年は父親となったことから試合に出場する機会の少ないジョー・ウィルフリード・ツォンガである。相手のラスロ・ジェレとは対戦経験がない。また、ツォンガは今年のデビスカップに初出場である。
 不安一杯の中でノア監督はツォンガをコートに送り出したが、ツォンガは周囲の心配とは逆に自信に満ちていた。デビスカップチームに入ったのは2008年、それ以来毎年デビスカップの試合に出場し、今年で10年目になる。キャリア十分のツォンガはこれまで初日のシングルスの第1試合を落とした直後の第2試合に出場したことが4回もある。勢いのまま敗れれば一昨日手をかけられる状況の中でのツォンガの戦績は3勝1敗と苦境での試合を苦にしていない。
 ツォンガは第1セットは6-6のタイブレークを制し、第1セットを先取する。第2セットも6-3、第3セットも6-3と立て続けに奪い、終わってみればストレート勝ちとなる。ツォンガはサービスが好調で、実にサービスエースは8本、ダブルフォールトはなしという素晴らしい内容であった。
 ツォンガのデビスカップ勝利は昨年7月のチェコとの準々決勝のイージ・ベセリ戦以来、フランス国内での勝利はシングルスに限ると2014年の準決勝のルカシュ・ロソル戦までさかのぼることになる。エースの貴重な勝利でノア監督も安堵したのである。(続く)

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