第2288回 崖っぷちのラグビー代表(2) 多くのベテランを起用した日本戦
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■南アフリカ戦は6連敗、6月以降5連敗となったフランス
11月18日、スタッド・ド・フランスで南アフリカに17-18と敗れたフランス、これで南アフリカ戦は6連敗となってしまう。南アフリカ戦の最後の勝利は2009年11月のトゥールーズでの試合である。通算成績はフランスの11勝6分26敗であるが、1967年から1992年にかけて2引き分けをはさみ9連敗したのに次ぐ悪い連敗記録である。
そして、フランスは6月と11月のウインドウマンスで5連敗(11月14日のリヨンでのニュージーランド戦はテストマッチ対象外の試合)となってしまった。5連敗もフランスにとっては1982年以来36年ぶりのワースト記録である。2010年の6か国対抗で全勝優勝、2011年のワールドカップで準優勝したのを最後にすっかりフランスは輝きを失ってしまった。監督も2011年のワールドカップ終了後にマルク・リエーブルモンからフィリップ・サンタンドレに交代する。サンタンドレは低空飛行が続きながらも4年間の監督を務め、最後のイングランドでのワールドカップは予選プールでアイルランドに敗れ、決勝トーナメント初戦の準々決勝では前回の決勝と同じニュージーランドとの戦いとなったが、13-62というフランスラグビー史に残る大敗でドーバー海峡を渡って帰国した。
■トゥールーズで輝かしい記録を残したギ・ノベスも苦戦
そして登場したのがギ・ノベスであった。ラグビーの都トゥールーズ出身のノベスは選手としても監督としてもトゥールーズ一筋、監督としては欧州制覇が4回、フランス国内での優勝も10回を数え、単独チームの監督としては最多のタイトルを誇る。救世主として初めてフランス代表の指揮を執ることになり、1年目の2016年は4勝6敗(6か国対抗2勝3敗、6月1勝1敗、11月1勝2敗)と負け越し、2年目は6か国対抗で3勝2敗とかろうじて勝ち越したが、その後5連敗である。就任以来、宿敵イングランド、ニュージーランド、豪州、南アフリカには1度も勝利することができず、力の落ちる国相手からしか勝利することができない。
■今年最終戦は勝てる相手の日本戦
そういう意味では連敗ストップにふさわしい相手と今年最後に対戦するはずであった。北半球のチームは11月はホームゲームであるが、ちょうどサッカーの代表戦も行われるため、スタッド・ド・フランスの確保も難しい。本来ならば一番力のあるニュージーランド戦を千秋楽に持ってきたいところであるが、11月25日の最終戦は日本戦となった。しかも、リールのピエール・モーロワ競技場で行われる予定だった試合はテニスのデビスカップと重なり、前売り券がすでに数千枚売れていたにもかかわらず、会場が変わりナンテールのUアリーナとなる。日本はアジアでは20年以上無敗で、近年はウェールズ、イタリア、南アフリカに勝利しているとはいえ、フランスとの過去の対戦成績はテストマッチ対象試合だけで3戦全勝、これ以外の試合も含めると7戦全勝となる。
■必勝を期してベテランを起用
完成したばかりのUアリーナのこけら落としとなった試合、フランスはキャリア十分の選手を並べる。その象徴がスタンドオフのフランソワ・トランデュックである。スクラムハーフのバプティスト・サランとコンビを組む。サランも若いがアントワン・デュポンよりは代表でのキャリアを積んでいる。第一列もジェファーソン・ポワロ、ギレーム・ギラド、ラバ・スリマニと今季を戦い抜いてきた3人が並ぶ。第二列もロマン・タオフィフェヌアとセバスチャン・バーマイナ、第三列は中央にチームの大黒柱のルイ・ピカモールが控える。ハーフ団は先述の通りで、フルバックはニュージーランド戦、南アフリカ戦では6月に代表にデビューしたばかりのナン・デュクアンを起用したが、日本戦には32歳のベテラン、スコット・スペディングが戻ってきた。スペディングは6月の南アフリカとの第2戦以来の先発メンバーとなる。そしてこれらのベテラン回帰と同時に新人も起用したのである。(続く)