第2291回 崖っぷちのラグビー代表(5) ジャック・ブルネル新監督の選出した31人
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■短期間でチームを立ち上げる必要のある12月末の監督交代
フランス代表史上初めてとなる任期途中での監督解任に伴い、昨年暮れに監督に就任したジャック・ブルネル監督の初陣は6か国対抗、2月3日にスタッド・ド・フランスで行われるアイルランド戦である。
サッカーの場合と違って、ラグビーの場合は6か国対抗や秋のウィンドウマンスの場合は、集中的に合宿を行うわけではなく、合宿とは言っても非常に短期間である。そういう条件の中でブルネル監督は選手を選考し、短期間で戦術を浸透させなくてはならない。また、今回の監督の交代は2019年のワールドカップを明らかに意識している。したがって、選手を大幅に入れ替えるのであれば、これがラストチャンスになるであろう。
ファンの多くはフランス代表を見放してしまったかのような反応であるが、6か国対抗で成果を残して見返したいところである。
■初戦のアイルランド戦に向けて選出された31人
さて、初戦のアイルランド戦に向けて31人の選手が発表された。フォワードは17人、エディ・ベンアルース、セダト・ゴメスサ、ジェファーソン・ポワロ、ダニー・プリソ、ラバ・スリマニ、アドリアン・ペリシエ、ギレーム・ギラド、アルツール・イトゥリア、ポール・ガブリヤーグ、フェリックス・ランベイ、セバスチャン・バーマイナ、ヤクーバ・カマラ、ケビン・グルドン、アレクサンドル・ラパドリー、ベンセラス・ローレ、セクー・マカルー、マルコ・トーレーニュである。
スクラムハーフはアントワン・デュポン、マキシム・マシュノー、バティスト・サランの3人、スタンドオフはアントワン・ベロー、マチュー・ジャリベールの2人、ツリークォーターバック並びにフルバックは9人でアンリ・シャバンシー、ジョナタン・ダンティ、ジョフレイ・ドゥーマイルー、レミ・ラメラ、テディ・トマ、ビリミ・バカタワ、ウーゴ・ボネバル、ジョフレイ・パリというメンバーである。
■7人が新人、代表30キャップ以上は3人だけ
この中で代表キャップが30以上あるのはギラド(代表歴56試合)、スリマニ(41試合)、マシュノー(31試合)の3人だけ、2ケタまで広げてもこの3人を含めて12人だけである。つまり、招集したメンバーの3分の2は代表出場が9試合以下という経験の少ないメンバーの集団である。そして代表として出場経験のないメンバーは7人にのぼる。プロップのゴメスサ、プリソ、ペリシエ、ロックのランベイ、バックローのトーレーニュ、スタンドオフのジャリベール、フルバックのパリである。
そしてキャリアの少ない選手だけが選出されたポジションもある。例えば司令塔のスタンドオフ、ベローはこれまでに代表の試合は2試合しか出場したことがない21歳、そしてジャリベールに至っては代表経験のない19歳の選手である。日本戦の先発はフランソワ・トラン・デュックを起用し、このポジションにはカミーユ・ロペス、ジュール・プリソンという選手もいる中でこの2人をメンバー入りさせたことは驚きである。
またバックスラインはラメラ(代表歴16試合)とバカタワ(15試合)の2人だけが代表戦10試合以上の選手である。
そして年齢的にも30歳以上の選手は主将の31歳のギラドだけであり、かなり思い切った選手起用となった。
■新人を起用したがメンバーに定着できなかったギ・ノベス時代
ただ、2年前にギ・ノベスが監督に就任した際もメンバーを大幅に入れ替え、ほぼ3分の1が代表歴のない選手であった。そのノベスの抜擢した新人で今回もメンバーに名を連ねているのはバカタワ、ダンティ、ポワロ、カマラである。しかし、彼らのうちこの2年間試合に出場し続けたのはポワロとバカタワだけである。選手を入れ替えても定着しないままにチーム力がアップしないという悪循環がこの2年間続き、それがノベス監督の更迭につながっている。2010年代に入ってからの低迷を止めることができなかったノベスであるが、この流れをブルネル新監督は止めることができるのであろうか。(続く)