第2292回 崖っぷちのラグビー代表(6) キャリアの浅い選手で優勝候補アイルランドに挑戦

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■スタッド・ド・フランスのアイルランド戦、先発フィフティーン

 新監督の初陣となる2月3日のアイルランド戦、ファンの心は離れてしまったかに見えたが、やはり気になるのであろう、7万5000人近いファンがスタッド・ド・フランスに駆け付けた。
 そして先発メンバーは第一列は左からジェファーソン・ポワロ、ギレーム・ギラド、ラバ・スリマニ、ロックは左にアルツール・イトゥリア、右にセバスチャン・バーマイナ、左フランカーがベンセラス・ローレ、右フランカーにヤクーバ・カマラ、ナンバーエイトはケビン・グルドンが務める。ハーフ団はスクラムハーフにマキシム・マシュノー、スタンドオフにマチュー・ジャリベール。スリークォーターバックスは左からビリミ・バカタワ、アンリ・シャバンシー、レミ・ラメラ、テディ・トマ、フルバックにはジョフレイ・パリを起用する。

■キャリアの浅い選手を率いる唯一の30代のギレーム・ギラド主将

 前回の本連載でも紹介したとおり、キャリアの浅い選手が多く、初キャップがジャリベールとパリの2人、イトゥリア、カマラ、シャバンシー、トマの4人は代表キャップがまだ一桁であり、メンバーの平均キャップ数は16、アイルランドの41の半分以下である。さらにこの傾向はリザーブメンバーに顕著であり、8人のインパクトプレーヤーは全員が代表キャップ数一桁、その半数の4人が代表未経験、そして8人の合計キャップ数は16、すなわちリザーブメンバーの平均キャップ数は2にしかならない。
 このようなキャリアの少ない選手を率いる主将はフッカーのギラドである。チームで唯一の30代であるギラドは2008年3月のイタリア戦で代表にデビューし、2016年にギ・ノベス監督が就任した際に主将に任命されている。ジャック・ブルネル新監督もギラドに主将を託すことを電話で通知している。体制が変わっても主将を継続せざるを得ない環境はギラド自身が認識しており、代表で57試合目となるこのアイルランド戦にかける意気込みは並々ならぬものがあるであろう。

■現在7連勝中、イングランドと並ぶ優勝候補のアイルランド

 その相手のアイルランドは昨秋のテストマッチは南アフリカ、フィジー、アルゼンチンに3連勝、そして6月にも米国に勝利して、日本とは2試合行い、ともに大差で勝利している。昨年の6か国対抗の最終戦のイングランド戦から7連勝をしており、世界ランキングも3位である。今年の6か国対抗でも世界ランキング2位のイングランドと3位のアイルランドの最終戦の直接対決で優勝が決まるという見方が強い。両国を追ってスコットランド、さらに4番手をウェールズとフランスが争い、イタリアが今年も最下位候補であろう。
 アイルランドは先発の平均キャップ数が40を超えているが、来年のワールドカップを見据えて新戦力の発掘にも余念はなく、代表キャップ数が一桁の選手を先発に4人、リザーブに3人を入れている。

■10代のスタンドオフ、ボルドー・べグルのマチュー・ジャリベール

 フランスもアイルランドもメンバー全員が国内のクラブに所属している。昨年までは7人制と掛け持ち、クラブに所属していなかったバカタワもラシン92に所属している。2年前にノベスが監督に就任した際に、出身のトゥールーズの選手を多く起用したが、今回はどうであろうか。先発のうち最多の勢力はラシン92の5人(ローレ、マシュノー、バカタワ、シャバンシー、トマ)、続いてクレルモンの4人(スリマニ、イトゥリア、バーマイナ、ラメラ)となっており、トゥールーズはリザーブのアントワン・デュポンだけである。ブルネル監督が直近に指揮を執っていたボルドー・べグルからは、ポワロとジャリベールが先発、リザーブのペリシエが入っている。この中で注目は19歳のスタンドオフ、ジャリベールである。まだプロで15試合を戦っただけのキャリアしかないジャリベールに対して、ブルネル監督は自らがランやパスでゲインする能力と、ライン全体を統率する能力の2つを持ち合わせた逸材であると高く評価する。フレデリック・ミシャラク以来の10代の代表スタンドオフがフランスの沈滞ムードを吹き飛ばすだろうか。(続く)

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