第2380回 新方式に揺れるデビスカップ(2) ITF総会で改革が決定、反発するフランス勢
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■2月のITF理事会で改革案が承認
デビスカップの改革案については昨年3月、BNPパリバオープンの行われていた米国のインディアンウェールズで開催された国際テニス連盟(ITF)の理事会で5セットマッチを3セットマッチにすることを決定し、従来3日間で行われている大会を2日間に短縮すること、女子の国別対抗戦であるフェドカップとの包括的な改革を示唆したが、まだこの時点ではトーナメント全体の改革というレベルではなかった。昨年8月に行われたITFの年次総会では承認に必要な3分の2に満たない賛成しか得られず否決されてしまった。 しかし、大きな流れになったのは今年2月のことである。コスモス社とITFが巨額の契約を結んだ理事会では改革案が提示され、承認された。
■11月の末に18チームが一堂に会して3セットマッチで行われる新方式
これによると、4人で構成される18チームが一堂に会し、11月の末に1週間で大会が行われる。3チームずつの6グループに分かれ、リーグ戦を行い、各グループの首位の6チームと2位チームのうち成績の良い2チーム、合計8チームが決勝トーナメントに進出する。決勝トーナメントはノックアウトシステムで準々決勝、準決勝、決勝と行われる。そして各対戦はシングルス2試合、ダブルス1回戦で行われ、2セット先取のセットマッチで行われる。 また、11月末に出場する18チームには入れ替えがあり、現在のワールドグループと下位の地域ごとのグループのように入れ替えを行う。下位のグループは現在のワールドグループに相当する18チームに入るために現状と同じ2月、4月、9月に試合を行うことになる。
■選手からは賛否両論
これによって現在の1回戦から準決勝までの戦いで話題になる有力選手が欠場する期間にはデビスカップは行われず、選手は四大大会をはじめとするツアーに専念し、シーズンの最後の1週間、集中的にデビスカップを戦うことになる。しかも5セットマッチではなく3セットマッチであるから、選手の疲労についても大幅に軽減される。 四大大会をはじめとするツアーで活躍する有力選手の多くはデビスカップのワールドグループに出場する有力国の選手であるから、この改革を歓迎する声は少なくない。セルビアのノバック・ジョコビッチ、英国のアンディ・マレーなどはこの案に賛成している。そしてコスモス社を設立したジェラール・ピケと同じスペイン人のラファエル・ナダルも賛成である。 一方、この案に反対したのがフランスの選手たちである。フランスの選手はデビスカップという国別対抗戦に四大大会以上の重きを置いている場合が多い。デビスカップチームの監督として優勝経験のあるヤニック・ノアはデビスカップの終焉であり悲しみを感じるとコメントし、ルカ・プイユなども猛反対した。ドイツやベルギーもフランスに同調する動きを見せている。8月13日から16日まで米国のオーランドで行われるITFの年次総会で決定することになった。
■年次総会では7割以上の賛成で承認、新方式は2019年から
年次総会では四大大会を開催する英国、米国、豪州、フランスとドイツは一国で最多の12票を有している。3分の2以上の賛成がなければこの改革案は了承されないが、総投票数455票のうち、325票の賛成票、71.43%の賛成でデビスカップの改革案は可決されたのである。
新方式は2019年から採用され、初年度は2月に24チームが出場し、2日間かけて3セットマッチでシングルス2試合、ダブルス1試合を行い、勝ち抜いた12チームが11月の決勝大会に臨む。
決勝大会は2月に勝ち抜いた12チームに加え、前年度の準決勝進出4チーム(フランス、スペイン、クロアチア、米国)、招待2チームの合計18チームによって上記の大会形式で争われる。
この第1回の決勝大会は2019年11月18日から24日までリールまたはスペインのマドリッドのいずれかで行われる。開催地がどちらになるかは近日中に発表されることになっているが、大改革とともに大混乱を感じさせる展開となった。(この項、終わり)