第2419回 最後の王座を逃したフランス(1) オランダに逆転勝ちした1回戦
7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■来年から新方式となるデビスカップ
前回までの本連載では今年から始まったUEFAネーションズリーグで、フランスがオランダとの直接対決で敗れ、さらに最終戦でオランダがドイツ相手に引き分けたことから、オランダがグループ首位となって準決勝に進出したことを紹介した。フランスは初代王座を逃したわけであるが、今回からはフランスが最後の王座を逃したことを紹介しよう。それがテニスのデビスカップである。 テニスのデビスカップは本連載第2379回と第2380回で紹介したとおり、来年から大会方式が変更し、これまでのように週末に3日間かけて5セットマッチのシングルス4試合、ダブルス1試合でノックアウト方式で1回戦から4回戦に相当する決勝まで戦うのではなく、来年からは上位国が年末に一堂に会すテニスのワールドカップともいえる方式になる。現行方式は1980年代から始まり、さらにノックアウト方式で1年かけて戦うというのは100年前からの方式であるが、過密日程による有力選手の欠場が目立つことから、新方式になった。
■コートの外で敗れたが、コートでは1932年以来の連覇を目指すフランス
この新方式はスペインのバルセロナのサッカー選手であるジェラール・ピケらの提案によるものであるが、これに最後まで反対していたのがフランスであった。フランスはドイツ、ベルギーなど欧州の伝統国の支持を取り付けたが、8月に行われた国際テニス連盟(ITF)の総会で新方式が承認され、フランスはコートの外で敗れたのである。
しかし、フランスはコートの中では負けていなかった。現行方式で最後となる今年、フランスはディフェンディングチャンピオンとして臨み、1927年から1932年までの6連覇以来となる連覇を目指した。
■1回戦のオランダ戦、試合前日にアドリアン・マナリノを緊急招集
2月の初めに行われた1回戦は今回サッカーで痛い目に遭うことになったオランダと対戦した。フランスは1992年冬季オリンピックを開催したアルベールビルのオリンピックホールにオランダを迎えた。これまでフランスはオランダと9回対戦し、いずれもフランスが勝利している。直前にエース格のジョー・ウィルフリード・ツォンガがひざの負傷のため離脱したが、今年が3年契約の最終年となるヤニック・ノア監督はツォンガの代わりにリシャール・ガスケを加えるとともに、試合初日の前日にアドリアン・マナリノを緊急招集した。当初ノア監督はシングルスにはガスケとルカ・プイユを起用すると思われたが、負傷したとみられるプイユに代えてマナリノを起用した。
■アドリアン・マナリノ、初戦で敗れるが、4時間15分の試合を制す
初日のシングルスの第1ラバーはそのマナリノが登場した。相手のティエム・デ・バッカーのランキングは369位である。しかし、29歳で世界ランキング25位のマナリノもこれがデビスカップ初出場、さらに試合前日に呼び出され、夜の20時30分にチームの宿泊するホテルに到着した準備不足が露呈した。第1セットをタイブレークに持ち込まれて奪われてしまう。すると第2セット、第3セットも連取され、まさかの黒星でスタートする。
ここを立て直したのがベテランのガスケである。ロビン・ハーセと対戦したガスケは第1セットを取り、第2セットはタイブレークとなったが、これを制し、第3セットこそ奪われたが、第4セットを7-5と競り勝って、初日のシングルスを1勝1敗で乗り切った。
ダブルスはフランスはピエール・ユーグ・エルベールとニコラ・マユの絶対的な力を持つコンビであるが、オランダもダブルスのスペシャリストであるジャン・ジュリアン・ロジェがハーセと組み、このダブルスに注目が集まった。予想通りの接戦となり、4セット中3セットがタイブレークとなったが、フランスペアが3-1と勝利した。
最終日も第4ラバーはマナリノとハーセの両国のナンバーワン決戦となる。第1セットはハーセが取る。しかし第2セットはタイブレークでマナリノが取り返し、第3セットも7-5とマナリノが逆転、一気に王手をかけたが、第4セットはハーセがタイブレークを制して最終セットに突入する。最終セットを7-5で奪ったマナリノの奮闘は4時間15分の戦いを制し、フランスは準々決勝進出を決めたのである。(続く)